三日月の教え
「案内人さんが、探していましたよ」
「ああ、後で行くよ。宮部さん泣いているのですか?」
三日月さんは、私を見つめていた。
「三日月の教えを話していた。歪みを正す魂の話を」
「そうですか…。一生独身なのかと思っていますか?」
「はい。いえ、独身でもいいんです。別に…。ただ、何の為に産まれたのか?って思ってしまったのです。」
「愛を知るためですよ」
三日月さんも糸埜さんと同じ事を言った。
「愛ってなんですか?」
「何でしょうかね」
糸埜さんは、首を傾げる。
「はぐらかさないで下さい」
三日月さんは、糸埜さんの肩を叩いた。
「糸埜だって、まだわかってはいないのですよ。結婚し、子を授かっていますが…。まだまだです。」
「そうですね、宝珠」
「それって、お二人は三日月の人だからですよね。それなら、一般の私はどうなるのですか?独身で、一生終える運命だと聞かされた。私はどうなるのですか?」
私は、涙を押さえながら話した。
「今の世の中の流れの中では、生きづらいですよね。」
三日月さんは、私の手を握った。
「私も、生きづらい事の方が多かったですよ。それに宮部さん、私も独身ですよ。それは、悪い事でしょうか?それなりに人を好きになった事もある。私は、幽体を愛してる。宮部さんは、オカルト記事のお仕事を愛してる。」
「読んでいただいたのですか?」
「はい、とても素敵な記事でしたよ。愛が伝わってきました。それのどこがいけないのでしょうか?」
三日月さんは、首を傾げて私に尋ねる。
「わかりません。でも、女の幸せを何にも掴めてないでしょ?私」
「そうでしょうか?女は、結婚し子を宿し育てるのが幸せだというのは思い込みですよ。」
三日月さんは、そう言って笑った。
「誰かが決めた枠にはまらずに、自分が望む形の愛を受け取りにいけばいいのです。宮部さんが、丸を望んでるのに四角に当てはめてはいけませんよ。その歪みは、自分を苦しめるのです。」
「三日月さん、私は、記事を書いてるのが幸せです。新しいオカルト話を見つけて探すのが幸せです。誰にも邪魔されない一人の部屋で、皆さんが教えてくれた話を読むのが幸せです。それが、私の欲しい愛ならば私は毎日が幸せです。」
「それで、いいんですよ。」
三日月さんは、驚くほど柔らかく笑った。
「私も、誰かにビジョンを見せている時が幸せですよ。これは、私の役目であり愛だと思っています。幽体を愛しビジョンを必要な誰かに見せる。それだけで、私は毎日幸せなのです。」
その言葉に糸埜さんが話す。
「私は、三日月家を途絶えさせないようにする事が自分の役目であり幸せだと感じていますよ。三日月の皆と過ごす事が私の愛だと思っています。」
三日月さんは、糸埜さんに笑いかけた。
「自分が欲しいものをわかっているだけで幸せな事ですよ。その事に、愛を注げる。それだけで、産まれた意味はありますよ。」
三日月家の人達の前では、私の悩みなど小さい事なのだ。
「運命は、変えれますとか占い師らしい事言ってくれないのですか?」
私は、三日月さんに言った。
「そんな事を言って、宮部さんが一生独身だったら、私は、何と言えばいいのですか?チャンスを逃しましたとかっていうのですか?それは、違うと思いますよ。宮部さんが、もし結婚出来ない事を私に相談してきたとしたら私は、こう答えます。それで、いいのですよ。宮部さんは宮部さんだけの幸せを掴んで下さいねと言いますよ」
その言葉に、私は泣いていた。
「三日月さん、何か初めて言われました。」
「そうですか。私には、宮部さんが結婚や子供を望んでいるようには感じられませんよ。」
「望んでません」
「やはり、そうですよね、それならば、それでいいじゃないですか…。誰に遠慮がいるんですか?これは、宮部さんの人生なんですよ。他人の顔色なんか伺わなくてもいい。例え、ご両親でもです。」
三日月さんの、その言葉に私は、もっと泣いてしまった。




