幸せな日々
「出来たよ。食べようか」
「うん、いただきます」
美鶴は、私がご飯を食べると物欲しそうな顔をして見つめる。
トロリとするその顔、性欲の対象であるのをマザマザと見せつけられる。
今までの私は、こんな対象にされていなかった。
女であるのを認められる事の幸福。
他人からこのような視線を向けられれば、嫌悪の対象になるのだけれど、愛する美鶴からならこんなにも嬉しくて幸せなのだ。
私が、口に食べ物を持っていくとゴクッと喉を鳴らすのだ。
「はぁ、はぁ、美味しい?」
「うん。美味しい」
息づかいが荒くなり、唇の端にときより涎がでている。
「美鶴、ついてる」
「ごめん」
それを、わざとらしく拭うと美鶴の顔はさらに赤みを増すのだ。
それを見て、こんなにも欲情している自分が情けない。
「ごちそうさまでした」
「はい」
美鶴は、満面の笑みで微笑む。
膨らんだそれをどう処理しているのだろうか?
見つめた私と美鶴の目が合う。
「大丈夫しなくても、いってる」
耳元でドキリとする言葉を言われて、私は美鶴を見つめていた。
心臓が、ちぎれるほどに鼓動を叩く。
人によって、いろんな癖があるのは、知っている。
だから、デブ専で働けと言われた事もある。
じゃあ、美鶴のそれはなに?
美鶴は、お皿を下げてカチャカチャと洗っていた。
「美花」
「なに?」
「後で、シャワー浴びるね」
「うん」
そう言うと、またお皿洗いを始めた。
美鶴は、お皿を洗い終わるとマグカップにカフェインレスのコーヒーを二つ注いでもってくる。
「気持ち悪くない?」
下着が、汚れているのではないかと私は気にした。
「大丈夫。美花を見てるだけで、何度もイクから。かえるだけ、無駄」
その笑顔に体の内側から、感じた事のない刺激が走った。
これが、多幸感!なのだろうか?
「涎、でてるよ」
唇の端を拭われた。
「私、変だ。」
コーヒーを飲んだ。
「気にしないでよ。俺の方が変だから…。」
美鶴は、そう言ってコーヒーを飲んだ。
美鶴が、私にキスやその先をしないのは、太っているから?
嫌な思考に持っていかれていった。
その状態で、大学に入った私は、今までよりも酷いいじめに苦しんでいた。
「あー。デブ。クリーニング代、2万円」
「すみません。明日持ってきますから」
私は、美鶴のご飯を口にしなくなった。
美鶴は、常に苦しんでいた。
あの表情を出さなくなった。
苦しみ続けた美鶴は、初めて私と繋がってくれた。
「あぁっ」
やっとだ。
やっと、美鶴が私を抱いてくれた。
それからは、毎日のように美鶴は私を欲しがった。
幸せ
幸せ?
「はぁ、はぁ、美花。綺麗だよ」
あの顔を、しないじゃない。
あの顔を、見せてくれなくなった。
体は繋がり合っているのに…
「んんっ、っっ」
「美花、可愛い。愛してるよ」
言葉も沢山くれるのに…
どうして、こんなに空っぽなの?
「どうしたの?美花」
「ううん、何でもない」
それは、嘘。
大嘘だった。
私は、満たされていない。
美鶴、私は、満たされないの。
肌を重ねれば、重ねるだけ、美鶴を信じられなくなった。
「エッチしたら、幸せになった。前より、好きだって思ったし、信じれるようになったの」
大学の人が、話していた。
そんなのは、嘘だ。
大嘘だ。
私は、美鶴とエッチを飽きる程、毎日のようにしている。
休みの日なんて、丸一日している。
なのに、空っぽは広がっている。
空洞が、広がっていく。
美鶴が、傍にいるのに…。
どうして、満たされないの?
あの日々のような幸せがないの?
あの日々に感じた絶望よりも、数千倍の絶望。
それとともに、初めてきた感情、孤独。
それが、もっと苦しくて死にそうで息が出来ない…。
「美花、大丈夫?悩み事?」
美鶴は、私を抱き締める。
「何でもないよ」
何でもないと言えば言う程に、寂しいや悲しいを口に出せないでいる。
「美花といるの、凄く幸せだよ」
「私もだよ、美鶴」
沢山の言葉をもらってるのに、沢山肌を重ねてるのに…。
空しくて、寂しくて、孤独で
どうしてなのかな?
絶望と孤独の渦の中を、私はグルグルと漂っていた。
それは、抜け出せない泥のような日々




