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結城弘子と撃墜王 ごあいさつ

 

「話には聞いてたけど総司令、若っ!」


 荷物その2は嬉しそうに結城弘子をガン見した。

 荷物その2は見た感じ10歳は年上に見える。結城弘子は自分の前世はエロ漫画家から聞いてたが、他にも在るのかよと眩暈がした。その荷物その2が知っているかつての自分はどんな姿なんだろうと気になった。


「艦橋にいた時の陰気なババ・・・・おっと」


 結城弘子は聞き逃さなかった。「ババ・・・・」の意味するものは何通りか推測できる。荷物その2の知っている自分はヨボヨボの老婆だったんだろうか。それとも嫌な上司という意味だろうか。それとも両方か。人間、社会生活するには人に恨まれず嫌われずいるのが最善である。だが今の自分を振り返れば他人に辛く当たる事があるのは事実だ。嫌われたのかその後美術室に来なくなった人もいる。荷物その2にかつての自分はどんな人物だったのか聞きたい。

 だが。


「総司令かわいい、めっちゃかわいい。食べてしまいたい。食べていいす?」


 がたん!

 結城弘子はびびって椅子から立ち上がり、その椅子の後ろに逃げた。結城弘子には幼い頃から不思議な力がある。そのおかげで危険を回避してきた。だが世の中には通用しない相手もいる(遠藤智和とか)、油断は禁物だ。記憶にはないが総司令と呼ばれるからには自分は荷物その2の上司だったにちがいない。それを襲うの?いや、現在はただの美術部部員だ、部長ですらない。


「あの、私は女です。ダメです」

「女ならいいじゃないすか。さっきの銀Bなんて、あ、金払ってくれた人ね。あれ、性別ない種族っすよ。生殖器も胸も両方なくて攻めポイントが無いから・・・・。男でなくても女なら上等っす」


 結城弘子の椅子を握る手に力がこもる。

 これは危機かもしれない。荷物その2の目がおっさんじみてきた。さっきまでは金髪やや短髪でボーイッシュな爽やか系で好漢度が高かったが、今は男女問わず噛み付くヤリマン(ヤリチン?)にしか見えない。しかも性器のない相手でもいけるという。


「総司令、これもキッカケっす」


 結城弘子は何のきっかけだよと思った。そんなきっかけは要りません。


「総司令は若い頃、遊んでおけば良かったってしみじみ言ってたじゃないっすか。今を楽しめって。だからオレ遠慮なしにエンジョイできたんです。死ぬってなった時、未練とか不完全燃焼感とかなかったです。感謝っす。そうこれは恩返しっす。総司令せっかく若返ったんだし今がヤリ頃!」


 ヤリ頃ってなんだよと結城弘子は思った。

 そして若返ったのではなくて、この世界に生を受けてここまで育ったのであってババアから若返った訳ではない。ついでに初体験相手があやしい女性というのはマズくないか?と思ったが、このままいけばキモオタ遠藤智和が初体験の相手というのも絶望する。自分は幸せな恋愛や結婚ができないのか。そして目の前のエロおっさんの目をした女が怖い。


「しません!」


 もう、これいうだけで精一杯。


「わかりました。じゃあ、今度にしましょう、総司令」

「今度も無し!無し!」

「命令なら・・でも、今ってまだ総司令は総司令?」

「・・・」


 痛いとこを突かれた。

 結城弘子は総司令ではない。そもそもなんの総司令なのか。結城弘子は別の人生を歩む存在だ。総司令だったとしても今ではかつての役職はチャラだろう。そして総司令だった記憶はカケラもないし、今日初めて知ったくらいだ。

 てか、情報が少なすぎる。


「申し訳ないけれど、あなたは誰?」


 すると、スケベオヤジ化していた荷物その2がぴしっと直立し敬礼をした。


「挨拶が遅れました。マースノイド宇宙軍アソート部隊715号パイロット、クレーンです。作戦後、帰還不能となり1度死にましたが、偶然にも別の軍に回収され蘇生いたしました。総司令とはおよそ100年ぶりの再会です」


「よくわからない・・・」


 この荷物その2の言葉を信じるならば、かつてマースノイドという惑星とその衛星の宇宙軍の総司令が結城弘子ババアで、このクレーンという名の女性は軍の中でも危険な奇襲部隊というかモロ鉄砲玉な任務ばかり負っていたらしい。クレーンは強かった、相当強かったので戦歴が伝説級の数字になっていたが(自慢)遂に戦没することになった。が、敵に撃墜された訳ではなく(ここ強調)、戦闘後、目標撃破したが帰還不能になり何もない宇宙空間で死んだのだと。そしてクレーンの素性もしらずに宇宙戦艦のひとに拾われ蘇生され、恩返しとばかりにその艦の為に戦ったら感謝されたということらしい。しかも、初めて乗る一般戦闘機で敵主力を葬ったという。(超自慢)

 驚いたのは、かつての母星マースノイドがもうなくなっていて、衛星のみが残り、歴史は進み政治形態国境も敵も味方も全部チャラになり帰る場所も拠り所も無くなっていたこと。


「いやあ、それでも総司令がいて嬉しいっす。で、総司令と艦長に共通の知り合いが居て助かったっす。おかげで送って貰えることになったし」


 結城弘子はこめかみをおさえた。


「あいつか・・」


 やはりエロ漫画家のことだ。

 結城弘子さえ覚えてない過去を知っていて、とんでもなく変なのと知り合いだったりするのはあいつしかいない。ヤバい奴だとは思っていたが宇宙人と知り合いでその宇宙の軍隊の偉い人とも仲が良いとは驚きを通り越して呆れ返るばかりである。宇宙旅行をするくらいなら貸した金返してほしい。


「という訳で、ヤらないか?」

「しません」


 既に上官相手の言葉ではない。


「わかってるっす。総司令に今婚約者がいるのは聞いてます。言ってみただけっす。幼い頃の結婚の約束守るとはピュアっすねえ」




「違わないけど違う・・・」


 結城弘子が一番滅入った瞬間だった。

登場人物

・クレーン

 かつて存在したマースノイドという惑星連合の宇宙軍所属。ぶっちぎりの戦闘能力と戦歴を持ち、撃墜王と呼ばれた。有名パイロットであるから上層部にも知り合いが多い。が、あれやこれやで浦島太郎状態。


・銀B

 宇宙に漂っていたクレーンを拾って蘇生させた人工生命体戦士。

 クレーンを拾った目的は個人的な性的愛玩要員。つまり性奴隷としてこっそり部屋に隠し持っていた。艦の危機でクレーンが飛び出したことで存在がバレる。

 そして、最後は貨物の中でヤリまくる(ナニを?)が8勝13敗で負けである。撃墜王を舐めてはいけない。撃墜王の名は伊達ではない。

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