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暗黒騎士の享楽  作者: 天鵞絨
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8.串焼き


「ふぅ」


ツバメは一息つくと《軽戦士》の方へ顔を向ける

丁度あちらも終わったのだろう、アーネの前で光の粒になったところだった


「おつかれ、どうだった?」


「β版のプレイヤーだとは思えないわね、正直動きも硬かったわよ?」


「凄く弱かったねー、なんであんなに息巻いてたんだろうね」


そんな風に喋っていると、目の前に勝利の文字が浮かぶ

それと同時にフィールドが消えていき、周囲が歓声に包まれるのだが、それ以上にツバメは気になっていることがある


決闘に勝利したため、所有物が譲渡されます


「所有物の譲渡?なんだこれ?」


メニューから持ち物を確認すると、確かに自分が持っていなかった物が増え、更にベルまで増えていた


「各装備とアクセサリー、ラビットの素材と三人合わせ30ベル、少ないわね」


「ま!デスペナもあるし暫く静かになるでしょ!」


今回の決闘は制限なし、持ち物全ての譲渡に加え1時間ログイン不可のデスペナルティーがあるのだ

もっともログイン出来たとしても二度と近づこうとは思わないだろうが


「しかし、ベルは兎も角この装備とか、持ってるのが正直嫌なんだが」


ツバメは三人の使っていた装備などを確認しながら呟く

勿論匂いや使用跡が残るといったことはないのだが、精神的にどうしても嫌なのだろう


「丁度露店があるしそこで全部売っちゃえばいいんだよ!」


「いい案ね!さっさと処分しちゃいましょ!」


丁度三人とも手放したいと思っていたようで、アーネ案で露店へと足を進める

武器やアクセサリーをそれぞれ扱う露店まで来た三人は、そこの店の人達や周りのお客さんから声を掛けられる


「さっきの見てたよ!スカッとした!」


「強いね嬢ちゃん達!」


ツバメは声を掛けられるとは思っていなかったため、戸惑いながら礼を言う

しかし二人は何故か堂々としているようで、気になったツバメは二人に問いただす


「なんで驚いてないんだよ」


「βの時も同じようなことが多々あったのよね」


「その時は強い人が多かったよね!」


二人は何度も経験していたそうで、ツバメはこれからも頻繁に起こってしまうのかと心配になっていた


装備を露店で売り終わった後、メグがポーションを幾つか買っていた


「ツバメも買っておいた方がいいわよ?」


「そうだな、さっきは大丈夫だったが何が起きるか分からんからな」


そう話をしながらポーションを見る

HPポーションやMPポーション、解毒薬と書かれた気味の悪い色のポーションなどが売っている

ツバメは若い女性に声をかける


「HPとMPのポーション2つづつと解毒薬1つ貰いたいのだが」


「合計26ベルね!さっきは凄かったよ!」


こちらでもまた声を掛けられ、ツバメはベルを渡し礼を言う


「あぁ、ありがとう、そんなに大した事はしてないんだがな」


購入した商品を受け取り三人の元へ戻る、やはり慣れることは無さそうだとツバメは思っていた


邪魔が入ってしまったためかなりお預けされていたのだが、漸くお待ちかねの串焼きである

三人は串焼きに対する欲がかなり高まっていたため、店主に塩とタレをそれぞれ6本づつ頼むことにした


「店主!塩とタレ!それぞれ6本づつ頼む!」


「あいよ、さっき焼いたのがもうすぐ出来るから待ってな」


そう言うと店主は焼いてる串の半分をタレに潜らせ、もう半分に塩を掛ける


「1本5ベル、合計60ベルだが良いもん見せてもらった礼だ、20ベルにまけといてやるよ」


「おいおい!大丈夫なのか?こっちで勝手にやってたことだから関係ないと思うのだが」


ツバメは店主の値下げに驚き、再度確認をとる


「構わねぇさ、さっきからここら辺で騒いで俺達も迷惑してたんだ、それに、好意は素直に受け取っとくもんだぜ」


あの三人組は中々迷惑を掛けていたらしい

ツバメ達は戸惑いながらも20ベルを渡し、その好意を受け取ることにした


「ほら、熱いうちに食っちまいな!」


「ありがとう!」


店主から合計12本の串が手渡される 、目の前に濃厚なタレと炭火で焼かれたラビットの匂いが充満する

三人はそれぞれ2本づつ持ち、各々気になる方から1口食べる

ツバメはまず塩との方から口にする


「なんだこれ!凄く美味い!」



口に含んだ瞬間に香ばしく焼かれたラビットの味が広がる

更に、噛めば噛む程に溢れる肉汁からより一層ラビット自体の味が伝わってくる


「ほんとに美味しいわね!塩がラビットの味を押し上げているわ!」


「タレも美味しい!幸せ〜!」


タレが肉の周りにまとわりつき串に刺さった肉の一つ一つが輝きを見せている

口に含めば濃厚なタレの旨み、そして甘さがしっかりと感じられ、肉汁と混ざり合うことで口いっぱいに幸せを感じることが出来る


「そんな美味しそうな顔しやがって、料理人冥利に尽きるってもんよ」


「おっちゃん!美味すぎる!」


「美味しいわ!ありがとう!」


「幸せ!すごい美味しいよ!」


三人が口々に褒め、その串焼きを堪能していると、その様子をじっと見ていた周りのプレイヤー達は我慢の限界を迎えようとしていた


「お、俺にも塩とタレ2本づつ!」


「こっちにも塩とタレ!1本づつお願い!」


「5本!それぞれ5本買う!」


周囲のプレイヤー達がいっぺんに寄って来て、店主に注文を飛ばしていく

店主は少し慌てつつもしっかりと串を焼いていき、ツバメ達は押し出されてしまうのだった


「凄い人が集まってたのね、もう近寄れないわね」


「仕方ない、周りも匂いにやられたんだろう」


「凄い美味しいもんね!また買いに来ようよ!」


三人は残りの串を堪能しながら離れた場所へ移動していく

ちなみに人が集まり忙しくなった串焼き屋は、串の在庫が無くなるまで勢いが収まることはなかった


誤字などがあれば教えてもらえると助かります!

また、感想、ブックマーク、いいねをしてくれると凄く喜びます!


m(_ _)m

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