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妖の庭  作者: 神橋くない
6/14

飲み込むことは認めることだろうか(前編)

心身ともに疲弊している。

日も心も沈みかけている、

地獄の時間が2、3時間続きランマル達はノム村に到着した。


ノム村はあちらの村と雰囲気が似ていた。

ランマルはやっと到着したと安心した表情をしている。

カオリが進む方へついていくと寺院の山門に着いた。

カオリが扉をコンコンコンとノックする。

するとしばらくして中から

「どちら様でしょうか。」

と女性の声が聞こえた。

「サトリ村から来ました。カオリです。新しい守人の紹介に来ました。」

ここまで丁寧なカオリは初めて見た。それに、あの村はサトリ村と呼ぶらしい。

ランマルがカオリを驚きの目で見ていると、大きな扉の横にある、人1人が入れるほどの扉が開いた。

そこからひょこっと女性が顔を出した。

「カオリさん。お待ちしていました。どうぞ中へ。」

とても真面目そうな人だ。

「この人が例の守人ですか?」

真面目そうな女性はカオリに向かって問いかける。

カオリはえぇと返答するだけなのでランマルから挨拶することにした。

「はじめまして、ランマルといいます。」

女性は微笑み応える。

「はじめまして。オボロです。どうぞ、よろしくお願いします。」

オボロは一礼すると体の向きを変えて

「では、こちらへどうぞ」

と案内を始めた。

カオリとランマルは案内されるまま寺に上がる。

「どうぞ、こちらへ。長旅で疲れたでしょう。足を崩しておすわりください。」

ずっと歩いていたのでその一言で救われた気分だ。

大きな広間に案内され、言われた場所に座る。正面には障子が閉まっている。その奥にカミサマがいるのだろう。

移動中休憩しようなんて言える雰囲気でもなくずっと歩いていたせいでもう足が動こうとしない。

カオリは凛と座っている。

「ノム様、サトリ村からの守人がお見えになっています。」

オボロが正面の障子を開く。そこにノム村のカミサマが見えた。

石像のような、肉塊のような外質は変わらない。だが、サトリ村のカミサマとは形が異なるようだ。まるで天に手を広げる人間から泡のような球体の大群が込み上がっているように見える。それに、ノム様と呼ばれている。村の名前と同じだ。

『また会いましたね。カオリ。そして、はじめまして、サトリの守人。』

女神のような声が鳴り響いた。

カオリは一礼している。つられてランマルも一礼する。

「はじめまして。ランマルといいます。」

『長旅だったでしょう。今日はこちらで休みなさい。明日改めて親睦を深めましょう。』

女神のようなカミサマだった。こちらのカミサマ(サトリ)とは違う。

「夕食を用意しますので、先に入浴でもどうぞ。客室に着替えをご用意しています。」

そう言われて客室へ案内された。カオリは先に別の客室へ1人で行ったようだ。

案内も終わり、入浴場の場所を聞いた後久しぶりに1人だけの時間がやってきた。

綺麗にされている客室というのもあり、汗だらけの状態で居座るわけにもいかず、早速入浴場へ向かった。

全身の汗を流し、体を清めていく。

下肢の筋肉が打ち上がった魚のように痙攣している。普段は斧を振っているだけで今日ほど長距離を歩いたことがない。慣れない事をさせてしまったと自分の足を労う。

「明日歩けるかな」

今日はたっぷり眠れそうだ。


入浴が終わり客室に戻るとすぐに食事の時間になりランマルはオボロ、カオリと共に食事をする。

「ランマルさんは妖刀を見つけて、すぐにこちらへいらしたのですか?」

俺は処刑(誕生日)の事を話した。

大変でしたね。とオボロは優しく労ってくれた。

ランマルはこの村に来てからずっと気になっていた事を話す。

「この村にいる守人はオボロさんだけ…ですか?」

「お恥ずかしながら。」

「…すごいな。」

大変だな。と言いたかったが、女神のような人にそんな他人事を呟けない。

「カオリさん、ヒカリさんは元気でおられますか?」

カオリはええ。と返事して話を区切る。

この人はおそらくどこでも誰でもこういう感じなんだろう。

オボロの会話力に魅了され、食事の時間が終了した。


食後、カオリはそそくさと客室へ戻る。

ランマルは片付けを手伝いながらオボロに話しかける。

「この寺のどこかで剣術を練習してもいい場所があれば、教えてもらえませんか?」

「努力家さんですね。ここの敷地内でしたらどこでも構いませんよ。」

微笑みながら教えてくれた。

「ありがとうございます。」

この人へは自然と敬語で話す。それが本来当たり前なのだが、昨日初めて出会った人たちは話が別だと思っている。

ランマルはそう思ったが、ヒカリが道連れになっている事に気づき、心の中で謝罪した。


片付けも終わり、寺の外へ出る。山門と寺の間の空間が見た中で一番広そうだった。

剣術を磨くと言ってもどうすれば良いかわからない。

普段から薪割りをしていたこともあり、妖刀を扱うための筋力は十分だ。

しかし、薪割りと違って相手は動いている。相手に合わせて斬り上げ、斬り下げなどを行う必要がある。

「とりあえず、刀の使い方に慣れるか。」

わからないなりに素振りをする。

息が上がってきた頃、ランマルは空を見上げる。

少し雲があるが、綺麗な夜空には変わりない。

月は右側が少し欠けておりまだ正中に位置していないが、ランマルを明るく照らしてくれている。

また、辺りが明るいため昨日より見られる星の数は少なかった。

遠くの方で風が轟く音が聞こえる。轟いた風の残党が近くの木を優しく揺らす。

軽い休息も終わったところで再び素振りを始めようとすると、山門をトントントンと叩く音がした。

夜の来訪者にランマルは思考を巡らせる。

すぐさま答えは出た。守人だ。刺客だ。

答えへの道筋はこうだ。

カミサマがいる寺に用がある場合、村人なら要件を言うはずだ。それに夜に訪問すると言うことは緊急性があるからだ。それなのに慌ただしい足音や荒い息遣いなどが聞こえない。扉の向こうは冷静でいる。加えて。夜は村人が刺客に気づきにくい。

ここはオボロを呼ぶかノックに応じるか。

ランマルはオボロを呼ぶ間に刺客が寺院に侵入する危険性を考慮し、山門に近づき問いかけた。

「どうされましたか?」

扉の向こうから男性の声がする。

「…すみません。守人の方ですか?」

ランマルの予感は的中した。

ランマルの警戒心が十分に高くなった瞬間、扉から刀が突き出てきた。

ランマルは咄嗟に避け、妖刀を構える。

「あれぇ〜?当たらなかったかぁ」

扉から突き出た刀が引っ込んだ後、扉は切り刻まれ崩れ落ちた。

扉の向こうに立っていた人物が露わになった。

「あれぇ〜、妖刀持ってんじゃぁん。」

男は首を傾げランマルとその妖刀を舐めるように見る。

妖刀を見た後、鼻で笑い

「まだ全然斬ってねぇじゃねぇかぁ。なんだ?怖くて斬れねぇのかぁ?」

男は妖刀をランマルに向け

「斬り方を教えてやるよぉ!」

と言い斬りかかった。

ランマルはギリギリのところで避けたが、咄嗟の動きに足がついて来ずガクッと姿勢を崩した。

男は容赦なくランマルに斬りかかる。

なんとかランマルは避けるが間一髪のところだった。

この状況、ランマルの圧倒的不利ということはランマル自身も理解していた。

男はニタリと笑って、妖刀を下に構えランマルを切り上げようとする。

ランマルは薪割りのように刀を振り下ろし、男の妖刀を払おうとした。

しかし妖刀と妖刀が打ち合った瞬間。ランマルは宙に飛ばされ、地面に強くぶつかった。

男は倒れたランマルにとどめを刺そうと走り込む。

ランマルもやられまいと体を立て直そうとする。

「避けて!」

寺の方から女性の声が聞こえた。

ランマルは地面を蹴り男との距離を離した。

すると男に向かって稲妻の如く鋭い一線が差し掛かった。

その一線は男の大腿部に突き刺さる。

「っがぁあああああ゛あ゛!!」

男の叫びが響き渡った。

「大丈夫ですか?ランマルさん!」

寺の方からオボロが走ってきた。

「まだいやがったか!」

男は大腿部を押さえながらオボロを睨む。先ほどの一線は投槍だった。

ランマルはオボロの心配の声も男の苦しみも聞こえていない。ただ一目散に男のもとへ走り斬りかかった。

男が気づく頃には妖刀の(なわばり)だった。振り下ろされる刀を避けようと身を少し動かしたが、男の鎖骨部分に妖刀が食い込んだ。

急所は避けられたものの男が反撃できない状況ということがわかり、ランマルは強く話しかける。

「お前は誰だ!どこの村から来た!」

男は不気味に笑い

「残念だがぁ、俺は2つ以上の質問には1つしか答えないことにしている。俺はぁ…シェイク。」

これ以上深く斬り込もうにも妖刀の斬れ味では鎖骨を断ち切ることはできなかった。だが、大腿部を槍で貫かれているため男の意識が薄れるには十分な量の血が出ている。

「ランマルさん…もう…」

ランマルは妖刀をゆっくり男から離し鞘へ戻す。

「…助かりました。ありがとうございます、オボロさん。」

「いえ、無事で何よりです。寧ろありがとうございます。ランマルさんがここにいなければ今頃…」

ランマルは男に刺さっている槍を見てオボロに聞いた。

「この槍はオボロさんの妖具ですか?」

「はい、この槍は投げた先の血のある方へ僅かながら軌道を変えます。」

オボロさんの声がした時に動けて良かったと安堵した。もし動けなかった時は俺に向かって飛んできたのだろうかと少し身震いした。

「その様子だと、妖具を見たのは初めてですか?」

「はい。ヒカリさんは大楯と甲冑と言っていましたが、実際にはまだ見ていません。カオリさんはまだ聞いてすら…。」

オボロは小さい声でそうですか。と言った後に微笑みながら続けた。

「カオリさんは常に身につけておられるので、明日にでもお聞きになってみてはどうでしょう?」

カオリは荷物が少ないため大きな武器を持っていた時は一目でわかるはずだ。と言うことは懐に入るような小さい武器、あるいは身に纏うもの?とりあえず、明日聞いてみることにする。

月が頭上に近づいている。そろそろ寝るとしよう。

「後片付けはこちらでしておきます。」

この人は気がきく。今回はその言葉に甘えるとしよう。


客室に戻る前にもう一度風呂に入りたい。

身も心ももう一度清めたい。


ランマルは湯に浸かりながら明日のことに耽る。

明日はこちらのカミサマ、オボロ、村人に過去の話を聞こう。カオリの妖具はサトリ村に帰る道中で良い。


入浴を終えて客室。

部屋を暗くして横になる。

疲れ果てた心と体ならすぐに眠りにつける。



ーーーーゴゴゴゴゴゴゴッ


ランマルは辺りに響く轟音に眠りから引き起こされた。

ランマルは目を覚ました。いや、目覚めさせられた。

大地の叫び声と身震いに。

咄嗟に妖刀を持ち、外へ出る。

月が頭上に昇る頃、ノム村は崩壊を始めていた。

唖然としているとオボロが慌てて走りながら叫んでいた。


「ノム様がっ…!!」


〈次回予告と作者の感想〉

過去最多の文字数です。やってしまいました。ここ話でやりたいことが多かったので覚悟はしていました。ほんとはオボロとカオリのやり取りをもっと増やしたりしたかったです。

前回の後書きにお茶会をしましょうねと言いました。とてもお茶会をする雰囲気ではないですね。

備考ですが、右が少し欠けた月は満月の数日後と考えてください。満月は0時に一番高くなりますので大体そんな感じで捉えてくれたら幸いです。

後、初めての戦闘描写をしました。今までで1番難しかったのでもう誰も戦ってほしくないです。

次回ノム村はどうなるのでしょうか。ノム様は誰にやられてしまったのでしょうか。前回とは別の地獄がランマルを襲います。誰か助けてあげてください。

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