つもっていくもの
死の三日前ー
どうして、こんなに美鶴を信じれないの。
こんなに、愛してるのに…。
なのに、どうして
死にたくなるのですか?
どうして
美鶴の傍にいるのをやめたくなるのですか?
どうして、こんなに孤独なのですか?
「美花、またやっちゃったんだね」
「ごめんね、美鶴」
「大丈夫だよ」
「抱いて欲しい」
「わかった」
傷つけて、ボロボロにして
愛を、愛を、愛を
受け止める、体にもどしてよ
美鶴…
「もう、いい」
「えっ?まだ、ちゃんと」
「しないで、痛いままがいいの」
「美花?」
「痛いままして」
私は、美鶴にそう言った。
「わかった。」
「ィッ…ハァー」
「ごめん」
美鶴は、何度も謝った。
怪我をしたみたいに痛くて痛くて…。
「痛かったよね、ごめん」
「優しいのは、嫌」
「美花、どうしたの?」
「優しさは、意味がないの」
「死にたくなるから?」
美鶴は、私を抱き締めた。
「優しくされても、幸せを感じないの!!」
「じゃあ、俺が美花を殴ればいいの?そしたら、美花は愛されてるって思うの?」
「わかんないよ、わかんない。とにかく、今はお腹痛い。あそこも、痛いから。もう、話しかけないで」
「ごめん、ごめんね。美花」
痛くてもいいと言ったのは、私だったのに、本当に痛いと苛々してきた。
私は、とんでもなくワガママだ。
ワガママな人間だった。
自分で、それを認められない。
「美花、大丈夫?愛してるよ」
美鶴は、私を優しく抱き締めてくれた。
愛してるのに、それよりもどん底なのは何故なのかな
死の2日前ー
降り積もっていく絶望と悲しみ。
拭いきれない痛みと苦しみ。
カチ…カチ…カチ…
【宮部さん、少し離します。】
三日月さんの声で、私は、荻野さんから離れた。
苦しみ、悲しみ、絶望、孤独…
荻野さんを取り巻く、暗くてネチャネチャとしたものは、ゆっくりと身体に広がっていく。
もう、身動きのとれない程のそれのせいで、村井さんの愛情を受け取れなかった。
「美花、どうしたの?」
優しく髪を撫でてくれる。
優しくキスをしてくれる。
優しく抱き締めてくれる。
その優しさが、何一つ届かない。
胸の奥底から、どんどん湧き出てくる気持ちに、押し潰されそうになっていた。
「美鶴、愛してるよ」
死の一日前ー
美鶴が、ネックレスとキーホルダーをくれた。
私は、やっぱり美鶴のあの顔が見たかった。
「美鶴、また明日からご飯を作って食べさせてよ」
私が、ずっと欲しかったものを私は、ようやく気づいた。
あの日々の中で、美鶴が見せていた、あの眼差しなのだ。
性の対象と見られていたあの日々。
トロリとした表情のあの日々。
「美花、しない?」
「うん」
私が、美鶴の身体中を食べても、あの表情はなかった。
「痛いの大丈夫?」
「大丈夫。だけど、優しくして」
「わかったよ、美花」
「んんっ、ハァー」
「美花っ、美花っ、愛してるよ」
「私も、愛してる」
あの表情を見せてよ。
また、私に見せてよ。
涎を垂らして、喉を鳴らして、
物欲しそうな顔で見て
あの顔を見たかった。
私は、ずっと、美鶴のあの顔が見たかった。
この顔じゃないのよ。美鶴
「美花、凄いよっ」
「んんっ」
この表情じゃないのよ。美鶴
もっと、エロくて、セクシーで
もっと、身体の奥底から湧き出たあの感覚。
そう、あれは多幸感
「美花、愛してる」
「もっとして」
明日には、もらえる。
あの、美鶴がまた見れる。
それだけで、真っ暗闇の心に光が当たる。
あの、沼から抜け出せる。
「んんっ、ぁ。もっと食べたい。美鶴」
「食べて、美花」
「んんっ」
美鶴の全ては、渡しのもので
渡しの全ては、美鶴のもので
誰にも渡されたくない。
誰にも渡したくない。
ペラペラと時間が、進んで行く
少しの希望を持っていた
だからなのか、荻野さんのスライド写真に少しだけ色がつき始めた。
よかった。
よかった。これで、荻野さんは生きていけるんだね。




