愛する魂の抹消
私は、車に乗り込んで、あの神社にきた。
時刻は、真夜中の12時を回っていた。
「三日月さん」
「これを、燃やせ」
案内人は、怯えていた。
「来ると思っていたか?」
「はい」
「巫女に会わせろ」
「はい」
案内人は、ガタガタと震えている。
「三日月さん、その怒りは自分を滅ぼします。静めなければ」
「無理だ、巫女に会わせろ」
「はい」
案内人は、巫女の元に連れてきた。
「いつから、お前は人をやめた」
私は、巫女の首を絞める
「フフッ、私は宝珠の味方であるぞ」
巫女は、私の手を離した。
「大海力に、三日月万珠が入っていたか?」
「知ってたのか?」
「知るわけがない。今ビジョンが見えた。」
「あいつは、私の愛する魂を抹消する。お前は、あいつの協力者だろうが?」
「馬鹿な事を言うな。私は、万珠のやり方は好きではない。魂の抹消をむやみやたらに行っていた。私の息子も抹消された。」
「息子?」
「宍戸奏太」
「知ってる。二条さんが亡くなってすぐに抹消した魂だ。」
「私は、あれから更に強力な力を手に入れた。宝珠、お前だけが、関わったすべての魂の記憶を持っている。私の愛する奏太の記憶も」
巫女は、私の右手を握りしめた。
ドクン……
「抹消だと?彼が、何をしたんです?師匠」
「母親に会いたいという虫ケラよ」
「ただ、母親を探してあげればいいだけです」
「ふざけるな、いつか悪霊になるんだ。わかるか?宝珠」
「わかりません。彼はまだ、11歳ですよ。」
「明日には、抹消する」
「ふざけるな」
「宝珠、下がれ」
糸埜は、私を力ずくで外に出した。
『お兄ちゃん』
「ごめんよ、守ってやれなくて、ごめん」
『お兄ちゃん、大丈夫?泣かないで』
「私にもっと力があれば、奏太君を守れた。ごめんよ」
『最後は、手を握っててくれる?痛みは、僕が我慢するから』
「奏太君」
次の日、抹消された。
私は、奏太君の手を握りしめていた。
『お兄ちゃん、ありがとう』
当時の私には、抹消される魂の痛みだけを引き受ける事しか出来なかった。
でも、その痛みさえも、奏太君は私に渡してはくれなかった。
ドクン…
ボロボロと涙が止まらなかった。
「宝珠」
「はい」
「奏太は、穏やかな最後だった。」
「巫女…」
「お前のお陰だ。お前がいる間に抹消された魂達も、皆、苦痛をお前に渡した。二条もまた。消える瞬間は穏やかだった。」
巫女は、そう言って泣いている。
赤い涙だ。
「真理亜は、生きてる。」
「えっ?」
「ただ、ほとんど力がない。だから、今、力を溜めている。案内人、連れていってやれ」
「はい」
「後、真理亜と共に宝珠にエネルギーを贈り続けたものは抹消された。でも、お前に触れながらの抹消はとても穏やかだった。」
巫女は、また私の手を握った。
ドクン…
『三日月さん、大丈夫だから』
『大丈夫』
『貴方の優しさが、何よりも大好きだったよ』
『ありがとう』
『愛してくれて』
粒子の粒になるように、ゆっくりと消えていった。
叫び声もない、痛みもない、何故か暖かい気持ちが広がっていく。
ドクン…
「三日月宝珠、お前に愛された魂達は、抹消される瞬間も苦痛はなかった。お前は、それだけ幽体を愛している。だから、その愛が最後まで魂を守ったのだ。」
「巫女、私のやり方は」
「間違っていない。少なくとも私は、ハッキリと言い切れる。」
「巫女、ありがとう」
「お前の愛する魂を守り抜きなさい。」
巫女は、私に数珠のネックレスを渡した。
「これは?」
「生きていた頃の、二条の血を封じ込めた数珠だ。きっと、お前の役に立つ」
「ありがとうございます」
「案内人、真理亜の元に連れていけ」
「わかりました。」
私は、案内人に導かれながら進む。
「こちらです。」
「ありがとう」
私は、案内人に言われて部屋にはいった。




