現実の中の異世界
異世界はある。
わたしたちの目の前に。
無敵のヒーローとか、魔法とか、モフモフとか、ハーレムとか。
異世界とは、妄想の彼方に存在するのだろうか?
いや、わたしは目の前にある気がしてならない。
ある夏の日の夕暮れ時、何気なく見上げた空には大きな入道雲があった。
あの雲の中には、もしかしたら『天空の城』があるのではないか?
あるいは『ドラゴン』が暴れているのではないか?
そうだ、飛んで行って確かめてみよう。
しかし、これは『空想』だと誰もが思うだろう。
『空想』というより『妄想』だろうとか、もはや『現実逃避』だなどと言う人もいるだろう。
本当に、そうだろうか?
その瞬間、そこにソレは実在した可能性だってあるはずだ。
その可能性がゼロだと言い切れるだろうか?
こんな体験をしたことがある。
夜中に目が覚めて、二階の自室の窓を開けてベランダへ出た。
見上げると良く晴れていて、きれいな星空だった。
このまま空を飛びたいと思って意識を上へ向けると、身体が宙に浮くのを感じた。
慌てて下を見ると、さっきまで自分がいたベランダから身体が浮いていて、屋根も自分の足元より少し低い位置にある。
だが、不思議と怖さは感じなかった。
そのまま、さらに意識を上へ向けると、さらに高く浮いていった。
電信柱の高さを軽々と越えて上昇していくと、どんどんと遠くの景色が見えるようになっていった。
時刻は見ていないが真夜中であろう静けさの中、明かりがついた家が点在し、はるか遠くから電車が走る音が聞こえてきた。
が、急に我に返って、自分がとんでもない高さに居ることに恐怖を感じた。
少しずつ意識を下へ向けると、自分が下降していくのを感じた。
ベランダへ辿り着いても、恐怖は増すばかり。
すぐに布団に潜って寝た。
翌朝、昨夜の出来事をはっきり覚えていた。
人は言うだろう、「それは『夢』だよ」と、あるいは「それは『空想』とか『妄想』だよ」、あるいは「それは『幽体離脱』かも」などと。
わたしは、これを『体験』と言ったが、実際に起きたことのように感じたのだ。
現実にはありえない事を考えるのは、現実からの逃避なのだろうか?
そうだとしても、わたしには『異世界への扉』はすぐ近くにあるように思えたのだ。
そこで、わたしはこう考えた。
『現実から逃避できる物』、それはもう異世界なのではないか?
ふと気がつくと、目の前に我が家の飼い猫がいる。
わたしの手が伸びる。
モフモフ……。
異世界はある。
わたしの目の前に。
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