おまじない
中学に入学してからも、俺は陸斗と頼朝と芦部と一緒に居た。
小学校からの幼馴染みだった。
「あんさー。」
「うん?」
「桜の木の桜宮さんって知ってる?」
「あぁ、あの桜の木?」
「そう、そう。」
「でっ?」
「恋愛成就のご利益あるらしいんだわー。従兄弟に聞いたわけよ。なぁー。手伝ってくんない?」
そう、芦部がお願いしてきた。
「あー、俺はパスだわ。ごめん。怖いの嫌だし」
陸斗は、そう言った。
「僕も、無理かな。さすがに、死人も出てるって噂のあるおまじないは嫌だよ」
頼朝は、そう言って断った。
「健斗は?駄目か?」
「えー。アベシがやりたいならやるよ。手伝うよ」
「じゃあ、よろしく頼むわ。今日の夜な」
「リョー」
芦部は、笑顔で帰っていった。
「何が、リョーだよ。殺されたらどうすんだよ!健斗」
「そん時は、葬式でてね。りっくん。」
「バァーカ。本当、後先考えろよな!おめえはよ」
「じゃあな!」
「うん、バイバイ」
「僕も帰るね!」
「気ぃつけて」
俺は、りっくんが大好きだ。
男が好きって自覚した時から、大好きだ。
だから、ずっと黙っとくつもりだ。
でも、アベシの願い事ねー。
その日の夜、アベシと待ち合わせした。
「じゃあ、行こうか」
「どんな感じ?おまじないだろ?俺、いていいの?」
「封印解くには三人いるらしいんだよ。よっちゃん。行こう」
「よっちゃんって、誰?」
「保育所からの友達の草木洋太郎。」
「初めまして」
「初めまして、冴草健斗です。」
俺達は、夜の学校に忍び込んだ。
「で、どうやんの?」
「ちょっと待って」
アベシは、カッターの刃でガリガリと木の表面を削った。
「ごめん。血をつけてほしいんだ。」
そう言われた。
「わかった。」
草木さんは、躊躇いもなく親指を切りつけて血をつけた。
「はい」
「健斗は、最後でいいよ。」
アベシも親指を切りつけて血をつけた。
「健斗、大丈夫?」
「大丈夫だよ。イッ」
俺も親指を切りつけて血をつけた。
「じゃあ、行くよ。時計回りと逆周りに木を触りながら三回まわって。俺が言う言葉繰り返して」
そう言われて、三回まわる。
「桜宮さん、桜宮さん、あなたの封印を解くものです。願いをどうか叶えて下さい。」
「桜宮さん、桜宮さん、あなたの封印を解くものです。願いをどうか叶えて下さい。」
「桜宮さん、桜宮さん、あなたの封印を解くものです。願いをどうか叶えて下さい。」
三回まわって、止まる。
「お願いをして」
そう言われた。
【俺にも、長く付き合える恋人が出来ますように…。】
ブワァーって、風が吹いた。
「じゃあ、帰ろっか」
「ああ」
結局、何も起きなかった。
そのまま、何も起きなくて俺達の中学生活は終わった。
パラパラとページか捲られていく。
「捨てといて、健斗が触ったやつとか、キモいからいらない。」
「わかった」
パラパラとページか捲られていく。
「健斗、気にすんなよ」
「アベシ。見事にバラバラになったな。」
「あぁ。俺はお前が何者でも嫌いじゃねーからよ。な?ずっと友達だろ?」
パラパラとページか捲られていく。
「ごめん。紗那がさ、嫌がるんだ。友達がホモとか浮気されるから嫌だって。俺は、健斗を友達にしか思ってないって言ったんだけとさ。信じてくれなくてさ。本当に、ごめん。」
「いいんだよ。紗那ちゃんと付き合えてよかったじゃん。中1からだろ?」
「あぁ、ありがとな」
パラパラとページか捲られていく。
高校を卒業した。
「俺、大人になったら女って決めてたから」
「それ、どういう意味?」
「ごめん。楽しかったよ。健斗」
パラパラとページか捲られていく。
痛みや悲しみだけの、沼のような日々だった。
「冴草先輩、仲良くしてくださいね」
沼に咲いた、一輪の花。
風で、本が捲れるようにいっきにページか進んでいく。




