幸せというなの絶望
「はい、お待たせ」
「ありがとう、いただきます。」
きちんと言葉にしていけば、それは埋まると思っていた。
「美味しいよ、加奈枝」
「よかった」
「大学は、楽しい?」
「それなりだよ」
きっと、俺なんかよりキラキラしてるんだろ?
「歩?大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫」
人は、キラキラに劣等感を抱くのを俺は加奈枝との生活で知った。
大人になれば、理解されなくなって…。
俺は、孤独が増していった。
「しゃあねーよ。歩」
仲良かった親友にそう言われた時に、俺はハッキリと理解したんだ。
親の毒の中で育った俺と、何の不自由もなく育った皆とは違うって事を…。
「歩、大丈夫?ボッーとしてるよ」
「大丈夫」
だから、加奈枝と俺も違うんだ。
電気に群がる虫のように、キラキラしたものに群がるんだ。
俺みたいな人間は…。
「悪い、ちょっと出るわ」
「待ってよ、せっかくの休みでしょ?」
「悪い、すぐ帰ってくるから」
焼きそばを半分残したままで俺は、家を出た。
加奈枝といると惨めになるんだ。
自分勝手かもしれないけれど…
人は、知らず、知らずに誰かを傷つけているのだ。
その人が、放つキラキラのせいだと本人は気づかない。
気づかないから、怒るのだ。
何で、私ばっかりと…。
あの頃は、よかった。
学生の頃は、みんなが俺に向いてくれた。
「歩、わかってくれるだろ?」
「歩、マジでそうなんだよ」
俺だけが、みんなの唯一の理解者だった。
世界は、俺を中心に回っていた。
カチッ…
俺は、次第に酒と煙草に溺れるようになった。
誰にも、理解などされない。
「ふー。」
だって、同じ人間とはいたくない…。
気持ちは、解ってもらえても向こうも同じだけ惨めだ。
「死にたい」
いつからか、その傷を消す言葉は死にたいって呟く事になった。
だからって、死にたいのかと聞かれたらよくわからなかった。
たぶん、この胸の中のグチャグチャに言葉をうまくつけようがないんだ。
「死にたい」
口に出せば救われる。
加奈枝ともういたくない。
幸せなのに、いたくない。
俺は、煙草を消した。
俺は、ずっと誰にも理解されない孤独を引きずっていたんだと思う。
「歩君」
「野村」
「元気にしてた?」
「うん、それなりに。そっちは?」
「私も、それなりに」
「そう、じゃあね」
「歩君、待って」
俺はね、最初から加奈枝を裏切っていたんだと思う。
「なに?」
「死にたいの私もわかるよ」
その弱々しい笑顔に、吸い寄せられたんだ。
カチッ…
「よかったの?俺なんかと」
「うん、よかったよ。初めてだったけど」
俺は、浅はかな生き物だ。
「そっか」
「早乙女さんと付き合ってるんでしょ?」
「あぁ、同棲してる」
「ふーん」
「野村は?」
「私は、親が色々とうるさくて、あれするなこれするなって成績が下がったら怒られるし」
人間は、自分を必要としてくれる存在が好きだ。
「歩君が、羨ましいよ。自由で、私もそうなりたい」
私が、いるじゃないって言葉よりも、そうなりたいって言われる方が俺は好きだった。
煙草を灰皿に押しやった。
「もっかいする?」
「うん」
俺は、野村とこの日から度々関係を持つようになった。
二人存在がいると、安心できた。
「ただいま」
「遅かったね、どこ行ってたの?誰か、煙草吸う人といたの?」
「パチンコ」
加奈枝の喉を考えて、加奈枝の前で俺は煙草を吸わなかった。
「またぁー。あんまり、お金使ったらダメだよ」
「あー。わかってる。シャワー浴びるわ」
「うん」
一つ嘘をつくと、次の嘘も簡単に産み出せてしまうのだ。
シャワーの栓をひねる。
パラパラと季節が巡る。
スライドショーが、始まった。
沢山の、絶望が降り注ぐ。
宮瀬歩が、加奈枝と別れたのを感じた。
そして、野村も手放したのを感じる。
パラパラ漫画のように、流れていく時の中で
ポッカリと埋まらない胸の中と孤独を感じている。




