結城弘子と北川みそらと中学生
クレーンは漫画のアシする条件で漫画家に引き取ってもらいました(居候)
しかし・・・
今日も結城弘子は美術室の主である。
いつものノートにボールペンを走らせ原案を次々と書きとめる。機が来ればこのうちいくつかは清書されるかもしれない。
そこにいつものようにだべっている北川みそらが愚痴をこぼした。
「最近、妹が生意気なのよね〜」
北川みそらの愚痴によれば、純真無垢な天使のようだった妹が豹変、姉を無視か罵倒。かつての仲の良さはどこへやら。姉としては昔の可愛い妹に戻ってほしいとのこと。妹は現在中二で顔と背格好で言えば天使になれそうなのにどうしてこうなった・・と。
「大変ね」
一言で済ませた結城弘子。
人んちのごたごたなんてどうでも良い。
だが、北川みそらはエロ漫画家のお気に入りだ。放っておくわけにもいかない。
「妹、失恋したらしいんだよね。それでかな?荒れてるの。家にまで呼ぶ仲だから上手くいくんだろうと思ってたらまさかの破局よ。小学の頃からよく遊んでた子らしいけど、そもそも付き合ってたのかな」
「男の子には北川は会ったことあるのよね?」
「あるわよ。優良物件になりそうないい子ね」
結城弘子は大きなため息をついて、背もたれに全体重を押し付けた。
「自覚なしか」
「何のこと?」
北川みそらは結城弘子の言葉に食いついた。
結城弘子は答えを知ってるらしい。しかも自身が絡んでいる。結城弘子は不思議な力を持っている。結城弘子ならなんとかしてくれるかもと思っていたが。
「なんとかしたい?」
「できるの?」
「しないほうがいいと思う」
「なんで?」
「妹さん、西野を狙ってるわよ。大人しく一晩貸せば熱もおさまるかもね」
「なんで!」
「憎っくき姉の彼氏だからよ」
「はあ?」
まだ北川みそらには理解できなかった。
何故憎まれてるのか理解できてないが、とりあえず姉の彼氏狙う妹なんてサイテーなんて思っている。
一方、結城弘子は頭が痛くなる思いだった。西野光輝をを北川みそらに向かわせたのは1度のみ。しかしその1度で北川みそらはいろいろやらかしていたらしい。間違いなく妹は「性の目覚め」を起こした。しかも欲望がおかしな向きに向かっている。
結城弘子はまず、北川に現状を説明することにした。
「北川、妹に秘蔵本見られてるわよ」
「あ・・・・・」
北川みそらは青くなった。
発売予定のあのエロ漫画。エロ漫画家から直接2冊先行購入している。(保存用と作業用)
これを妹が部屋を漁って読んだに違いない。姉である自分がエロ漫画を持ってたことがバレている。しかも自分がモデルをしたやつだ。自身の姿が目的で買ったのではない。重要だったのは西野光輝のご尊体。しかも神絵師結城弘子の作画。あれはエロい。もし、妹が開いたのが「保存用」だったらどうしようと更に青くなる。
「どうしよ!どうしよ!どうしよ!」
「それと」
結城弘子は追加の爆撃を行う。
「あれ、妹が男の子にも見せてるわよ」
「うわあああああ!わ!わー!ぎゃー!」
うるさいなあと結城弘子は思った。北川みそらは結城弘子の言葉を疑ってない。結城弘子には超能力なのか魔法なのか凄い力がある。この話もきっと本当のことだ。
北川みそらが声が枯れるまで喚いて悶えて狂ってようやく静かになる。そして静かになったところで追加情報を出す。
「二人でエロ本見て、本来ならそこでムラムラした中2の男女が「いけない遊び」に突入するのだけれど未遂に終わったわ。その時北川が家に帰ってきたのよ。覚えてない?」
北川みそらには思い当たることがあった。
ジリジリ暑い夏休みのお昼。家に戻れば玄関に見知らぬ男の靴。ほほう、妹は男を連れ込んだのか。どれ顔を見てやろう、ついでに悪いことしてないかチェックしてやろうと妹の部屋のドアをこんこんと叩く。
直後、中でどたばたと音がする。中坊が色気ついちゃってまあとその時は思っていたが、今の話を聞くに姉のエロ漫画を隠していたのだろう。その後ドアを開けてわざと長居してペットボトルドリンクの差し入れをしたのだ。あの時の二人の複雑すぎる表情は今でも忘れない。
そして妹にもチャンスをやろう(←上級者気取り)とまた家を出たのだった。きっとそのあと本を戻したのだろう。
「その時、男の子は恋に落ちたの。北川に」
「は?」
「そりゃ、さっきまでぐいぐい見ていたエロ漫画のキャラを実物化したようなエロ女が目の前に立ってればねえ」
「あたし?」
「そ。北川。北川みそら」
「つまり、妹の失恋・・・・」
「北川のせいね」
「のおおおおおおおおお!」
北川みそらは今度は懺悔した。
この夏はバレー部やめて女磨きに精を出していた。男子悩殺服も結構着た。その日も着てたかもしれない。
ついでに言うと妹は天使のようだといえば聞こえは良いが、まだお子様体型だ。長年女子を見てきた経験でわかる。この調子だと妹は自分とは違う体型になる。女子にとって面倒ごとがなくてはいい体型だが、男子にとってはどうだろう?しかも女体に憧れ妄想しまくってる男子には?そこに完成品(自覚あり)の自分が現れた。これは懺悔するしかない。妹よごめん。すまなかった。ゆるしてくれ。君が女な顔をしてるとこを見たかっただけなんだ。
「それからね、北川」
「まだあるの?」
「部屋に西野と居るとこ、覗かれてるわよ」
「のおおおおおおおおおおおおおおおお!」
北川みそらは理解した。妹にも男の子と同じことが起きたに違いない。しかも部屋では西野光輝にあんなコトやこんなこともしてもらったし。それを見られたのか。恥ずかしすぎる!
しかも自分のせいで男を失った。西野光輝を奪いにきてるとしたらこれは妹からの報復だ。
北川みそらはもう立てなかった。
そこにがらがらとドアを開けて西野光輝がやってくる。主人へのいつもの差し入れ。
西野光輝目の前には呆れ顔の主人と死体がひとつ。
「結城様、何があったのですか?」
「あなたが北川の部屋に行ったの、北川の妹に覗かれてたの。あなた惚れられたみたいよ。良かったわね、姉妹してあなたに発情してるわよ。好きな方を選びなさい」
「結城様がいいです」
即答だったが、西野光輝はこめかみをおさえた。
登場人物
・妹・
北川みそらの妹。姉とは違い発育限界が低い。需要は多いが彼氏の理想ではなかった。
・男の子・
彼氏。ただし、お互いはっきりとは告白をしていないままずるずる来てしまった例。付き合いは長かったが終わりは一瞬だった。