最後の日々
死の三日前ー
リリリーン
「もしもし」
『健斗。僕、頼朝』
「何で、番号?」
『おばさんに聞いたんだ。』
「なに?」
『芦部がさ。余命一週間なんだ。会いに行ってやってよ。……病院』
「わかった。」
俺は、アベシのお見舞いに行った。
「健斗、元気だったか?彼氏は?」
「いるよ。やつれたな」
「あぁ、多分。死ぬ。」
「結婚したんだな」
「紗那とな。桜宮さんの願い叶ったんだよ。」
そう言って、アベシは笑った。
「子供は?」
「二人いるよ」
「そっか、よかったな。」
「健斗、あの時はごめんな」
「いや、もう気にしてないよ」
「そっか!なら、よかった。ずっと、気になってたんだ。それと、桜宮さん。マジだったわ」
「えっ?どういう意味だよ」
「願い叶ってるなら、霊能者見つけて祓ってもらいな。この人探して」
「三日月宝珠を探すのか?」
「あぁ、探して祓ってもらえ。」
「そしたら、アベシも助かるのか?」
「わかんねーよ」
「探してやるから、絶対」
「またな、健斗」
弱々しい手を振った。
俺は、帰宅してパソコンを開いて三日月宝珠を探した。
リリリーン
「はい」
『芦部が死んだ』
俺が、病室を出て暫くしてすぐだった。
安らかな死だったらしい。
三日月宝珠を探すのをやめた。
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死の二日前ー
「一緒に行かなくていい?」
「大丈夫だよ。」
「わかった。」
「行ってくるよ」
「うん」
俺は、アベシの通夜に行った。
お葬式には、こないでくれと言われた。
「アベシ、ごめんな。」
「冴草さん」
「草木さん」
夜遅くだったのに会った。
「桜宮さんの呪いだって、聞いた?」
「はい」
「何か願った?」
「はい、草木さんは?」
「俺、あん時、手が痛すぎて願えなかったんだよ。」
そう言って、草木さんは頭を掻いた。
「もし、俺が死んだら来てくれます?」
「縁起でもない事言わないでよ」
「呪いなら、死ぬかもなんで」
「これ、俺の名刺。」
「これ、俺の名刺です。後で、番号いれときますね。何か、すみません」
俺は、草木さんに頭を下げて出て行った。
「健斗」
「陸斗と頼朝じゃん」
「健斗、ごめんな。」
「僕も、ごめん」
「俺が死んだら、葬式きてよ。じゃあね」
「待てよ、健斗」
俺は、陸斗の声も聞かずに歩きだした。
死ぬんだな。俺
願い叶えられちゃったから
ポタポタと涙が流れて止まらなかった。
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死の一日前ー
「今日は、行かなくてよかったの?」
「アベシの奥さんに来るなって言われたんだ。」
「何で、そんな。酷いね」
凌平は、俺を抱きしめてくれた。
「今頃、アベシ焼かれてるな。人って死んだら皆同じだよな?顔なんかわかんないし、太ってるか痩せてるかもわかんないし、何もわかんないんだよな。」
「どうしたの健斗…」
「ゲイとかだってわかんないだろ?」
「健斗、何でそんな事言ってるの?」
「俺さ、陸斗に会ってさ。また、ごめんって言われてさ。俺、あいつが好きだった。初恋だったから何か辛かった。でも、アベシだけが分かってくれてたのにさ。たった一日しか会えなかった。ずっと、会うことも許されなかった。ゲイってだけで、アベシを襲うって思われてさ。何なんだよな。本当に、マジで。何なんだよな」
「健斗、僕がいるから…。ずっと、いるから…。だから、もう苦しまないで」
凌平の優しい言葉の中に、俺は飲み込まれていった。
俺達は、一つに繋がり合った。
苦しみや痛みの続く泥のような日々の中で、俺は凌平を見つけた。
絶対に、手放したくない。
ずっと、一緒にいたい。
もっと、行きたい場所がある。
もっと、笑い合いたい。
幸せをもっと感じたい。
「健斗、愛してるよ」
「俺も愛してるよ。凌平」
俺達は、何度も何度もキスを繰り返した。
アベシ、またいつか会おう。
ペラペラと雑誌を捲るように、時間が進んでいく。
そして…。




