神社の話
あれから、俺の日々は忙しかった。
日本には、いない仕事で助かったよ。
「歩」
「よっ、元気だったか?」
「元気だよ!何か、久々にあったらイケメン二割ましだな」
「ばぁーか!俺ら、もうすぐアラフォーだろ。関口、野村と結婚したってな。慎吾は?」
「俺は、まだまだだよ。バツイチだしさ。」
「そっか」
そう言って、慎吾は笑った。
気づけば、35歳を迎えていた。
「なぁ?知ってるか」
「なに?」
「桜の季節にだけ、現れる神社の話」
「えぇ!ちょうど、今じゃん」
「そこで、願いごとしたら叶うらしいぞ」
「怪しいな」
慎吾は、首を横にふった。
「マジなんだって!」
「へぇ?そうなんだ。」
「海外戻る前にやってけば?」
「やってみようかな?で、場所はどこ?」
俺は、慎吾から詳しい情報を聞き出した。
興味ないんだけどさ。
本気で。
でも、ちょっとでも加奈枝と寄りを戻せるならって期待しちゃったんだよ。
「ここって、行き止まりじゃねーかよ」
ビューーって、強い風が吹いた。
「えっ?あったっけ?」
一瞬、目を瞑っていた。
「まぁ、いっか」
俺は、その神社にはいった。
「こんにちは」
「こんにちは、あの絵馬って」
「こっちです。」
「どうも」
俺は、絵馬に書く。
【早乙女加奈枝ともういちど付き合えますように…。】
オッケイだな。
俺は、もう嘘をつきたくなかった。
あれから、ずっと心の空洞を埋める方法がなかった。
お参りして、【早乙女加奈枝と付き合えますように…。】
桜の下を3周回って終わりだ。
「あの、お守りを買っていきますか?」
さっきの人に、声をかけられた。
「はい、ぜひ」
「恋愛ですか?」
「はい」
「それならば、こちらがよく効きますよ。」
「何て読むんですか?」
「読み方は、必要ありません」
俺は、そのお守りに3000円払った。
「肌身離さずもち歩いて下さいね。」
「はい、わかりました。」
財布に、そっとしまった。
「では、お気をつけて」
「はい」
俺は、神社を後にした。
何か、変な神社だったな。
はぁー。
カチッ…ボゥッ
「スー、フー」
煙草なんかやめちまいたいな。
「死にたい」
はぁー。
また口に出してた。
あれから、ずっと口に出してる。
「病んでるねー。」
俺は、向こうでニコに出会った。
「これって、病んでんだな」
「まあ、私よりましかな?」
手首いっぱいの傷を俺に見せつけた。
別れるって口に出したら、死ぬと脅された。
一人で死ぬんじゃないんだ。
「歩を殺して私も死ぬから」
何度言われたかな?
イライラした時に、俺はこう言った。
「だったら、早く連れてけよ。もう、生きてるのなんか無理なんだ。わかんねーだろ?ニコには…」
ニコは、ボロボロ泣いて。
「もう、言わないからごめんね」と言った。
それからも、やっぱり同じ繰り返しで…。
なのに、俺達は磁石みたいにピッタリ張り付いてるんだ。
どれだけ、お互いを傷つけあったって張り付いて離れないんだ。
「死にたい、死にたい、死にたい」
俺は、煙草を地面に叩きつけてグリグリと足で踏んづけた。
拾い上げて、律儀に携帯灰皿にしまった。
ちょっと、スッキリした。
同僚のカールが、突然キレて虫を踏み潰したのを思い出した。
あいつの目は、イカれてた。
でも、あいつの気持ちがわからなくなかった。
「ゲイなんだ。歩」
受け入れてくれると思ったのかな?俺なら…。
「ごめん。答えられない」
気持ち悪いとか、二度と俺に関わるななんて一言も言ってなかった。
なのに、カールは…
バチン…バチン…バチン
「なんだよ?」
無言で殴られ続けた。
「どうした?カール」
バチン…バチン…バチン
「やめろよ」
「歩、受け入れてよ」
ボロボロ涙を流されて、ビリビリ服を破られて、もう受け入れるしかなかった。
「なんで?なんで?彼氏が出来たってなんで?」
「わかんねーけど。付き合わないと殺すって、レイプしたって言うって」
「はあ?意味わかんないから」
ニコに怒鳴られ続けても、同じ事を繰り返し言うしか出来なかったんだ。




