最後の言葉
凌平と夜桜の帰り、とても幸せだった。
満ち足りていた。
帰宅して必ずプロポーズをしよう。
猫を飼った事も言わなくちゃいけない。
幸せが、身体中を駆け巡った。
変な正義感で、逃げなかった俺は殴られていた。
とにかく、凌平を守らなければいけない。
カチ…カチ…カチ…カチ…
【少し、離しますよ。宮部さん】
冴草健斗からは、浜井凌平への愛だけが流れてくる。
とにかく、凌平を守る。
それだけを思っている。
血が流れているのに、痛いはずなのに…。
そんな事よりも、浜井さんを守るって気持ちに心が痛む。
カチ…カチ…カチ…カチ
【はずれますよ。宮部さん】
私は、冴草健斗の肉体からはずれた。
浜井さんをずっと抱きしめてる。
「最後の言葉を聞きますよ」
浜井さんには、何も聞こえていない。
「凌平に…してる。……よかったって……幸……ずっと…」
「わかりました。きちんと伝えます。」
冴草健斗は、救急車に乗っていく。
【犯人にはいりますか?】
「いえ、やめておきます。」
【わかりました】
そう言うと、ゆっくりと戻った。
カチ…カチ…カチ
.
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「お帰りなさい。」
「手紙を書きます。」
「はい、持ってきます」
三日月さんは、そう言うと立ち上がって取りに行ってくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます。」
私は、冴草健斗さんの言葉を書いた。
「犯人に入らなくてよかったのですか?」
「糸埜さんと三日月さんの、器を傷つけるのは嫌です。」
「そうでしたか…。」
三日月さんは、そう言った。
「あの、冴草健斗さんは桜宮さんの呪いで亡くなったのですか?」
「それは、違うと思いますよ。」
糸埜さんは、首を横に振った。
「それなら、死ぬのは決まっていたのでしょうか?」
「そうですね。例え、この日を免れていても、また次の日だったかも知れませんね。きっと、呪われるのではないかという恐れが引き寄せたのではないでしょうか?」
三日月さんは、そう言って私を見つめている。
「じゃあ、冴草健斗さんは生きれたのですね。なのに、何でこんな風に…。」
糸埜さんは、私を見つめて話す。
「人は、常に選択をして生きています。その選択は、気分によって変わるものです。あの日、冴草健斗さんは、呪いと言う言葉に怯えた。怯えは、判断を鈍らせます。それによって、引き寄せてはいけない選択をさせるのです。その結果、冴草健斗さんは、亡くなられたのだと私は、思っています。」
三日月さんは、その言葉に頷きながら私を見つめて話す。
「恐怖、怯え、恐れ、それらを悪しきものは、欲しがります。そうして、自分の元に導くのです。宮瀬さんのビジョンを見たときに感じませんでしたか?幸せの中の絶望を…。」
「感じました。」
「それが、奴等の好物です。絶望、苦しみ、痛み、孤独、それを喰らいたいのです。そして、そちらに連れていく。桜宮さんも、悪しき霊の一人だった。浜井さんを愛していたけれど、それよりも桜宮さんの呪いの方に考えがいってしまったのです。その結果、判断を誤ったのです。」
「思考を支配されてはいけなかったのですね?」
私の言葉に、糸埜さんは大きく頷いた。
「今までのビジョンを見た方々、皆さんそうでしたでしょう?突然の孤独や絶望、恐怖や恐れ、その結果繋がった死だった。しかし、それだけではない。何か力が加わったのを私は感じました。糸埜は、どうですか?」
「そうですね。何ものかが、強く引き寄せたのを感じました。その何ものかがわかりません。師匠は、生きていましたから…。」
「それは、神社の力ですか?」
「それは、関係ないように思いますが…。宝珠、浜井さんの元に行くならば私が少し調べておきます。」
「そうですね。宮部さん、浜井さんの元に向かいましょうか?」
「わかりました。」
私は、鞄に手紙を入れた。
三日月さんと一緒に、浜井さんの元に行く




