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1,怒りをむき出しにして

 僕の眼前に4人の敵が立っている。今は放課後で場所は体育館裏。9月なのでものすごく暑いはずだ。しかし今の僕は気温が30度を超えていることなどどうでもよかった。


 こいつらを完膚なきまでに叩き潰さねばならない。今なら倒せる気がする。近年、政府が進めている異能者育成のプロジェクトに参加するまでもない。


 ・・・・・・それもだいぶ前に検討したが、親からそんな危ないものは受けさせないといわれたのと転校するのが嫌だったのでやめた。


 僕が殺意を固めていると敵のリーダである一人の少年が話しかけてきた。こいつの声なんて聞きたくもない。だが聞いてやる。


 「おいおいこれで何度目だよ。この場所に呼び出すのはよお。まあこっちとしても手間が省けるがいい加減勝てねえってことを理解したらどうなんだ?」


 こちらのことをなめてるとしか思えない内容の発言だが、こいつは本当にそう思ってんのかね?夏休み前にも僕は三人くらいならどうにかしてたはずだ。


 こいつの仲間はおとなしく黙ってる。この少年が話してから少しの間は基本仲間は何もしゃべらない。憎々しいことにこの少年は口が回る。足を引っ張ったら困るので何もしないのがこの少年の仲間にとって最善と認識されている。


 嫌われ者の僕には仲間からそのような信頼を得ることなど悔しいことだができない。自分にはない能力を最も嫌いな奴が持っている。こんなに腹立たしいことはない。


 もう始めてしまおう。体から適度に力を抜いて、左右の拳を肩の高さに挙げる。左足と左腕を前に右腕と右足を後ろに構える。前後に広く足の間隔をとって動きやすくする。


 僕が構えるのを見て、敵もそれぞれ構えをとる。こいつらの構えは美しくない。インターネットなどで見た構えを適当に真似してるだけだ。


 僕はすり足で一番近いところにいる敵に近づく。相手は拳で攻撃することを決めたようで近づいてくる。当然そんなことはさせない。


 左拳を開く。そして左足を前に出して、体重を少し前に移動させながら左腕をまっすぐに伸ばして相手の顎に勢いよくぶつける。


 ジャブのような掌底打ちなので威力は高くない。しかし相手をひるませるには十分だった。そして僕はその隙を見逃さない。


 体重を後ろの右足に移動させ、肩と腰を回転させながら右の掌で相手の顎を打ち抜く。右掌底打ちの勢いを利用して腰を再び左側に回転させる。次に左腕を素早く引き戻す。


 最後に体重を前に移動させまっすぐに相手のみぞおちにまっすぐに左拳を打ち込む。相手はここまでの攻撃で体力を失いふらつきながら膝をつく。


 僕はすぐに腕を引いて体勢を立て直す。ここまでで最初の攻撃から数秒もたっていない。あまりに早く味方がやられたことにより呆然と立っている敵に接近する。


 だがそうはいかなかった。慌ててリーダーが僕のもとへ跳んでくる。リーダーは着地と同時に腰を回して拳を叩き込もうとしてくる。僕は拳を払いのける。リーダーはそれを見て後ろに跳んで僕の間合いから逃れる。


 邪魔しやがって、とても腹が立つ。だがリーダーを倒す前に先に倒さねばならない相手がいる。リーダーが後退した後に取り巻きが二人でほぼ同時に前に出てくる。


 こいつらは僕と学校がある間は毎日のように喧嘩するので、少し連携が取れるようになってきている。面倒だ。


 取り巻きはじりじりと僕を囲もうとしてくる。囲まれたらまずいので僕は右の敵にすり足で急接近。最初に倒した敵に使ったのと同じような掌底を三連続。威力は低いが、重なればそれなりのダメージだ。


 もう片方の敵が攻撃している僕に隙を感じたのか、後ろから近づいてくる。足音でなんとなくわかる。僕は左足に重心を移した。次に腰を回転させ、肩を引き顔を背後に向けた。これで相手の位置を正確に把握した。最後に右足を上げて、膝を軽く曲げてから勢いよく伸ばす。後ろ蹴りだ。


 背後にいた敵はみぞおちにかかとが突き刺さり、うめき声をあげて尻をつく。後ろ蹴りは威力の高い蹴りなので一撃で倒せた。僕は体をもとの体勢に戻す。


 そこで少し隙ができてしまった。リーダーはその隙をむだにはしなかった。僕の顔に腰を回した右の掌底が叩き込まれる。チセツな掌底だった。でも悔しいことに少し効いた。


 さっき掌底を連続で打ち込んだ敵が近づいてきた。手を雑に振り回して僕の顔を殴った。多分、咄嗟に何をするか思いつかずすぐに出てきた攻撃がそれだったのだろう。


 そんな攻撃を回避できなかった自分に腹が立つ。攻撃をしても腕を引かなかった雑魚の腕をつかんだ。そして腰を回して右の掌底を顎に打ち込む。それだけでは済まさない。そいつの腕を引き寄せて今度は体の回転を利用した右肘でみぞおちに打撃を加える。


 限界が来たのか前に倒れこんで手をついた。これであとはリーダーだけだ。そう思ってすぐにリーダーが突っ込んできて腰を回して拳を僕のみぞおちに突き込む。


 ほんのり体力が削れた感じがするが、気にせず体重を少し前に移動させて腕をまっすぐ伸ばして掌底をリーダーの顔にぶつける。ひるんだリーダーに何度も繰り返し連続で同じように掌底を打ち込んでいく。


 リーダーはたまらず後退する。後退したリーダーに向かって右足を上げて曲げてから一気に伸ばして腹に突き刺す。前蹴りである。


 それでもリーダーの戦意は消えない。左の掌を僕の視界を遮るように突き出す。今までこいつと何度も戦った。


 その中でもこいつがこんなに頭を使うのは初めてな気がする。僕はみぞおちに向かって突き出された拳をかろうじて払い落とす。


 僕が意識を頭部に向けたところで上半身を攻撃しようと考えたのだろう。そうくると思ったので何とか防げた。 


 ただしその次は防げなかった。前足を一気に伸ばして腹に蹴りを打ち込んできた。でもリーダーはなれないのに蹴りを打ったから身体のバランスを崩している。


 すかさず一歩踏み込んで、その勢いを載せて腰を回して右の掌底を顎に激突させる。リーダーは倒れそうになりながらも後ろに下がる。


 僕は大きな隙を見せたリーダーに飛び込みながら右肘を引いてから肘を胸に向かって突き刺す。まだ攻撃できる。僕は着地と同時に前足に重心をずらす。左腕を折り曲げて肘をとがらせるようにしてそのままみぞおちに叩き込んだ。


 肘を使った威力の高い連続攻撃によりリーダーは地面に勢いよくあおむけに倒れこむ。リーダーは両腕で地面をたたいていたため頭をぶつけることはなかった。


 さすがに喧嘩で病院送りにするわけにはいかない。なので少し安堵した。僕がそんなことを考えている間にリーダーは懸命に立ち上がろうとする。


 こいつはまだ戦う気なのか。こいつの心をここで砕いてやる。そうすればこいつは僕と戦うことなどできないはずだ。


 僕はリーダーの胸板を踏みつける。何度も何度も踏みつける。踏みつけた後にゆっくり口を開いて、高笑いしながら罵倒する。


 「アハハハハハハ!お前は負けたんだああ!火上ひうえ、今どんな気持ちだ?これだけ数揃えて負けるなんて情けねえよな。」


 そう今踏みつけているこいつの名前は火上ひうえ 炎人えんとという。目立つ変な名前だがクラスの人気者である。僕をいじめているのにも関わらずだ。みんなからかっこいいといわれているが大人数揃えて僕と戦っている時点でかっこ悪いだろうが。


 大嫌いなクラスメート共のことを僕は思い出して不機嫌になった。そんな僕に火上は目を合わせて、にっこり微笑んで言った。


 「俺に土下座したことのある鈴木には言われたくねえな。」


 僕は火上の股間を踏みつけた。こいつに殴られて土下座したら許してやると言われてその通りにしたら頭を踏みつけられた。その時のことを思い出したら反射的に足が動いていた。


 火上は股間の痛みに顔をゆがめたが悲鳴は上げない。こいつの心はどうしたら折れる?わからない。とりあえず他のやつらにも恨みはある。


 なので火上からいったん離れてほかのやつらを順番に踏むことにした。まず一番近くにいた奴の股間を勢いよく踏む。


 「うああああああああ!」


 絶叫が上がった。こいつは火上より軟弱だ。気分がよくなってきた。ひたすら何度も股間を踏みつける。そのたびに叫ぶ情けない姿に僕は興奮した。火上もなぜか叫んだ。


 「もういいだろ!やめろおおお!」


 火上は仲間のことになると必死になるらしい。僕にはあれほど酷いことをするのに仲間にはしないで欲しいということだろうか。優しく僕は火上に言ってやった。


 「わかった。やめよう。」


 火上が少し落ち着いた顔をした。でもその顔はすぐに別の表情に変わるだろう。僕は笑いをこらえきれない。笑ったまま次の言葉を紡いだ。


 「ハハハハハ!こいつには、ハハッ、やめてやる。こいつには!フフッ、次はだれにしようかあ?」


 「鈴木!やめろおおおおおおおおおおお!」


 火上の悲痛な声が響き渡り、そのすぐあとに火上の仲間たちにとっての地獄が始まった。これは僕、鈴木 秀太しゅうたにとって正当な権利だ。


 

 

 


 


 


 

 


 

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