三日月サキ(サキの年齢を修正しました。)
「みんな、辛いのよ。三日月のものは…。」
「サキさんは、精神の異常はよくなりましたか?」
案内人の言葉に、美佐埜さんは首を横に振った。
「そうですか…。」
「宝珠は、知らないよね。」
「はい」
「サキさんの話。宝珠は、赤子だったから」
「知りません。」
美佐埜さんは、そう言った私を見つめて話す。
「三日月サキは、今73歳だね。彼女はね、ずっと不妊で悩んでた。三日月の女は、基本結婚をし子孫を繁栄させ能力を子供にうつしていくのが条件だった。」
「はい」
「でもね、サキさんはそれが出来なかった。不妊治療も今より設備が整っていたわけじゃないし、三日月のものとして子孫繁栄出来ない人間はいらないわけよ。」
「いつの時代ですかね」
「そうそう、三日月家って閉鎖されてるからさ。頭固いジジ、ババの集まりでしょ?師匠筆頭にさ」
美佐埜さんは、そう言って笑った。
「二条や宝珠や私みたいなんがさあー。いたら、サキさんもちょっとは救われたんかなあー。って思ったら、やりきれないわ。まあ、それで悩んでたのよ」
「はい」
「三日月のものとして生きる事も許されず、子も産めぬ体だから、何度も死のうとした。それだけ、サキさんは苦しんでいた。なのにさ、三日月のものは、この役立たずー。おなごのくせに、みっともない。子孫繁栄できぬのならお前などいらぬって毎日、毎日怒鳴りつけた」
「はい」
「だんだん、精神を蝕まれていった。誰にも言えず、誰にも相談できず、サキさんはずっと苦しんでいた。それでも、頑張ったのは三日月際数を愛していたからよ。」
私は、美佐埜さんを見つめていた。
「察しがいいのは、宝珠の特技だねーー」
「亞珠と美里の父親ですよね?」
「ご名答。不倫相手に子供を産ませて、引き取りました。」
パチパチと美佐埜さんは、手を叩いた。
「最低な人間ですね」
「そう、最低なのよ。人間は…。宝珠だって、知ってるでしょ?」
「はい」
「子孫繁栄出来ないって、いつの時代だよ。そんなもの途絶えてしまえ。呪われろー。何度も思ったよ。でもね、それが三日月家でしょ?」
「はい」
「人なんて最低なもの。三日月家のジジ、ババは特に」
美佐埜さんは、ポケットからハンカチを取り出して涙を拭った。
「所詮、苦しんでる人間の痛みや悲しみなど誰にも理解されないのよ。美里は、そんな形で連れてこられたからなのか、彼女は同性愛者だ。三日月のものの教え通りじゃない?」
「歪みを正すための魂。そうかも知れませんね。」
「でもね、美里も私と同じで!ざまあみろって笑ってるのよ。三日月の血なんか途絶えろって思ってんのよ。二人で、よく飲みに行って言ってるの。宝珠の前で言っちゃ駄目だよね。ハハハ」
私は、涙を流していた。
「ごめん、宝珠」
「違います。終わらせれたらいいのにって思ってしまいました。糸埜が、途絶えさせないようにしてるのに私は酷い人間です。三日月なんて滅んでしまえばいい。そしたら、苦しむ魂など減るのだ。」
美佐埜さんは、首を横に振った。
「三日月のものと話すから、救われていく魂がいるんだよ。確かにやり方は、むちゃくちゃで…。頭も固いけどさ。三日月のもの達が、救った幽体の数を考えれば…。三日月は、滅んではいけないんだと思うんだ。来世は、きっと。二条も宝珠もサキさんも美里も私も、報われてるから!大丈夫だよ。」
「今の世は捨てろって事ですね」
私の言葉に、美佐埜さんは頷いて笑った。
「そうそう。今の世は捨てていいの。だから、私は一生このままでいるよ。骨を愛して生きてく。」
私は、美佐埜さんの強さを羨ましく思う。
「だから、宝珠の器の傷が直ったら見せてよ!ビジョン」
「わかりました。」
「オカルト記事のライターさんとの恋の結末も楽しみに待ってるから」
「わかりました。」
「じゃあね。また、くるから」
「はい」
美佐埜さんは、手を振って去っていった。
三日月のものの苦しみ。
それは、遥か昔から続いていたのだと思う。




