消えた
私は、ゆっくりと立ち上がった。
「浜井さん、すみませんでした。全て、私の責任です。」
浜井さんは、私の手を掴んだ。
「今のは、何ですか?」
「冴草健斗さんが、私の体から浜井さんへの思いを言ってしまったようです。」
「さっきのは、やっぱり健斗さんだったのですね。」
「やっぱりとは?」
「ズボンに手を入れられて、触れた時にこうなったのは生理現象じゃないです。健斗さんの触りかただったから。こうなったんです。」
「わかっていたのなら、何故?」
浜井さんは、涙でいっぱいの目で私を見つめた。
「三日月先生の体だったから、教えてもらったのかと思ったんです。」
「まさか、そこはお二人だけの秘密ですよ。」
「健斗さんに、抱かれたい。」
浜井さんは、ボロボロと泣き出してしまった。
「健斗さんに、キスされたい。」
私とした唇を浜井さんは、撫でている。
「上條さんに許しを得る事が出来たら、霊魂のうつしができるのですが…。ただ、私の器に少々難がありまして。」
「霊魂のうつしですか?」
「上條さんの体に冴草健斗さんをいれる、もしくは、私にいれて冴草健斗さんを構築させる。どちらがよろしいでしょうか?」
「構築とは、何ですか?」
「私の体ですが、浜井さんには、体の全てが冴草さんに感じます。これは、私にしか出来ない事です。上條さんの肉体では、感じられません。ただ、そうなると浮気になってしまいそうで…。後、今の私の肉体は傷がついていまして」
浜井さんは、私を見つめる。
「健斗さんが、いいです。今日がいいです。こんな、体のまま置かれたくない。今すぐがいいです。ちゃんと陸には説明しますから」
「浜井さん、もし上條陸さんが五木結斗さんとそうなりたいと言っても許せますか?」
「はい、勿論です。」
「では、きちんと連絡されて下さい。よければ、ここに連絡下さい。私は、冴草健斗さんを探しに行きます。」
「わかりました。」
私は、浜井さんの家を出た。
冴草さんは、いなかった。
そんな事よりも、喜与恵の力が必要だ。
私は、タクシーを拾う。
この痣を消さなければ、私の肉体に冴草健斗を入れられない。
「馬鹿なのですか、宝珠」
止まったタクシーに、糸埜が乗っていた。
「再構築させるのですか、己の肉体を使って」
糸埜は、首を横に振っている。
「とにかく、神社に行きましょう」
「どうして、知ってる。」
糸埜は、私の手を掴んだ。
人には、見えない青い糸が巻かれていた。
「ビジョンを見せる時に、肉体と魂を強く密着させれるように仕込んでおきました。」
青き糸は、信頼の糸。
断ち切るのは、つけたもののみ。
相手と同じ声やビジョンを受け取る。
「跳ね返されたのは、これのせいなのか?」
「こちらと、痣でしょうね。」
「聞いていたのか?」
「はい、便利ですね。盗聴しなくても聞こえて」
糸埜は、クスクスと笑った。
神社について、私と糸埜は喜与恵を探していた。
【宝珠、こい】
「あの方がお呼びです。」
私と糸埜は、あの方の元へ行った。
【魂からの肉体の再構築をたくらんでいるのか?】
「はい」
あの方は、いつも通り襖の向こうにいる。
【時間は、2日。返して貰えなければ、宝珠と喜与恵の抹消でいいか?】
「はい」
「宝珠?」
「お願いします。」
糸埜は、眉を寄せて下を向いた。
【ならば、契約せよ】
あの方は、私の前に白い紐を差し出した。
これも、人には見えぬもの
「宝珠」
「大丈夫。」
私は、腰に巻き付ける。
「冴草健斗は?」
【私が、連れてきとる。喜与恵入れ】
「はい。」
喜与恵は、冴草健斗を連れてきた。
『三日月先生、もういいんだよ』
私は、首を横に振った。
「浜井さんが、望んだ事だ。」
『凌平が?』
「冴草さんに、抱かれたがっていた。」
『そんな』
「嘘は、つかないよ」
私の言葉に、冴草健斗は泣いていた。
魂から肉体の再構築、実際には私の肉体なのだけれど魂の深部で繋がり合う事が可能になる。
だから、相手はより相手を感じとる。
それが、肉体にダイレクトに伝わる。
息づかい、体温、髪の毛の触り心地、手の形、目の色。
全てが、その人なのだ。




