依頼主より
わたしは「僕」からこのような手紙を受け取った。彼に頼んだのはわたしである。彼はクラスの中でも浮き立っており、時間を問わず発狂したと思えば、意外にも常識めいた発言をするのには驚いた。
彼は発言の中で前の学校を何かつけて引き合いに出した。詳しくは語らないものだから、挙げられたところでよく分からない。だが、あまりに執着しているので、彼に問題があるのは、その学校が関与しているかもしれないと思うようになった。そこで、とにかく聞き出してみることにしたのがこれらの文書である。圧倒的分量に驚かされる反面、あまりにも現実味のない出来事尽くしであり、妄想ではないかとの疑念は絶えない。頭ごなしに否定すると、善意を踏みにじる後ろめたさを感じそうなので、一旦は信じてみることにする。
年上至上主義という縦社会から、生徒会が支配する過激な学校への変貌。彼は幾度となく反発せずにいられない状況に陥ってきた。そして日高なる存在やその彼女を自称する女との邂逅。彼を殻から外へ出そうと説得が行われた。しかし、彼らはその途中で「僕」の前から去り、その試みも半端なまま終わりを迎えたようである。
日高の女はどうなったか、「僕」はどのような結論に至ったなどいくつか気になった。しかし、彼自身の口からはそれについてははぐらかされる。彼の望む追及において、わたしの疑問など眼中になかったのだろう。興味のないことに関して、人は限りなく無頓着になれるものだ。ただ、その興味のない範囲が、自分の出した結論にまで及ぶというのは腑に落ちない。都合の悪い事実として隠したのではないかと感じている。自分の内面を赤裸々にしたくなかっただけかもしれないが、それならこんなものは書くまい。
手紙をもらった際、それは紙本来のものとは思えない、異臭を放っていた。紙面に目を通してみると、濡れて奇怪に固まったあとが散見された。聞くに「慰みごとの際に着弾した」らしい。……
最後までお読みいただきありがとうございました。いろいろ構想にあったものを詰め込んだので、分かりにくい点もあるかも知れません。よろしければ感想、アドバイスをくださると嬉しいです。