DAY5 桜の木の桜宮さん
「すみません、遅れてしまって」
急いでやってきた三日月さんを糸埜さんと二人で見つめていた。
「大丈夫ですよ、三日月さん」
「ありがとうございます。宮部さんは、お仕事はどうされてるのですか?」
「それ、今さら聞くことか」
「私は、今は取材って事になってます。小さな編集者なので、別にいいそうです。」
「そうなのですね。では、準備を…」
「もう、出来てるよ」
「あぁ、すみません」
三日月さんは、何か今日は凄くテンパっている。
「宝珠、器直したんだな」
「あっ、昨日。」
「あぁー。あの人達?」
「まだ、いるのか?」
「うん、遊んでたよ」
そう言って、二人が楽しそうに話しているのを見つめていた。
「では、気を取り直していきましょうか。」
「はい。」
「今日は、冴草健斗です。」
「三日月さん、髪の毛に桜の花ついてますよ。」
「あっ、すみません」
「落ち着けよ。」
「少し深呼吸してみたら?」
三日月さんは、深呼吸していた。
「落ち着きました。」
「では、始めますか。宝珠」
「器が直っているのに、糸埜を使ってすまない。」
「いや、今の師匠の力は強い。まだ、直したばかりの器では駄目だよ。私を使ってくれて構わない。」
「では、よろしく頼みます。宮部さんは、大丈夫ですか?」
「はい」
私は、糸埜の手を握りしめる。
糸埜は、宮部さんの後頭部に手を当てる。
「では、5日目を始めましょう。」
「はい」
「冴草健斗の元へ、行ってらっしゃい」
カチ…カチ…カチ…カチ…カチ…
私は、三日月さんと糸埜さんの優しさを感じていた。
【凌平、愛してる】
【凌平、ずっと一緒だよ】
【凌平、好きだよ】
.
.
.
.
.
ピピピピ、ピピピ、ピピピ
「あぁー。」
「おはよう。せっかくの休みだし。どこ行く?健斗さん。ちょっと、ちょっと、何で泣いてるの?」
カチ…カチ…カチ
【宮部さん、もう少し繋げます。】
繋がりが、緩かったのか…。
私は、覗き込まれた浜井さんの顔を見た瞬間に泣いていた。
二人の身体を通しているから、仕方のない事なのだ。
カチ…カチ…カチ…
「健斗さん、大丈夫?」
自分が、死んだ気がしていた。
そんな事は、あるはずないのに…
幸せな時に、限って人間は悪い方に物事を考えるんだよな。
俺は、凌平と暮らして一年が経った。
「健斗さん、ほらティッシュで拭
くから」
「嫌だーー」
俺は、凌平をベッドに引き込んだ。
「もっと、もっと、大事にするから。なぁ?凌平」
「うん、ありがとう」
肌を重ね合うのに、一年をかけた。
通りすぎていくようなのは、嫌だった。
会社の人間や友達が言うみたいな恋愛を凌平とはしたかった。
結婚するから大事にしたいからまだしてないんだ。付き合って一年目にしようと思ってるんだよ。
駆け抜けるような、恋愛はしたくなかった。
俺達の恋愛は、賞味期限が短いんだよ。わかるか?健斗。
仲良くなったゲイの友人に言われた。
俺は、凌平とそんな短い恋愛なんてしたくない。
健斗は、夢見すぎだって身体から始まってかないと俺等には、無理ゲーだから。
別の友人にも、言われた言葉だった。
「どうしたの?健斗さん」
「幸せだなーって思ってさ」
無理なんてないんだよ。
俺達は、神様が悪戯しちゃっただけでさぁー。
普通に、男女の恋愛と何も変わらないんだよ。
何も、変わらないんだよ。
「まだ、起きないの?」
「まだ、凌平とくっついていたい。休みだし」
俺は、凌平を後ろから抱き締めた。
「健斗さんは、ずっと僕を大切にしてくれてる。凄く凄く愛してるよ。」
「嬉しいな。凌平のその言葉。愛してるよ。俺もめちゃくちゃ愛してるよ。」
「もう、首に息かかってるし」
「めっちゃ、愛してる。愛してる。愛してる。しつこいかな?しつこい?」
「やめて、やめて、苦しいって。そんな、きつく抱き締めないでって」
「何でだよ。そんな事言うなよ。凌平、愛してる。めっちゃ愛してる」
言葉と態度を惜しみ無く与え合える関係。
それが、堪らなく好きだ。




