幼少期 (一部修正しました。)
私は、霊媒家系である三日月家に産まれた。
三日月に産まれた人間のする事は、一つ。
見えざるものを導く事だった。
そして、封印だった。
私は、叔父である師匠の妹の子供として、この世に生を受けた。
産まれた時から、右手の小指の爪が黒かった。
【爪、黒き赤子。封印の鍵なり】
師匠は、母にそれを見せた。
母は、精神を錯乱した。
だが、一年後。
あっさりと私を捨てた。
それは、師匠が生後間もない私をあの巫女の元へ連れていき。
契約の契りを交わしたからだった。
まだ、自分がフワフワしていた私は、空っぽにちかい器だった。
幽体が、勝手に入り込んではお喋りをした。
「気持ち悪い、いらないわ。こんな子」
母は、師匠に私を押し付けた。
普通の赤子ではなかった私は、産まれてからの事を全部記憶している。
そして、引き出しをあけるようにそれを取り出せるのだ。
師匠は、私の才能に惚れた。
「いいか、宝珠。お前は、選ばれた子供だ。もし、封印が解かれたら迷わずお前は命を差し出すのだ。」
毎日、毎日、言われたけれど…。
怖くて、命を差し出せなかった。
そのせいで、今回の8人を含めた、200人近くの人が犠牲になったのだ。
私のせいだった。
私が、封印しなかったからだ。
案内人と巫女が、師匠の力を使い神社を隠してくれていた。
しかし、学校の桜の木だけはどうにも出来なかったのだ。
はあー。
五木結斗を抹消させやしない。
私は、産まれてから見えざるものの助けとなり生きてきたのだ。
そんな私が、見えざるものの人生を奪うことなど出来ない。
私が奪えば、二度目になるのだ。
それは、させない。
二度目は、抹消されるのだ。
五木結斗は、私に愛される事を知って欲しいと言った。
別に、恋愛なんてしなくたって生きてこれたのだ。
それにもう、私も45歳だ。
三日月家に産まれ、鍵として生をうけた人間としては、よく生きている。
師匠の父の父は、私と同じ黒き爪の持ち主だった。
30歳の夏に、死んだのだ。
封印の鍵になったのだ。
それから、三日月家には黒き爪の赤子が産まれなかった。
師匠は、私が産まれた日。
めちゃくちゃ喜んだという。
でも私は、この能力が、ずっと大嫌いだった。
思春期の頃は、色々と不安定で、仲良くなった友人の気持ちまで、可視化された。
まるで、CMを見せられてるように触れられたらビジョンが映った。
【三日月ってキモいよな。小指の爪だけ黒くてさ。何か時々、目とかいっちゃってるだろ?ヤバい薬やってんのかな?】
そのビジョンが、怖くて14歳の夏を境に私は、友達を断ちきった。
そんな私の友達は、見えざるものだった。
見えざるもの達は、私を癒してくれた。
私は、見えざるもの達が大好きだった。
見えざるものに悪いやつは、いない。
そう信じていた。
あの日までは…。
師匠が合わせた悪霊は、とても綺麗な女の人だった。
「宝珠、こいつはもう30人も引きずり込んだ」
県外のとある場所に連れてこられた。
そこは、古びた雑居ビルの一室。
名前は、奈瑞菜。
「お前の復讐は、もう充分だろう?」
「嫌よ、男は全員殺す」
「もう、充分苦しんだ。抹消されるのが一番だ。奈瑞菜」
「嫌よ」
まだ、弱かった私は、奈瑞菜に首を締められた。
「やめろ、未来ある若者に手を出すな」
師匠は、奈瑞菜の背中に全エネルギーを送り込んだ。
「うわぁぁあああぁあぁぁ」
「忘れるな、抹消される痛みを」
「いゃあぁぁぁぁぁぁぁ」
彼女の姿が、般若から人に変わった。
「ありがとう」
そう言って、泣いたのを見た。
「宝珠、お前は優しすぎる。悪霊もいるのを忘れてはならない」
師匠は、口から血を流しながらそう話した。
「ゲホッ、はい」
後で、師匠に聞いたのは奈瑞菜は、子供を授かれなかった。
それだけなら、よくある話の1つに過ぎなかった。
ただ、奈瑞菜の夫は、本当に授かれないのか知りたがったという。
どうやら奈瑞菜が、子供を授かりたくなくてピルを飲んでいると思い込んでいたようで…。
奈瑞菜をあの場所に監禁し、半年間。
10人もの人間に、奈瑞菜を襲わせた。
奈瑞菜は、見ず知らずの男に汚されたのだ。
その結果、奈瑞菜は窓を割って、飛び降りた。
私は、師匠の話を聞きながら悪霊にするのも人間ではないのかと強く思ったのだ。




