幸せな日々
「起きよう」
「うん、わかった。」
起き上がったくせに、また凌平を抱き締めた。
「キスするなら、歯磨いて」
「わかったよ」
俺は、起き上がって歯を磨いて顔を洗った。
「なぁ、凌平」
「うん?」
凌平は、コーヒーをいれてる。
「付き合う前の飲み会の帰りにさ。おじさん殴られたの覚えてる?」
「覚えてるよ」
凌平は、コーヒーを渡してくれた。
「あの人、俺達と一緒だったよな」
「うん」
凌平は、ロールパンの袋を持ってきた。
「あの人が、イケメン俳優だったらあんな殴られてなかったと思うんだよ。」
「うん」
凌平は、ロールパンを渡してきた。
「俺さ、カミングアウトするの怖くなったんだ。あれ見てさ」
「わかる。」
凌平もロールパンを噛ってる。
「高校の時の友達に、ホモだってバレてさ。他校の先輩と付き合ってて。見つかってさ」
「うん」
「ずっと中学から好きだった幼馴染みがいてさ。」
「うん」
「家に忘れてた音楽聞くやつ忘れてたから、渡したんだ。そしたらさ」
「うん」
「捨てといてって言われてさ。必死でバイトして買ったやつだろ?って言ったら、健斗が触ったやつとかキモいからいらないって言われてさ。」
「うん」
「泣いたんだ。がらにもなく俺。泣いたんだ。」
「うん」
凌平は、机の上のティッシュを差し出してくれた。
「でもさ、凌平と付き合って一年経った頃に俺会ったんだ。あいつに」
「うん」
「そしたら、あん時はごめん。でも、今も気持ち悪いってのは変わらない。って言われてさ。俺、おじさんの事あったから聞いたんだ。イケメンだったら?って、そしたらあいつ。イケメンでも、気持ち悪いから無理なんだって言われた。」
「うん」
「俺なんかホッとしたんだ。」
「何で?」
「だって、あいつには見た目なんか関係ないんだよ。イケメンでも、不細工でも関係なかったんだよ。それに、俺はホッとしたんだよ。」
「健斗さん」
「だって、見た目がよければなんてやつより。いいだろ?俺、あいつの事嫌いじゃなくなったんだよ。そこまで、ハッキリ言ってくれて逆にありがとうって感謝だったわ。」
凌平は、俺を抱きしめた。
「確かに、大人になったらハッキリ言われる方がいいと思った。だって、嫌だって思う人とはいなくて言いわけだから!僕も健斗さんの意見に賛成だよ。」
「会社でも、カミングアウトできたらいいけどさ。嫌だって言われたら仕事に支障きたすよな」
「そこは、社会人としてプライベートと仕事はわけよう」
「俺も、それに賛成だわ」
コーヒーを飲んでる俺を凌平が見つめる。
「野上先輩だけ知ってるだけでいいんだよ。それにさ、何でカミングアウトしちゃうのかな?何か支障ある?僕は、仕事してる上でなかったけど?」
「確かに、俺もなかったわ。膨らんでくのかな?言いたい気持ちがさ。俺は、若い頃からなかったんだけどさ。勝手にはバレたけど。自分でいうつもりこれっぽっちもなかった」
「僕もなかったよ。健斗さんに気持ちを言うつもりもなかったよ。このまま、定年までこの想いを抱えて生きてくつもりだった。」
「じゃあ、6年もいれてるなんて奇跡だな。これからも、一緒にいような。一生一緒だ。死ぬまで、一緒だ」
「違うよ。死んでも一緒だよ」
「そうだな。約束な」
「約束」
俺は、凌平に優しくキスをした。
パラパラと雑誌を捲るように季節が移り変わる。
凌平への愛が、ゆっくりと降り積もってく。
凌平の俺への愛が、ゆっくりと広がってく。
身体中に、愛が広がっていく。
スライドショーを見せられてるように、たくさんの写真が、移り変わる。
旅行にいったんだ。お花見をしたんだ。飲み会行ったんだ。喧嘩をしたんだ。
忘れたくない思い出達が、この胸の中を駆け抜けていく。
パラパラ…パラパラ…
季節が、過ぎ去った。
と思ったら、いっきに巻き戻った。




