流れる日々
「師匠、もう少し宝珠に優しくしてあげてもらえませんか?」
「私は、優しくしておるよ。二条」
「もう、いいのです。」
いつだって、諦めていた。
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「師匠、私は、人ではないと言うのですか?」
「いつの世も、お前が人であった瞬間など存在しないのだよ。宝珠。下らない価値観に、振り回されて、自分の存在意義を忘れるな。私をガッカリさせないでくれ」
私が、存在する理由は鍵として生きる事だけだ。
最初から、人ではなかったのだ。
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「糸埜は、両親がいるからわからないんだよ。愛されていない私の気持ちなど」
「宝珠、待ってくれ」
「もう、構わないでくれ。私は、糸埜とは違う。」
糸埜の包み込むような愛を、私は、いつだって拒否した。
小学6年の夏休みから、私は、糸埜がくれる。
優しい愛を忌み嫌うようになった。
愛されているものの愛は、愛されてない私にとって辛すぎるだけなのだ。
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「豊澄が、死んだのですか?」
「あいつは、鍵として立派な最後やったよ。」
「鍵として」
15歳の夏に、愛すべき大切な親戚のお兄ちゃんが死んだ。
私の世界は、どんどんと暗闇に引き込まれっていった。
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「宝珠、辛いなら泣きなさい。私に全て話してください。宝珠をわかるのは、私だけですよ。」
「二条さん、もうやりたくないんです。」
同じ能力を持つものとして、互いに支えあった。
二条の死は、師匠だけじゃなく私も堪えたのだ。
それでも、師匠はわかってはくれなかった。
私の愛する幽体達を、抹消する事しか考えていなかった。
いつしか、師匠に勝つ事しか考えていなかった。
師匠亡き後、生きている意味がわからなくなった。
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「復讐心だけをぶら下げて生き続ける事など不可能ですよ。宝珠」
久しぶりに再会した、千川五条に言われた。
「生きてるか死んでるかわからない。だから、沢山の人にビジョンを届けに行っている。」
「それが、宝珠の今の生きる糧なのか?」
「そうかもしれない」
「宝珠、あいつを憎み続ければいつかその毒を飲み干してしまう。わかるか?闇に落ち、化け物になってしまうぞ!そしたら、二度と人にはなれぬ」
五条は、私の為に泣いた。
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「うわぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
【完了した。宝珠。良き器じゃ】
「はぁ、はぁ、はぁ」
腐った膿の匂いと、生臭い血の匂いと焼け焦げた肉の匂いに目を開いた。
「宝珠、もう人ではないのだな」
糸埜は、正気を取り戻し私の手を取った。
右手は、真っ黒だった。
「宝珠、よく耐えましたね。死なずに生きていてよかった。」
喜与恵に言われ鏡を差し出された。
一気にストレスがかかったせいで、金髪のサラサラヘアーは、白髪に変わっていた。
「おしゃれですね」
眉毛も真っ白に抜け落ちていた。
笑った歯からは、血が滴り落ちていた。
瞳も真っ白に染まっていた。
「カラコンしなければ、気持ち悪いですね」
私は、喜与恵に笑いながら鏡を渡した。
「あの方の血を300も喰らって生きていたのは、能力が強いからですよ。私でも、100しか飲んでいません。この容姿のある程度は巫女の血で戻るかもしれません」
喜与恵は、私を抱き締める。
【宝珠がいなければ生きていけない。普通の幸せを選んで欲しかった。】
能力が強くなり、まだコントロールが出来ないせいか、喜与恵の心が読める。
「宝珠」
【私は、宝珠を弟に思い生きてきた。いなくなったら、私は、もう何のために生きていけば。二条亡き後、宝珠のみが頼りなのだ】
涙が、とまらない。
愛されているのをわかっていた。
でも、もっと愛されていたのを化け物になってしるなんて…。
それでも、私の一番は幽体だから。
許して欲しい。
そのようにしか、生きる事が出来ぬ私を許して欲しい。




