最後だけ
神社に戻ってきた。
「三日月さん」
「最後だけは、宮部さんが見届けあげて欲しいです。」
「わかりました。」
私は、三日月さんと一緒に神社に戻った。
「上條さんに、最後の言葉を届けにいきましょう」
「わかりました。」
「もう、五木結斗が現れないかもしれませんので、よろしくお願いします。」
「勿論です。」
私は、三日月さんと神社のあの場所に戻る。
「それでは、よろしくお願いします。」
「はい」
三日月さんは、私の後頭部に手を当てる。
カチ…カチ…カチ…カチ…カチ
「はぁ…陸…陸」
私と三日月さんは、五木結斗の傍に行く。
「三日月先生…」
「何故、知ってる?」
「あ…ほ…とに…いた」
動かない手を必死で、五木結斗は動かしている。
三日月さんは、五木結斗の手を握りしめる。
「上條さんに伝えたい事は、ある?」
「は…ぃ」
「何?」
「陸………し…僕……してる」
「わかった」
三日月さんは、五木結斗の頬に手を当てる。
「み…か…せ…せ」
「はい」
「だ…い…すき」
「ありがとう、私もだよ」
五木結斗は、三日月さんが好きなのが伝わってくる。
「さ…い…後…み…せ…生…しあ…わせ」
「よかった、よかった。結斗君」
「あ…り…とう」
「うん、うん。」
三日月さんは、五木結斗を抱き締める。
「きた…い」
「綺麗だよ、結斗君は綺麗だよ」
腫れ上った顔で、必死で笑ってる。
「あり…とう」
「結斗君、ごめんね。君がくれた映像を書き換えられてしまった。」
三日月さんは、ボロボロ泣いてる。
「わが…ま…言っ…いい?」
「うん、何だい」
三日月さんは、五木結斗の手を自分の頬に当てる。
「キ…ス…し…て」
「私でいいのか?」
「み…か…せ…生…い…い」
「わかった」
「私、目を閉じてますから」
「いいよ、見ていて」
そう言って、三日月さんは笑った。
「わかりました。」
三日月さんは、五木結斗にキスをした。
五木結斗の中にある、汚いものを取り除くキスをした。
「はぁ、はぁ、み…か…せ…生」
「何だろう?」
「す…き…よ」
「ありがとう」
三日月さんは、五木結斗の手にキスをする。
「せ…生」
「絶対に、ビジョンを書き換えるから、約束するから」
「い…ま…なったよ。み…か…せ…生…になった」
「結斗君」
ジジって音が、聞こえ始める。
「やめろ」
三日月さんは、五木結斗の身体を抱き締める。
もう、すぐ息が止まりそうだ。
私も反対の手を握りにいく。
「あいつが、くる」
ジジジ…
「せ…生、もう…いっ」
「わかったよ」
三日月さんは、もう一度キスをした。
それは、深く深く濃厚なキスで
ジジジ…
映像が乱れる。
五木結斗は、そのまま死んだ
「結斗ぉぉーーー」
三日月さんは、ビジョンを切った。
「三日月さん」
三日月さんの口の中から、血や体液が流れてきていた。
「どうしました?」
「初めてだ」
「何がですか?」
「味がする」
三日月さんは、そう言って
ティッシュを取り出して、吐き出した。
「気持ち悪いですよね?」
「五木結斗に比べたら、屁でもない」
三日月さんは、そう言って口の中をティッシュで拭いている。
「三日月さんは、凄いですね」
「手紙を持ってくるよ」
三日月さんは、手紙を取りに行った。
男の体液など、気持ち悪いと思う。
なのに、三日月さんは吐き出しただけで吐き気もなかった。
「手を洗って、うがいをしてきました。はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
私は、手紙を書く。
三日月さんは、さっきのゴミを片付けている。
五木結斗の最後のビジョンにも入ってきた。
何故…
大海力は、罪を償ったと言った。
何故…
バキッ…
「ボールペン折れましたよ。宮部さん」
「あっ、本当ですね」
三日月さんは、新しいボールペンを差し出してくれた。
「ありがとうございます」
私は、上條陸への手紙を書く。
私は、五木結斗に酷いことをする所だったのだ。




