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結城弘子とお土産

 その日、北川みそらは危機に瀕していた。

 教室の隅へ三浦雅弘とその仲間二人に追い込まれていた。

 フレンドリーな口調で服を脱げと迫るエロ3人組。

 以前、海に行った時の北川みそらの水着画像。これを見せながら三浦雅弘は他の二人にその日のことを自慢した。思い出話はエスカレートして、北川みそらの裸を見ようぜという話に。当然こんな事はどんな理由をつけても北川みそらが飲むわけはないし、それどころか嫌われるし逃げられる。それどころか犯罪だ。


 しかし、夏休みのテンションと理性を夏の暑さで蒸しあげられたエロ3人は簡単に成功すると思い込んだ。北川みそらが熱意に応えてくれると。

 しかし当然北川みそらは応えない。

 そうするとエロ3人組の脳は次のステップに移行した。

 一線を超えてもあとで笑って許してくれると。

 北川みそらに迫るキモい手が6本。狙いは胸だ。対する防御に使える手はたったの2本。引っ張られるブラウスを強固に握って守る北川みそら。握力はブラウスのガードに使われ、スマホが無防備になる。彼等は当然そこを攻めた。

 三浦雅弘にスマホが奪われる。ロックはしてあったが、人質としてはこの上ない。スマホは単なる通信ツールではない。記憶と記録、プライバシーと秘密情報。そして財産。

 人質を持ちさらに強気になるエロ3人。もはや逮捕されるレベルの犯罪だ。でもこの3人の脳はさらに悪化しており、それでも事後になだめれば笑って許されるなんて思い込んでいる。


 三浦雅弘がスマホを机の角に叩きつける真似をする。北川みそらの喉の奥が冷え上がる。校内でも聞く嫌がらせ。スマホを折って水没させるというもの。被害者は何人かいた。皆悲惨なことになっている。


 大声を出すなと笑いながら言う三浦雅弘。もう狂っている。エロ3人組は()()()()()()だが、自分(達)のスーパーテクニックを駆使すれば北川みそら程度、虜にできるなどと童貞なのに思い上がっていた。

 欲しいか?と目の前に晒されたスマホに手を伸ばそうと片手を離す。その手が掴まれ一気に引き伸ばされる。「助けて」と言おうとした口が汚い手で塞がれる。更に他の2本の手が北川みそらの胸を守る最後の砦の手を引き剥がそうとする。絶体絶命!


 その時、北川みそらのスマホの画面に新着メッセージが現れた。


『あんしんセキュリティ機能を実行しました』


 一瞬、閃光に教室が包まれ、光が収まった時には一人女が増えていた。妙な中年女性が女子用制服を着て立っている。そして胸の前で40センチ位の木の板を持ち、もう一方の手の平をぱんぱんと叩いている。板の先端には「喝」の文字。


「私のお気に入りに手出しするとは死にたいようだな」


 肩までのおばさんパーマと女子用制服の組み合わせ。歳をとりならも美人というわけでもなく、化粧もしていない。似合ってないと言うか色々間違えた組み合わせ。


「助けてやる。感謝しな」


 その見覚えのある年増の目は北川みそらに向けられた。

 そして北川みそらはこの年増が結城弘子の知り合いだと気がついた。いつかの漫画家だ。絶対に味方に違いないと心から縋る北川みそら。神様仏様漫画家様!どうか助けてと祈る。

 一方、エロ3人組は教師に見つかったのかと狼狽えたが、どう見ても部外者で変質者。しかもあまり強そうには見えない。手に持ってる棒も両手でぱきっと簡単に折れそうだし。だがなぜか年増は強気なうすら笑い。

 しかし。


「女を犯すのは童貞ブサの正常な行動だ。寂しくちんこ握りしめてる日々に比べたら大きな進歩だ。ケチでモテない童貞が女体にありつくにはそれしかない。だが、そいつはダメだ。オレのお気に入りで金蔓で大事なお得意様だからな」


 年増は味方で助ける気があるらしいとわかったが、言ってることが何かいろいろおかしい。そもそも性犯罪を正常なんて言うことが変だ。そして年増はゆっくりと板を逆手で持ち、もう一方の手を拳にして正面に構え脚は中腰でカンフーもどきの構えをした。だがどうも強そうには見えないが、エロ3人に警戒させるには十分だ。


 年増が攻撃に出る!

 エロ1号2号が困ったなあと相手をするが、会敵した感触がなかった。叩いたり叩かれたりした感触がない。というかお互い当たってない。


「あー、キモ童貞触りたくねえ」


 年増、まさかのお触り拒否。

 キモ童貞と呼ばれた2人はムカついて本気攻撃に出る。しかし当たらない。不思議とするするとかわして服すら掠らない。その様子を呆気にとられながら見ていたエロ3号こと三浦雅弘の顔面にグーパンが。次の瞬間、エロ3号の拘束が緩んだ北川みそらをイケメン西野光輝がかっさらう。そこでエロ3人が見た光景は北川みそらの細い腰を抱き寄せる西野光輝、その背に北川みそらがしなりと両手を回し、胸板に顔と胸を正面から密着させる。イケメンだけに許される光景である。


「結城から西野借りてきて正解だったな」


 北川みそらはもう堕ちていた。実際に状況をひっくり返したのは年増だが、北川みそらにとって白馬の王子様は西野光輝だった。そして3人がかりでも剥がせないのでは?というくらい西野光輝に張り付く北川みそら。いっぽう西野光輝は困った顔。この教室の様子は漫画に使えると思った年増である。帰ったらネタ帳に書き加えるつもりだ。


「さてと。君たちの罪は万死に値する。私は法律を守る気はない。だから君たちの刑は私が自由に決める」


 年増は板を逆手から順手に持ち直す。

 そして中年とは思えない素早さでエロ3人の脳天を撃ち抜いた。暫くは呆然としていた3人だが、次第にそわそわし出し、変な走り方で教室から去っていった。

 それを西野光輝は不思議そうに見つめていたが、北川みそらは目を閉じて西野光輝の体臭を胸いっぱいに吸い込んでいた。これだけで何度もイケそうである。




「結城様、無事終わりました」


 相変わらず「様」付きで報告をする西野光輝。

 絵を描きながら結城弘子は皆を美術室に迎え入れた。皆とは年増魔女漫画家と西野光輝と北川みそらのこと。

 そして、結城弘子は年増の持っていた板を見た。


「そんなもの、まだ持って・・・・なんて改造するのよ・・」

「懐かしいだろう。お前の買ってくれたお土産だぞ」


 それは結城弘子が中学3年の修学旅行の時に年増に買ってきた「精神根性注入棒」。それを魔改造して「精子抽出棒」にしたもの。これで叩かれたエロ3人はそれぞれ別々の方向に走り出し、別々のトイレでズボンとパンツを洗っていた。

 しかもまだ許されてはいない。年増の気まぐれでいつ次の刑が執行されるかわからない。

・登場人物・

三浦雅弘 ブサ陽キャ 北川みそらのJカップを触りたかった、見たかった、揉みたかっただけで恋愛感情はない


・あんしんセキュリティ機能・

魔女から画像を買ったときに付いていた初回特典のひとつ

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