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【完結済】不思議な桜が繋いだ縁【仮】  作者: 三愛 紫月
宮瀬歩

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59/199

選択

三日月さんは、宮瀬さんから離れて、宮瀬さんの涙を拭う。


『ただ、それでも、生きて行く選択を私はして欲しかったです。生きることは、大なり小なり辛いことですから…。肉体を持って産まれた以上は、痛みを知らねばならないのです。喜びや楽しさや嬉しさよりも、魂を強くするのは、悲しみや憎しみや痛みなのです。だから、その痛みを感じながら生きるしかなかったのですよ。』


三日月さんの話し方は、穏やかで宮瀬歩は、見えないベールに包まれているようだった。


『早乙女加奈枝さんを向こうで待っているべきですよ。それを、お二人も望んでいます。それまでは、どうか三人でいてください。』


『三日月さん』


宮瀬さんは、三日月さんにキスをした。


それは、とても、とても綺麗だった。


(あゆむ)ーー』


『来ましたよ』


三日月さんは、宮瀬さんを立たせた。


『ニコ、カール』


『歩、迎えに来たよ』


『一緒に、向こうで愛する人を待とう』


『ありがとう』


宮瀬さんは、二人に抱きついた。


『三日月さん、さよなら。出会えて、よかったです。』


『はい、私もです。』


『あの時は、ありがとう』


『いえ。』


『さよなら』


三人は、手を振って消えてしまった。


カチ…カチ…カチ…カチ…カチ


.

.

.

.

.

.


「すみません。泣いてしまいました。」


「いえ、みんな泣いていますから大丈夫ですよ。」


糸埜(いとの)さんは、泣きながら笑っていた。


「あの私、ずっと三日月さんだと思っていました。」


「あれは、三日月礼珠(みかづきれいじゅ)です。彼は宝珠(ほうじゅ)の父親です。」


「てっきり、お父様はいないのかと思っていました。お母様だけかと…。」


私の言葉に、糸埜(いとの)さんは笑った。


「もう、いません。死にましたから…。ただ、それは宮瀬さんの後だったのですね?宝珠」


三日月さんは、(あふ)れる涙を押さえていた。


「そうだったようですね。私は、初めてこのビジョンを見ましたので、今まで知りませんでした。」


「あの、何故亡くなられたのですか?」


「実は、礼珠さんは一度行方不明になっていたんです。それで、宝珠が13歳の時にひょこり現れて師匠と喧嘩したんですが、あの人は婿養子でね。でも、見えざるものが見れましてね。ビジョンも見せれたんです。その能力を師匠は買っていたので…。また、こうやって、やらしてたわけです。ただ、この人を終わらしてから消えました。で、師匠から死んだと聞かされました。」


「じゃあ、生きてるのですか?」


「それは、ありません。山道でガードレールを突き破って車ごと転落したんです。生きているわけがありません。」


そう言って、糸埜さんは首を横に振った。


「あんな、綺麗事を並べ立てて自分も自分を殺すなんてね。皮肉ですね」


「宝珠、そんな風に言わないであげて。自分とそっくりだっただろ?」


三日月さんは、糸埜さんを見つめた。


「あぁ、双子親子。師匠に言われた意味がよく理解できたよ。」


「じゃあ、三日月さんも繊細だったんですね?」


「あぁ、そうだよ。私も、父と同じだ。器が、繊細だった。」


「師匠も二条も私も、宝珠の繊細さは心配だった。いつかポッキリ折れてしまいそうで。」


「よく、生きたのですね。三日月さんは…。」


「そうだな。父の歳もちゃっかり越えた。」


「お父様は、おいくつだったのですか?」


「39歳だった。」


私は、三日月さんを見つめる。


「三日月さんも、6年前は息をのむほど美しかったのですね?」


「ハハハ、そうかもね。40歳を境に崩れたな」


糸埜さんが、笑って三日月さんの頬を撫でた。


「すみません。そんなつもりは、なくて…。今でも充分お綺麗ですよ。」


「私は、怒ってなどいませんよ。」


三日月さんは、そう言って笑った。


「ただ、凄く悲しいお話でしたね。」


私の言葉に、三日月さんが私を見つめた。


「宮部さん、もう一人のビジョンを見ていただけますか?」


「誰のですか?」


「私が、初めて眠っている時に呼び出された魂です。吉瀬ユーリ。彼も、宮瀬歩と同じような人生でした。」


「見てみたいです」


私の言葉に、三日月さんは糸埜さんの顔を見て頷いた。


「これは、7年前です。」


カチ…カチ…カチ…カチ…



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