浜井凌平、冴草健斗
魂の触れ合う最後の場所にやってきた。
「健斗さん」
「凌平、凌平、会いたかったよ」
「健斗さん、愛してる。愛してる。」
「俺も、愛してる。ずっと、愛してるよ。」
冴草健斗は、浜井凌平の頬に手を当てる。
「嫌だよ。行かないでよ。ずっと、僕の傍にいてよ。やっぱり、健斗さんに会うと我慢できないよ。この気持ちを押さえられないよ」
「俺は、死んでる。だから、凌平からは見えない。触れられない。だから、凌平は上條先生と幸せになるんだよ。」
「何で?何で、そんな悲しい事言うの?僕は、ずっとずっと健斗さんを想ってる。忘れた日なんてないんだ。」
「それが、凌平が幸せになるのを邪魔する存在なら…。一日でも、俺を忘れる日を作ってくれ」
「何で?そんな酷い事を言うの?」
「凌平は、あの日に縛られてるんだよ。だから、俺を忘れないんだよ。忘れる日があっていいんだよ。あの日、タクシーを呼ばなかった事、あの道を通った事、逃げなかった事。全部、全部、俺自身の選択だったんだよ」
浜井さんは、泣きながら冴草健斗の頬に手を当ててる。
「俺はね、あの日夜桜を見た事になんの後悔もしていないよ。凌平を庇って殴られた事も…。何もかも後悔なんかしていないんだよ」
冴草さんは、全ての想いを三日月さんにあげた。
だから、今はただ、ただ、穏やかな愛で自分も浜井さんも包める存在に変わったのだ。
「健斗さん、僕を許してくれるの?」
「許すも何もないよ。あれは、俺自身が選んだ選択なんだ。何も、凌平は悪くないよ。だから、凌平は上條先生と幸せになっていいんだよ。」
「辛くないの?健斗さんは?」
「もう、辛いとか悲しいとか痛いとかないんだよ。さっきの人、三日月先生と宮部さんって言ってね。三日月先生が、俺を全部癒してくれたんだ。だから、もう大丈夫だから…」
「健斗さん、それでも僕は、健斗さんとさよならしたくない。まだ、一緒にいたい。」
三日月さんは、何かを思い出したような顔をして微笑んだ。
「凌平、俺だって一緒にいたいよ。だって、俺はこんなにも凌平を愛してるから。」
冴草健斗は、浜井凌平の手を取って胸に持っていった。
赤やピンクやオレンジなどの色が弾けとんだ。
「健斗さん、愛してくれてるんだね。僕だけを愛してくれてるんだね。」
「うん、愛してるよ。一生愛してるよ。」
「そっちで、待っていてくれる?」
「うん、待ってるよ。ずっと、待ってる」
冴草さんは、一瞬目を伏せたけれどすぐに浜井さんを見つめた。
「キスしてもいい?」
「うん、しようか」
何度も何度も、キスを繰り返した。
「凌平、じゃあね」
「健斗さん、またね」
「後、これは、俺がもらってくよ。」
そう言って胸に優しくキスをする。
「今のは何?」
「いつかわかるから。ずっと愛してるよ、凌平」
「僕も愛してる、健斗さん」
そう言って、またキスをした。
ドクン………
.
.
.
.
.
「あの、ありがとうございます。」
「よかったですね」
三日月さんは、ニコッと微笑んだ。
「あの、また健斗さんには会えますか?」
「いえ、これが最後になります。ただ、浜井さんの事は見守っていますよ。いつでも、傍にいるのを忘れないであげて下さい。」
「はい、わかりました。」
浜井さんは、頭を下げていた。
.
.
.
.
.
僕は、頭を上げた。
まさか、健斗さんに会えるなんて思わなかった。
嬉しくて、堪らなかった。
あの、触れ合えた感覚は何だったのだろう?
凄く、幸せな時間だった。
三日月先生と宮部さんが、来てくれなければ健斗さんの気持ちを知る事は出来なかった。
僕は、ずっと勘違いしていたのかも知れない。
許してもらえないと思っていた。
あの場所で、僕だけ無傷で…。
それは、健斗さんが守ってくれたからで…。
許されない罪深き人間だって、思っていた。
僕は、健斗さんを愛って言葉で縛りつけていたたんだ。
三日月先生が、話した通りだった。
足枷を僕は、健斗さんと自分につけていたのだ。
今日、帰ったら陸と話そう。
僕の何かが、少しだけ消えたのを感じた。
涙を拭って歩きだす。
【ありがとう、健斗さん】
風がビューーと通りすぎた。




