帰宅と冴草健斗
三日月さんと成木さんが、戻ってきた。
明らかに何かしてきた雰囲気を纏っている。
「成木さん、私達が帰りましたらこちらを焚いて下さい。」
「あっ、わかりました。」
三日月さんは、手袋をはめている。
「上條さん、宮部さんは、こちらをなめて下さいね」
赤色のあめ玉を差し出された。
「巫女の血入りの飴です。結界を作りますので。」
「それ、俺も」
「舐めましたよ」
ニコッと笑う三日月さんは、ちょっと怖い。
「結界とは?」
「悪しきものから、守るためです。この件は、思いもよらない力が関わっていますので」
私と上條さんは、あめ玉を口にいれた。
「成木さん、何かありましたらすぐご連絡を」
三日月さんは、さらさらと紙に連絡先を書いて渡した。
「それでは、明るいうちにこれを焚きあげねばなりませんので、失礼します。」
「はい」
三日月さんは、頭を下げた。
「では、失礼します」
「はい、お気をつけて」
何故、恥ずかしそうにしている。
私と上條さんと三日月さんは、車に乗り込んだ。
私のモヤモヤを口に出してくれたのは、上條さんだった。
「あの、三日月さん」
バタンと車の扉を三日月さんは閉めた。
「何でしょうか?」
「さっきのは、よくやる事なのでしょうか?」
「さっきのとは?」
「キスです。」
「上條さんもしてもらいたかったですか?」
「そんなわけないですよ」
三日月さんは、ハハハと笑いながら…。
「いつもなら、私の右手から送り込むエネルギーで間に合うのですが、今回は緊急でした。なので、仕方なく」
「やろうとしてましたよね?」
「あれは、緊急でしたから」
「緊急だと誰とでもそういうの」
「初めてですよ。いつもは、もう少し時間に余裕がある。しかし、成木さんは毎日されてると言った。檻を突き破るには、そうするしかないと判断しました。ので、提案しました。けして、フシダラな気持ちではありません。」
三日月さんの言葉に、上條さんと私は、笑ってしまった。
「三日月さんは、人との距離感がおかしいですよ。それに、人間を見ていないのですね」
上條さんの言葉に、三日月さんは笑っていた。
「私は、基本的に身体の中の魂を見ていますので。男女も関係ありません。太ってる、痩せてる、綺麗や不細工も関係ありません。それに私には、皆さん綺麗に見えてますよ。」
三日月さんの言葉に、上條さんは何故か泣いていた。
「結斗が、三日月さんを気に入ってるのがわかりました。」
「結斗君がですか?どうでしょうか?気に入ってくれてますかね?」
「そうだと思います」
神社に戻ってきた。
「五木結斗を今日中に終わらすのは、不可能ですね。」
そう言って、三日月さんが手をパンパンと叩いた。
「さ、さ、冴草さん」
「上條さんにも、見えますか?」
「はい」
助手席に冴草健斗が現れた。
「五木結斗は、戻っていますか?」
「いいえ」
「帰ってきそうにないですか?」
「はい、無理ですね」
「わかりました」
「はい」
「また、戻ってきたら教えて下さい」
「はい。あの上條先生」
「はい」
冴草さんは、上條さんを見た。
「凌平を幸せにしてくれてありがとうございます。上條先生が、凌平の相手でよかったです。これからも、凌平をお願いします。」
「はい、わかりました」
「俺は、二人の幸せを祈り続けていますから」
「ありがとうございます。」
「では、失礼します」
冴草健斗は、消えた。
上條陸は、泣いていた。
「三日月さんが、手を叩いたら何故現れるのですか?呼べないのですよね?」
「普段は、呼べません。ただ、一度関わった魂を呼び出す事は出来るようです。」
三日月さんと一緒に、車を降りた。
「宮部さん」
「はい」
「五木結斗の事は、後にしましょう」
「はい、わかりました」
「では、それを渡しに行きましょう」
神社に入っていく。
「お疲れ様です」
「これを、お願いします」
「これは、かなりの力ですね。わかりました」
そういうと案内人さんは、深々と頭を下げて消えていった。




