準備
キスを終えた案内人は、私に話しかける。
「新しいビジョンを見せるのですね」
「ああ」
「何か気がかりが、ありますか?」
「成木さんが、どうなっているかわかっていない」
「私に、見せれますか?」
「やってみようか」
私は、案内人に胸に顔を埋めるように指示をした。
右手で、後頭部に手を当てる。
ドクン……
「カエちゃん、カエちゃん。心配いらないよ」
成木さんは、師匠にまだ抱かれている。
幽体の鍵は、まだかかっている。
だが、半分外した檻がまた繋がっていた。
これでは、いたちごっこではないか…。
「カエちゃん、時間は守らないといけないからね。わかるよね?わかるよね?五木結斗をね、ここにいれるんだよ。わかるよね?カエちゃんは、もう死ぬんだよ」
ニタニタと笑う笑顔に吐き気がして、ビジョンを切った。
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「三日月さん」
「宝珠でいい」
「宝珠さん」
「どうした?」
「これでは、宝珠さんのエネルギーがなくなってしまいます。」
『その瞬間を待ってるのよ。三日月万珠は…。』
真理亜の言葉に、喜与恵君は、涙をポタポタとたらした。
「気づいたのか?喜与恵」
「その呼び方がいいです。宝珠さんを万珠さんは、殺すつもりなのですね?」
「師匠は、私を死ぬ瞬間も許さなかった。糸埜が、抹消しなかったのか?憎しみが強くて生き残ったのか?どちらも今の私にはわからない。けれど、師匠は私と私の愛する魂を抹消しようとしている。そして…」
「1000年続いた、この神社と三日月家の消滅ですね」
案内人は、私の手を握りしめる。
「喜与恵と巫女も、道連れだな」
「構いません。人の姿をした、化け物ですから」
「そんな事ないだろ?」
「そんな事ありますよ。私も巫女もあの方も、半分化け物です。」
「それは、私も同じ事だ」
まだ、体を思うように動かせない。
「何か食べますか?準備をしてきますから、宮瀬歩さんを見せるのですよね?」
「ああ、フルーツが食べたい」
「宝珠さんは、こうなった時はいつも果物ですね。」
『パイナップルとイチゴでしょ?』
「ああ、そうだ」
「ジュースにしましょうか?」
「その方が、いいね」
私は、二人に笑いかけた。
「では、作ってきますね」
喜与恵は、私が小さな頃からよくしてくれた。
『苦しめられてた、宝珠を助けてくれてたのよね?』
「ああ。ビジョンなんて見えなければ人と友達でいれた。」
『そうね。でも、ビジョンが見えたお陰で私は、宝珠といれたわ』
「真理亜が、いれば何もいらない」
『だから、駄目なの。宝珠には、エネルギーが必要。現に、私より喜与恵君のお陰で、力が少しずつもどってきてるじゃない。』
「もう、この人生を終わらせていいんだよ。わかってくれよ。」
『宝珠は、生きなきゃ駄目だよ』
「出来ました」
案内人が、ジュースを持ってきてくれた。
「ありがとう」
「三日月糸埜が、来ています」
「えっ?」
案内人は、私に着物を着させる。
「すまない」
ジュースを飲み干した。
「お連れしましょうか?」
「ああ、こっちから行くつもりだったから助かるよ」
喜与恵は、私の衣服を畳んでいる。
「では、連れてきます」
「よろしく」
案内人は、ジュースのカップを持って下がっていった。
まだ、薄暗いのにやってきたと言うことは、糸埜も何か気づいたのだろうか?
私は、糸埜が師匠に力を貸してると思っていたが…
こちらに来るということは、違うのだろうか?
「失礼します。連れてきました。」
「ありがとう、喜与恵」
「失礼しました。」
案内人は、下がっていった。
「お前が、真理亜か?」
『はい』
「はしたない格好だな。幽体であっても裸体をさらすな」
『すみません』
真理亜は、消えた。
「宝珠、なんだその傷だらけは…癒されていないものを、身体にいれたようだな」
「前より力が強くなりましたか?」
「二条の血を飲んだからだ」
「えっ?」
私は、糸埜の顔を見つめていた。




