神さんもお疲れ!
俺の人生、本当ろくでもない事ばかりだ。
不細工な顔。
勉強も苦手。
運動神経ゼロ。
生まれつきの持病。
彼女いない歴=年齢。
大学卒業後なんとか就職したが、就職先はいつ潰れるかわからない中小企業。
おまけに俺自身は仕事もできない安月給の万年平社員。
妻もいなけりゃ金もない。
お先真っ暗である。
一方、社会を見ると芸能人やスポーツ選手が活躍しているニュースで溢れている。
俺と同年代の奴らも大活躍している。
大金を稼いでいる上にネットでは称賛の嵐に包まれている。
なんだこの違いは!
一体俺が何をしたって言うんだ?!
俺は前世で大悪人だったりしたのか?
それとも俺の努力が足りないっていうのか?
救いを求めて人に相談したり宗教にすがったこともあった。
人に相談すると「神は乗り越えられない試練を与えない」とか言われた。
宗教にすがると「あなたが神に愛されているからだ」とか諭された。
はあ?!
納得できるわけないだろそんなの!
そう思った俺は人生に希望をもつのを止めた。
もうどうにでもなってしまえばいい。
そう思って日々生きるだけになった。
すると、ある晩一つの夢を見た。
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私は一般的に神と言われる存在である。
その中でも私は地球を担当している神である。
人間は私を全知全能だとか言うが、そんなことは全くない。
その証拠に今日も嫌な仕事が始まる…。
「これが今回配らないといけないノルマか…」
定期的に上位存在から色々な物を配るように指示を受ける。
人間にとっていい物もあれば悪い物もたくさんある。
これらをすべて配り切らないといけないのだ。
気は乗らないが、試しにいくつか中を見てみる。
・美しい顔
・運動神経
・健康
この辺りはいい。いくらでも配ってやりたい。
・ちょいブス
・頭痛
・太りやすい体質
あんまり配りたくない。
・知的障害
・うつ病
・先天性難病
こんなの絶対配りたくない。苦しむのが分かりきってる!
でも仕事だ。
上位存在いわく、これを残さず配り切らないと地球が崩壊するらしい。
それを考えたらやらざるを得ない。
人間ごとの配分量を決めるかの基準は一つだ。
それは「これを配られた人間が天寿を全うできるか」どうかだ。
自殺をしないでくれたらそれだけでいい。
そして私は、配分を決めていく。
魂を見てその人間の強さを判断しつつ振り分けていくのだ。
お…、この子は弱そうだ…。仕方ない、"美しい顔"や"運動神経"を配ろう。
うーん、この子はほどほどっぽい。"ちょいブス"と"健康"を配るか。
あ!この子は強そう!"うつ病"と"先天性難病"を配るね!大変だろうけどゴメン…。
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今回も何とか配り終わった。
本当に嫌な仕事だ。
特に悪いものを配られて自殺した子たちを見ると心が痛む。
私が殺してしまったんだなと自覚してしまう。
そして"せめてこのような子たちが称賛されるといい"と思うのだが、どうやら人間社会ではそうではないらしい。
弱いからと思って"美しい顔"とか"運動神経"とか配った子たちが称賛されるばかり。
"うつ病"とか"先天性疾患"を配られた子たちはバカにされ虐げられている。
はあ…、もう嫌だなこの仕事。
やめたい…。
でも誰もやりたがらないし、やめると地球自体が崩壊するし。
しょうがいないよな…。
この子たちのために頑張ろう…。
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俺は目が覚めた。
あの夢はなんだったんだろうか。
ただの幻だろうか。
試しに心の中で神に声をかけてみる。
当然反応はない。
まあ、神の声が突然聞こえるなんてないよな。
でもなんか納得できた気がする。
ああ、それなら俺の境遇もしゃーない…って感じだ。
…何だか少し元気になってきた。
今日はいつもよりいい日になる気がする。
聞こえてないとは思うけど、とりあえず声に出して言ってみるか。
「神さんもお疲れ!」
ふと思いついたので書いてみました。
神の愛だのなんだのと言われても全く納得できないけど、もしこういう背景なら理解できると私は思います。