吉瀬ユーリの話
私は、三日月さんの魂が触れ合った場所にやってきていた。
先程のように、話している。
『あのさ、三日月さんは、スマホでコメントとか書いたりした事ある?』
『いえ、ありません。』
『俺はね、あるんだよ』
『そうですか』
吉瀬さんは、そう言って悲しい顔をした。
『素人さんが書いてる小説だったと思う。ブログだったかな?俺ね、それのコメントに投稿したんだ。俺もこんな親だからわかる。わかる。って思ってね!』
『はい』
『でも、やっぱり辛いから。ハッピーエンドにしてもらいたいなとか、辛くて読めないなとか書いたらさ。』
『はい』
『お前、構ってちゃんでうぜーなって言われてさ』
吉瀬さんは、ボロボロ泣き出した。
『誰にも言えない気持ちを書いたら、構ってちゃんになるんだね?ただ、俺は誰かに共感して欲しかったんだ。いや、誰かじゃない。作者の方に共感してもらいたかった。それを、ネットの世界では構ってちゃんって言うんだろ?俺は、構ってなんか欲しくないんだよ。三日月さん、わかる?』
三日月さんは、吉瀬さんを抱き締める。
『わかるよ。構って欲しくないけれど、わかって欲しかったんだよね。吉瀬さんは、リアルで言葉をうまく紡げなかったから、そこで話したのですね』
吉瀬さんは、三日月さんにしがみつく。
『ただ、わかるよって言って欲しかっただけだよ。なのに、うぜー、構ってちゃん、自分好きなだけ、悲劇のヒロイン、可哀想っていわれたい奴って言われてさ』
吉瀬さんは、ボロボロと涙を流している。
三日月さんは、吉瀬さんの涙を拭ってあげる。
『ネットの世界に優しさなんて落ちてないね。三日月さん』
私は、そんな事はないって言いたいけれど、言えなかった。
『だから、わかるよって返信されてるコメント以外、全部削除したんだ。』
どれだけ相手が苦しんでいても、解りはしないのだ。
吐き出した言葉を簡単に否定させ、相手に削除ボタンを押させる。
『そんな人は、面と向かって相手になど言えませんよ』
三日月さんは、吉瀬さんを泣きながら見つめた。
『わかってるよ。自分がそうだから…。だから、わかってほしかったんだよ。少しでもわかるよって言われたら、あぁこんな俺でも生きていてよかったのかなって思うでしょ?』
三日月さんは、泣いている。
『馬鹿だから、俺、言い返してさ。そんなの言われるなら、コメント削除するし、構って欲しいわけじゃないしとか、一番駄目な奴だろ?』
『駄目じゃない』
三日月さんは、吉瀬さんを抱き締めた。
『駄目なわけがない。傷ついたのに、ネットの世界だから剥きになるなと言う奴がいたら、私が吉瀬さんのかわりに叩いてきてやる。』
『三日月さん』
『ネットもリアルも関係などない。それは、人がやってる事なのだ。あの日、出会った日を覚えてるか?』
『覚えてるよ』
三日月さんは、吉瀬さんから離れた。
三日月さんは、泣きながら、吉瀬さんを見つめる。
『ネットに写真を投稿された女子高生が、自殺した。その子の幽体をご両親に会わせに行った日だったんだ。』
『写真?』
『同級生に無断でアップされたんだよ。そしたら、誹謗中傷が沢山書かれた。芸能人気取ってる、可愛いと思ってる、ブス、気持ち悪い、何様?。確かに、可愛いねや綺麗や肌綺麗だね。とか書いた人もいたけれど…。彼女には、その言葉は伝わらなかった。』
三日月さんの手が震えている。
『悔やんでいたよ。ネットの世界で死を選ぶなんてってね。でもね、私にはよくわかるんだ。私は、ネットじゃなく幽体だけれど…。その人達に嫌われたら生きていけない。そして、霊力のある私にはその画面から刃物が飛んできているのが見えるんだ。』
『えっ?どういう意味?』
『その瞬間に、相手が思ったままの感情が、刃になりここを貫いているんだよ。だから、皆、追い詰められるんだよ』
三日月さんは、胸をトントンて叩いた後、吉瀬さんの頬にゆっくりと手を当てる。




