魂の触れ合い
宮瀬歩は、魂だけの存在になった。
『やっと、触れられるよ』
三日月さんを気に入ってるようだった。
『私に、興味をもったのでしょうか?』
『そうだよ。凄くもった。』
宮瀬さんは、三日月さんに抱きついてる。
『それは、少しだけ複雑ですね。』
『そうかな?あのさ、三日月さんは構ってちゃんって言われた事ある?』
『構ってちゃんですか?それは、ありませんね。』
『そうなんだね。俺はね、あるんだよ。』
そう言って、宮瀬さんは三日月さんの手を取る。
『構ってちゃん、はいはい、いいから、いいから。そうやってあしらわれるたびに俺の心はどんどん空洞になっていくんだ。』
三日月さんは、宮瀬さんの涙を拭う。
『酷い言い方ですね。構ってちゃんですか…。私には、理解できない言葉です。』
『悲劇のヒロイン、自分好き、その話し痛いって、誰も真剣に俺の話しなんか聞いてくれやしなかった。生きてる時に、三日月さんに会えてたら違ったかな。』
宮瀬さんは、震えながら三日月さんの頬に手を当てる。
『もしかすると、そうかも知れませんね。それでも私は、自らの肉体を殺した幽体を責めたりなんかしませんよ。』
そう言うと三日月さんは、自分の胸に手を当てる。
『これは、普段魂を入れている器です。』
宮瀬さんの胸からも取り出した。
粉々に砕け散っていた。
『全然、違いますね。俺と』
宮瀬さんは、三日月さんが取り出した浮いてる、それを指差した。
『こちらは、人によって様々な形と厚さをしています。宮瀬さんのように、自ら死を選んだ魂達は粉々に砕け散っています。そこから、再構築するまでにはかなりの時間がかかり。その間、痛み、悲しみ、苦しみが襲うのです。何故なら、バリケードがないからです。』
『魂って何ですか?』
宮瀬さんの疑問に、三日月さんは笑った。
『魂は、本来の姿です。そして、魂は精神的な感情によってのみ成長します。ただ、その痛みを和らげるものが魂の器です。繊細な人は、器が薄い事が多いのです。私も繊細タイプだったからわかります。わかりやすく説明すると、頬を軽くつままれただけの痛みが、私には刃物で傷つけられる激痛でした。』
『三日月さんは、俺と一緒だったの?』
『そうですね。歩は、だから人を傷つけた。そして、この器を分厚くしたんですよね。』
『わからないけど、いつの間にか簡単には傷付かなくなってた。』
宮瀬さんが、そう言うと三日月さんは、宮瀬さんの器の破片を取り出した。
『傷付かなくなったわけではなく、感じるのが鈍くなっただけにすぎません。ゆっくりとヒビは入っていたのです。だから、早乙女加奈枝さんの「信じられない」と言われた言葉でこの器は、砕け散りました。』
三日月さんは、破片を戻した。
『先程もお話しましたが、人にとっては頬をつままれた程度の事が、歩にとっては刃物を押し当てられた痛みだったのです。』
三日月さんは、宮瀬さんの頭を優しく撫でる。
『自分を殺してしまう事は、悪い事かもしれません。でも私は、それを責めたりはしません。歩は、繊細だっただけです。人より器が薄かった。だから、魂に直接刃が当たったのです。その痛みに耐え続ける事を選択できなかっただけです。』
宮瀬さんは、ボロボロと涙を流している。
『それは、弱いって事ですよね?』
三日月さんは、静かに首を横に振った。
『弱くなどありません。私は、死ぬのは弱虫だと言う人間が好きではありません。弱虫ではありません。ただ、器が壊れてしまったり、薄くて、人より痛みや悲しみや苦しみに敏感なだけなのです。』
三日月さんは、宮瀬さんの頬に手を当てて涙を拭いながら話す。
『歩は、ただ、人よりも繊細だっただけですよ。それは、悪いことだけではありません。その分、誰かを思いやれる。誰かの傷をわかってあげられる。ただ、そこにいくまでが耐えられなかっだけですよ』
そう言って、三日月さんは宮瀬さんをきつく抱き締める。




