見えない心の傷
『三日月さん、これは何?心が、ポカポカするよ』
『よかったですね。それが、見えない傷の治し方です。』
『俺は、愛する人がいなかったし、家族もいなかった。それでも、自分でこうやって出来たのですね』
『皆さん、やり方は違うかもしれませんが…。私は、こうやって治す方法を教わりました。』
吉瀬さんは、泣いている。
『自分の軸は、幼い頃に両親によって作られると昔聞いた事があります。でもね、その軸を私も持っていないのです。だから、自分で自分を慰める方法も癒す方法も知らなかった。』
三日月さんは、吉瀬さんの頭を撫でる。
『吉瀬さんは、構ってちゃんでも、悲劇のヒロインでもありませんよ。ただ、誰かに理解されたかっただけです。それを、安易な言葉で傷付けたのです。構ってちゃんと言えば終わりに出来る世の中がおかしいのです。』
三日月さんは、吉瀬さんの涙を拭っている。
『簡単に便利なツールで、指一本で繋がれる。それは、世界中の人間とです。だから、皆、人間の価値を無下にしがちです。たった一言の言葉の重みにも気づかないのです。構ってちゃんでいいじゃないですか!明日から、私も怨み節を投稿しましょうか?』
三日月さんは、そう言って笑った。
『怨み節は、やめましょう。ちなみに、どんなのですか?』
『幽体が、成仏させろと言ってきてウザイ、払っても消えないからめんどくさい、勝手に会いにこられてダルイとかですか?』
『それ、オカルトで気に入られそうですよ』
三日月さんは、吉瀬さんを引き寄せた。
『私は、沢山の幽体に会いました。しかし、ここ一年は、ネットの案件が増えました。不妊で辛くて掲示板でお喋りしていた主婦が飛び降りました。彼女もまた不妊不妊うるさい、構ってちゃん、旦那に相手されとけババアって言われたと泣いていました。皆さん、清い魂でしてね。繊細なんです。飴細工みたいな器でね。出会った時には、砕けてましてね。』
吉瀬さんは、髪を撫でられてる。
『同性愛者でもあったんですよね?』
吉瀬さんは、三日月さんを見つめている。
『わかるんですか?』
『はい。母親の売春のトラウマからそうなったビジョンが流れてきました。辛かったですね。理解されなかったんでしょ?』
『はい。そうですね』
『こんな風にされるのが、私ですみません。こんな、おじさんで』
吉瀬さんは、首を横に振った。
『俺は、三日月さんみたいな綺麗な人に最後に会えてよかったですよ。』
『それなら、よかったです。』
『受け入れてくれてたと思った友達が影でキモいって言ってたんですよ。』
『友情なんてそんなものですよ』
『三日月さんも、そうでしたか?』
『人間は、嘘つきですからね。心と裏腹の言葉を話す。いつだって、騙されるのは清い魂だけです。受け入れてくれたって安心しても、次の瞬間にはキモいって平然と言えちゃう生き物が人間です。』
『三日月さんって、面白いですね。生きてる時に出会いたかった。三日月さんを知りたかった。』
『体の関係以外なら、望みを叶えてあげますよ』
『じゃあ、ユーリって呼んでくれる?』
『はい、ユーリ』
吉瀬さんは、キラキラした笑顔を三日月さんに見せる。
『キスぐらいは、してくれる?最後にさ』
『構いませんよ』
三日月さんは、幽体に対して紳士で愛がある。
『来世は、三日月さんみたいな人に会えるといいな』
『会えますよ』
『お別れのキスしてくれる?』
『はい』
『じゃあ、よろしくお願いします』
三日月さんは、優しくキスをした。
『バイバイ、三日月さん』
『さよなら、ユーリ』
吉瀬さんは、消えていった。
三日月さんは、それをずっと見ている。
『ごめんね。助けてあげられなくて…。』
カチ…カチ…カチ…カチ
三日月さんは、ビジョンを切った。




