39.墓地
辺りは薄暗く、先程まで明るかった空に夜が覆っている
見渡すと石でできたボロボロの墓が多く存在し、生い茂る草木で幾つか隠れている
じっと墓を見ていると墓の手前の地面から腕が生えてきて、腐った身体が地上へと這い出て来た
この腐った魔物、ゾンビは他の墓からも同様に出現し複数のゾンビが押し寄せてくる
「ダーク・ボール!」
一体のゾンビに闇属性の魔法が当たる、しかしLvも低く属性も同じなため効いてるようには見えない
ゾンビの歩くスピードが遅いため何度か魔法を放つがいずれも効果は少なく、渋々と別のスキルを使用する
「ナイトヒール!」
《騎士》のスキルであるナイトヒール、回復スキルが一体のゾンビに使用されるとそのゾンビは淡い光に包まれて光の粒となる
その威力を確認し終えると今度は剣を構えて突撃する
「スラッシュ!チェインフロー!」
ゾンビ達を次々と斬り刻み多くのゾンビを光の粒に変えていく、そして回復スキルを使用して残った一体を倒していく
ゾンビを倒し終え、周りを見渡すと近くの墓から再度腕が出始めていた
「もう出てくるのか、これは助かるな!」
出てくるゾンビ達に闇属性の魔法を放つツバメ、彼女は冥国ユレイスに向かう途中にあるフィールド、墓地でLv上げをしていた
生徒会が終わり寄り道せずに家へと帰宅する燕、勿論学校が始まったため少なくなったDWOのプレイ時間を確保するためである
玄関を開けてただいまと声を掛けるとリビングの方から隼の声が返ってくる
燕は手を洗ってからリビングに向かい、キッチンに立っていた隼に声を掛ける
「ただいま隼兄、夕飯の準備?手伝うよ」
「ありがとう燕、でも後は直前に焼くだけだから大丈夫だよ」
隼の手元にはチーズが乗った白いグラタン皿があり、ラップで包まれて冷蔵庫に向かっていた
夕飯まではあと2時間ほどあるため隼の言葉を聞いた燕はわかったと返事をして自室へと向かう
荷物を置いてVRヘッドを着用、そのままベッドに仰向けに寝転がる
「よっしゃ!ゲームスタート!」
視界はガラリと変わり目の前には昨日にログアウトした時の風景、グリム王国の街並みが現れる
ツバメは辺りを見渡した後、急いで教会へと向かった
教会に入ったツバメは少し人が並ぶ列の後ろに足を運ぶ、そして自分の順番を待って本を使用して《闇の魔法使い》に転職する
「これで俺も魔法が使えるぞ!ありがとう《聖職者》、ようこそ《闇の魔法使い》!」
少し興奮気味になるツバメ、こういったファンタジー満載のものは大好きなため早く試してみたいとウズウズしている
そしてツバメは《渡り人》の称号を使用してスワープという街に転移する
「久しぶりに来たな、確かこっちの門から出た先の道だっけ?」
ツバメはスワープに到着すると、そのまま街の外へ向かっていった、今回の目的はスワープではなくその先にある冥国へと向かうためである
勿論今日一日で行くことは難しいためスワープからの道の確認と魔物の確認、Lv上げが本日の予定である
「こっちの道か、先が暗くなってるな」
門を出て左にある山に沿って存在する道、奥は別の山に挟まれるようになっており手前は明るいが奥になるにつれて空間が暗くなっていた
冥国、その場所には闇の神エレスがいるようなのでそれが関係しているのかもしれない
「まあ急に死にはしないだろうし、とりあえず行ってみるか!」
そう言ってツバメは先へと進んで行く
進むにつれて徐々に暗くなり、周りの景色も少し不気味なものになっていく
そして2つの山に挟まれたこの場所に大量の墓が存在していた
「こんな所に墓地か、まるで関所みたいだな」
冥国は山で囲まれており続く道が限られている、そのため冥国へ向かう道に存在しているこの墓地をそう感じたのは仕方の無いことだろう
ツバメは墓場を囲う塀を乗り越え中へと入る
「映画に出て来そうだな、こう墓の下から這い出てくるみたいな」
ツバメが冗談交じりにそう言うと、タイミング良くツバメの隣の墓から手が生えて来た
ツバメはいきなり出てきたその腕に驚き後ろへと飛び退く、しかしその腕とその後に続く身体が出てくる速度はかなりゆっくりでツバメはじっとその様子を眺めるのだった
「ゾンビってこんな風に出てくるんだな、勉強になるなぁ」
ゾンビは土を掘り返しながら右腕、頭、左腕、身体と一つ一つ丁寧に抜け出していく
そして最後の足を抜き取ることが出来ると、ゾンビはツバメの方へと顔を向ける
「どうした?」
「グアゥア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
ツバメが声を掛けると声を荒らげ、手を前に出しながらゆっくりとツバメの方に歩き出した
勿論そうなることはわかっていたためツバメは腰にある剣を手に取り前に構える
「待ちくたびれたぜ!まずはソニックスラスト!」
ゾンビに向けて剣を振るい刃を飛ばす、その攻撃は避ける動作をしないゾンビに直撃するがゾンビはお構い無しにこちらへの歩みを止めなかった
「ダメージは食らっているが、体力が高そうだな」
ツバメはそう言うとゾンビに近づき剣で斬りつけていく、ゾンビも近づいてきたツバメに攻撃をしようとするがその攻撃は軽々と避けられる
ツバメが何度か攻撃を繰り返すと漸くゾンビは光の粒となり消えていった
「体力は高いが速度はかなり遅い、これで大丈夫なのか?」
ツバメはあまりの弱さにゾンビの心配をしていると後ろの方でゾンビが出てくる音が聞こえる
振り向くと墓の下から腕が出てきており先程と同様にゾンビが出現する
しかし一つだけ違いがあり、それは複数体出現しているということだ
「なるほど、そういうことか」
ツバメはその複数のゾンビ達を前に少し目を輝かせていた
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