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【完結済】不思議な桜が繋いだ縁【仮】  作者: 三愛 紫月
冴草健斗

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81/199

会いに行きます

冴草健斗さんは、三日月さんから離れた。


『きちんと、お別れをします。三日月先生』


先程までの想いは、抱えていなかった。


犯人の身勝手さで、奪われた命。


生きていたかった気持ち。


「行きましょうか」


『はい』


冴草健斗さんは、三日月さんを見ながら笑っている。


『三日月先生に、()れられたあの日ね。俺、自分が生きてるのかと思ったんだよ。』


「そう思われる方は、結構おられますよ。」


『やっぱり!だって、普通に抱き締められたりも出来るって変な感じするでしょ?』


「そうですね」


『三日月先生、俺ね。結斗から色々聞いてるよ。』


「そうですか」


『三日月先生には、幸せになって欲しいんだ。』


その言葉に、私は三日月さんを見つめていた。


「私は、とても幸せですよ」


『まだ、足りないでしょ?もっと、幸せになって欲しいんだよ。三日月先生、生きてよ!これからも、たくさんの魂を救ってあげてよ。』


「もう、充分ですよ。私がいなくても、三日月のものがいますから…。」


『駄目だよ』


冴草健斗さんは、首を横に振った。


赤信号で止まった三日月さんは、冴草健斗さんを見つめる。


『三日月先生みたいに、幽体を心の底から愛してくれる霊能者はいないよ。だから、三日月先生は生きなきゃ駄目だよ。』


三日月さんは、何も言わずに車を走らせる。


三日月さんの人生は、どんなのだったのだろうか?


能力者として産まれて生きてきて、どんな気持ちを抱えてこれまで生きてきたのだろうか?


鎖のように重く。あれは、三日月さんにとっての愛だったんじゃないかって思った。


『ついたよ。もうすぐ、現れる。』


冴草健斗さんは、ニコニコ顔で車を降りた。


『来た』


花が咲き乱れるように、パァーと明るくなったのを感じた。


「こんにちは」


「こんにちは」


私は、浜井凌平さんに手紙を差し出した。


「これは…?」


「冴草健斗さんからのお手紙です。」


「そんなもの、あるはずないじゃないですか!!僕を馬鹿にしてるんですか」


私は、手紙を突き返された。


三日月さんは、私の目を見て頷いた。


私の肩に、冴草健斗さんと手を当てた。


「凌平へ。凌平に言い忘れた事がある。勝手に猫を飼ってしまった。行けそうにないから、引き取りにいってくれない?凌平が、犯人に殴られなくてよかったって思ってる。幸せだったよ。俺は、この先もずっとずっと凌平を愛してる。最後までいれなくてごめんな。健斗」


立ち去ろうとした浜井さんが、足を止めて振り返った。


「健斗さんの声、なぜ貴女がだせるのですか?」


「言葉を伝えにきたからです。」


浜井さんは、涙をポロポロ流した。


「僕は、健斗さんを裏切ってます。健斗さん以外の相手を好きになってます。」


冴草健斗は、首を横に振る。


「そんな事を冴草さんは、気にしていませんよ。」


「嘘だ!僕は、約束したんだ。前の日に、健斗さんとずっといるからって、だから…だから」


三日月さんは、浜井さんの前に立った。


「生きているものは、叶えられなかった約束に縛られる。そんなものは、亡くなった方を縛りつけるだけだ。」


「そんな事ない。僕は、健斗さんを…」


「その愛が、足枷になっているかも知れないと考えた事はないのですか?」


浜井さんは、涙を流した。


「健斗さんの為だって」


「お互いにとって、よくないですよ。」


「でも、僕は裏切ってる。ずっと、裏切ってる。だから、申し訳ない。」


浜井さんの言葉に、三日月さんはいつもの言葉を投げ掛ける。


「亡くなった人は、愛をずっと贈っているんです。何故?受け取ろうとしないのですか?受け取れば、謝罪や怒りなど無意味な事を知るのですよ。」


「えっ?」


「では、失礼します。」


そう言って、右手を浜井さんの後頭部に持っていく。


ドクン……


とうとう浜井さんと冴草さんの、本当のお別れがやってきてしまった。

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