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妖の庭  作者: 神橋くない
2/14

悟りは己を救ってくれるだろうか(前編)

時は吹雪若丸の処刑前日に遡る


午前10時、若丸は地べたに座り空を見上げている。

「ここの風景はすっかり変わったのに、空は変わらねぇな」

今は草木が生い茂り、虫が飛び交う古風な田舎だが、昔はビルが生い茂り車やバイクが飛び交う大都会だった。そんな過去を思い返していると、遠くから親戚のハシダが大声で話しかけてきた。

「おーい若丸、薪割り手伝ってくれねぇか?」

めんどくさそうに立ち上がりハシダの方へ向かう若丸。

「いやぁ助かる!おかげで集会に間に合いそうだ!」

集会、またアイツのところに行かなきゃならない。

「おじさんはさ、本当に5年前のことを覚えてないの?」

薪割りをしながらハシダをチラリと見る。

「まーたその話か。その話は頭が痛くなるからやめてくれと何回言ったらわかる。」

俺の覚えている限り、5年前まだここが大都会の頃。

快晴の空に突如として積乱雲が現れた。いや、積乱雲ではなく、何かを乗せている船、空飛ぶ小さな神社と言った方が表現が正しいような。それほど異常なものだとその場にいた全員が空を見上げ、呼吸を忘れるほどのものが空を漂っていた。

その後のことは覚えていない。気づいたらこの村にいて、今まで普通にあった携帯や車などの文明の進化によって会得されたものは影を隠した。

そしてこの村にカミサマがいた。

石像のような、肉塊のような。痩せ細った僧侶が座禅をしているようにも見える物体。カミサマは月に1回集会を行い、村人からの相談や村人への説教、時に罪を犯した人への罰を宣告する。村人にとっての心の拠り所、村にとっての審判だ。


薪割りを終わらせると薪を暖炉へ運び、釜戸へ火をつけた。

「おじさん、終わったよ。」

「おぅ、今日も助かったよ。さぁ飯の支度をして集会に行くぞ。」

ハシダが米を洗っている間、若丸は外で一休みしていた。

若丸が深いため息をつくと目線の先に朽ちた刀が落ちていた。

「あれ、こんなのあったっけ。」

無意識のうちに朽ちた刀を掴んでいた。

「若丸ー。いくぞ。」

刀を持ったままハシダの元へ行く。

若丸とハシダは集会が開かれるカミサマの元へ向かった。



村の中心にある大きな寺に村人が集まっている。

ハシダと若丸も座り、集会の開始を待つ。

寺に殆どの村人が集まった頃、不気味なホラ貝のような音が鳴り響いた。

かなりの轟音に若丸は耳を塞ぎたい思いだった。

『みなさん、よく集まりました。集会を始めます。』

不気味な声と共に奥の障子の傍に黒子が2人現れた。

黒子はカミサマの使いで[守人]と呼ばれている。

ハシダは守人の姿にうっとりしている。よほど神々しいらしい。

守人は一礼すると障子を開いた。

その向こうにカミサマの姿があった。

『今回は信じると言うことについて話しましょう…』

説教が始まる。長い話だ。ボーっとして話を聞き流す。

『では最後に、この村で起こった悲しき事実の話をしましょう。まず一つ、この村の御神木が何者かにより幾度となく切り刻まれました。そして二つ、御神木は炭へと変わり果てました。そして三つ…』

場が凍りつく、この瞬間だけ時の流れが遅く感じる。

『その重罪人がここにいます。』

村人達はざわつき始めた。

『吹雪若丸』

カミサマに名を呼ばれた。皆の視線が針のように鋭く若丸に突き刺さる。

若丸は思いもよらぬ事態に唖然としている。

『集会が終わった後、ここに残りなさい。明日の処刑の手筈を組みます。』

若丸が唖然としている中、集会が終わった。

村人が退出する中、村人の鋭い視線は哀れみと怒りで捻じ曲がっていた。

ハシダの姿はもうない。誰もいない。



〈次回予告と作者の気持ち〉

若丸くんかわいそう。若丸くんどうなっちゃうの?

次回は若丸くんにとっての出会いと別れです。何と出会い、何と別れるんでしょうね。

次回、これより長くなってしまいました。読書感想文は後半に熱がこもって文字数との戦いになります。

お楽しみに。




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