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【完結済】不思議な桜が繋いだ縁【仮】  作者: 三愛 紫月
五木結斗

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33/199

ビジョンは、最後まで

「はぁ、はぁ、はぁ」


三日月さんは、泣いている。


「おかしい。こんな事あるはずがない。私の能力に入ってこれる奴は、二条さんしかいないはずだ。何故だ、あの人の魂は抹消された。だから、私の能力に入ってこれるなどありえない。」


『三日月先生、気にしないで。もう、いいから』


「結斗君、駄目だ、よくない。上條陸との思い出を(けが)してはいけない。」


『三日月先生、出来ないんでしょ?だったら…』


「駄目だ」


「三日月さん、取り出したビジョンは、最後まで見なければいけないんですよね?五木結斗さんが、一人ぼっちで死ぬことになるんですよね?」


三日月さんは、その言葉に固まった。


「それでも、このままビジョンを進めれば、あの男が全てにいるのだ。五木結斗が、あの男に犯されて終わるのだ」


『いいよ、三日月先生』


五木結斗は、三日月さんを抱き締める。


「結斗君、行こう。宮部さんも」


「どこにですか?」


「いいから」


三日月さんは、私と五木結斗を車に乗せた。


病院の駐車場に車を停める。


受付で、「上條陸先生をお願いします。」と言っている。


「えっと、今日は夜勤でしたので、もう上がってますよ」


「あぁ、そうですか。すみませんでした。」


『陸』


五木結斗が、走りだした。


「三日月さん」


「えっ?あっ、ついていこう」


私と三日月さんは、五木結斗についていく。


病院の屋上に来た。


「伊納、やっぱりまだ前に進むのには、時間がかかりそうだ。」


「やっぱり、仕方ないよ。」


『陸』


五木結斗は、震える手で()れようとしている。


「結斗君、駄目だ」


三日月さんが、叫んだ。


「どうしてですか?」


「歪んだビジョンで()れたら…。記憶がどうなるかわからないからだ。」


「誰ですか?」


さっきの二人が、話しかけてくる。


『陸』


五木結斗は、震えながらさっきより近づく。


「駄目だ、結斗」


三日月さんは、五木結斗の手を掴んだ。


「えっ?」


『入れ替わったか…。』


三日月さんは、肉体の外に出てしまっていた。


「陸、陸」


三日月さんの体で、五木結斗は、手を掴んだ。


「何ですか?」


「認知の患者さんかな?」


「見たことがないけど…。病室に戻りますか?」


「嫌だ」


五木結斗は、三日月さんの体で泣いている。


「陸、僕を綺麗にしてよ。陸」


「おっと、申し訳ないですが、私には彼氏がいますので。」


「他人行儀は、やめてよ。陸」


ボロボロ泣いている。


「もういいよ」


五木結斗は、三日月さんの手を掴んだ。


元に戻った。


「待て、五木結斗」


三日月さんの声に、五木結斗は消えた。


三日月さんは、膝から崩れ落ちる。


「何故だ?」


上條さんを睨み付けてる。


「何がですか?」


「何故だ、何故。五木結斗を拒んだ。」


「三日月さん、何を言ってるんですか?わかるわけないじゃないですか」


「わかるだろう?愛してる人間なんだろう?姿、形がかわったってわかるだろうが…」


三日月さんは、地面を叩いて泣いている。


「すみませんが、おっしゃってる意味がわかりません」


バシン…


「三日月さん」


三日月さんは、上條さんを叩いた。


「何するんですか?」


「上條陸、五木結斗を救えたのに…。どうする…。私は、五木結斗を呼び出せない。五木結斗は、大海力にまだ犯されているんだ。」


上條さんを睨み付けて、三日月さんは泣いている。


「あの、こんな事言ったら失礼ですが、頭おかしいですよ。結斗は、33年前に死んだんです。」


三日月さんは、右手の手袋を外した。


「これでも、死んでいると言うのか?」


上條陸の後頭部に手を当てる。


上條さんは、静かに泣いている。


「何ですか?これは…」


「もう、いいです。」


三日月さんは、何も説明しなかった。


「三日月さん、帰りましょう」


「すまない、取り乱した。」


私は、三日月さんの手を握りしめた。


「待ってください。さっきのは、何ですか?」


「信じてくれるのですか?」


「信じるもなにも、どうして私の知ってる五木結斗が、知らない男に」


「さようなら」


「三日月さん」


「ちょっと待って下さい」


「失礼します。」


三日月さんは、項垂れながら去っていく。


私は、三日月さんのかわりに車を運転した。




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