キス
「ちょっと、意味がわかりません。」
三日月さんは、さっき取り出したものをハンカチにくるんでいた。
「私は、そのどちらもいけると思いますよ」
三日月さんは、そう言って笑った。
歯が、真っ赤で怖い。
「あっ、俺。成木楓って言います。」
無視されていた。
「あの、成木さん。聞いてますか?」
スルーは、許されなかった。
「ティシュ、どうぞ」
そりゃあ、怖いよ。
「三日月さん、やめましょう。ねっ?」
「成木さん、失礼します」
そう言って、三日月さんはキスをした。
それも、舌をねじ込んだ。
「いや、まじで。なんなんすか」
成木さんは、押した。
三日月さんは、歯で何かを掴んでいた。
ギーと引っ張る。
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ」
「失礼しました。」
黒いものが、でてきた。
三日月さんは、ティッシュをテーブルの上に置いて、それを置いた。
「何ですか?これ」
成木さんは、三日月さんを見て怯えている。
「二条の髪の毛です。」
「えっ?二条って、その人」
「いえ、彼は二条です。」
よくわからないけれど、三日月さんは、にじょう↓、にじょう↑って感じでイントネーションを変えているけど…。理解されていなかった。
「いや、どういう意味?」
「二条さんの髪の毛が、なぜ成木さんに?」
「キスですか?」
全く話が噛み合っていない。
上條さんは、三日月さんを見た。
三日月さんは、気にせずに続ける。
「成木さん、卑猥な事を聞きますが、中に出されていますか?」
成木さんは、顔を真っ赤にしながら、俯いた。
「妊娠しないから、問題ないですよね」
否定も肯定もせずにそう言った。
「では、私とも出来ますね」
「はあ?」
「三日月さん、真顔で言うの怖いですし。」
「失礼しました。いずれ、そうなってしまえるかとお聞きしたかったのです。」
「えっ?嫌、男だからって誰でもいけるって思われてるなら心外なんだけど」
「失礼しました。」
三日月さんは、頭を下げた。
「ってかさ、さっきの刃もこの髪の毛もなんなの?マジック、手品?」
「成木さんの、中にあるものですよ」
そう言って、三日月さんは成木さんの手を掴んだ。
「信じないなら、お見せします。」
私と上條さんにも、見えるように成木さんの左手を上げた。
三日月さんは、右手の手袋を外した。
「いきますよ」
そう言って、成木さんの手の甲を指でなぞる。
親指と人差し指で、何かを摘まんだ。
ぐぐっと、引っ張るとさっきのカッターの刃のようなものが、でてきた。
「どうですか?信じました?」
「マジックだろ?」
「違います。」
そう言うと、三日月さんは成木さんの左手の手の甲に頬擦りをした。
「痛いですね」
ボタボタと血が流れた。
「どうなってんだよ。流はこんな事にならないよ」
「私以外は、なりません。宮部さんが触ってもいいですか?」
「あぁ」
私は、成木さんの手の甲を触った。
「ほらね」
「手品だよな?」
「違います」
そう言うと、三日月さんは舌を出した。
「傷が消えてる」
みんな、舌を見つめていた。
「失礼します」
また、成木さんの手の甲を舐めた。
「ちょ、まじで。なんなん」
ボタボタとまた血を流した。
「三日月さん」
私から、鏡をとってまた刃を取り出した。
「痛いですね」
頬の傷が、消えていく。
「三日月さん、傷が消えた」
「あー。呪いですから。お気になさらず」
そう言って、笑った。
「俺、死ぬのか?」
成木さんは、三日月さんを見つめて言った。
「柏村にどれぐらい抱かれていますか?」
「ほとんど、毎日だよ。抱かせなかったら、首締めてくるから」
「癖は、かわらないんですね」
「どういう意味だ?」
「五木結斗という名に聞き覚えはありますか?」
「ない。」
「そうですか」
「あっ、待って。やる時に結斗って呼んでる。」
「あの、私としますか?」
三日月さんは、また成木さんに言っている。
「だから、男だからって誰でもいける」
「とは、思っていませんよ」
「じゃあ、何」
「このままだと、あなたが死ぬかもしれないからです。」
三日月さんの言葉に、成木さんは目を見開いている。




