神社
倫の家で過ごした帰り道。
私は、友人に教えられた神社を探していた。
見つからないか…
ビューーと、突風が吹いて目を閉じた。
えっ?なかったよね?
目の前に、鳥居が現れた。
不思議な顔をしながら、鳥居をくぐり抜ける。
「こんにちは」
「こんにちは」
薄汚れた袴を着た人が、立っていた。
「あの、絵馬って?」
「ああ、こちらです。」
そう言われて、案内された。
絵馬に書く。
【倫に、プロポーズされますように…。】
そして、絵馬を飾りながら、隣を覗いた。
何の名前だろうか?
たくさんの、名前が彫ってあった。
私は、気にしないでお参りをする
賽銭を投げて、【倫に、プロポーズされますように…】
パン、パン
桜の木の下を三周回った。
これで、OKかな
「あの、お守りを買いませんか?」
「あっ、はい」
私は、その人に案内されてお守りを買いに行く。
「恋愛ですか?」
「はい」
「では、こちらですね」
【恋喰愛喰死巫女】と書かれたお守りを差し出された。
「あの、これは?」
「肌身離さず持っていて下さいね」
「えっ、はい」
私は、3000円を払った。
「あの、どうしてこんなお守りの文字なのでしょうか?」
「文字が、気になりますか?」
「はい」
「気になさらないで下さい。これは、うちの神社の神様の名前です。」
「えっ、そうだったんですか!勉強不足ですみません」
「いいえ。では、お幸せに」
そう言って、その人は頭を下げた。
私は、神社から帰る。
友人から聞いていたとおりの、不思議な神社だった。
掌に握りしめていた、さっきのお守りを鞄にしまった。
これで、倫にプロポーズされるなんて嬉しすぎるわ。
私は、倫と居れるだけでいい…。
多くの事は、望まない。
倫を支えて生きていきたいだけ…
友人達には、お医者さんなんて羨ましいと言われたけれど、私は倫がお医者さんだから好きになったわけじゃない。
例え、フリーターでも無職でも、倫を愛していた。
初めて、倫と出会った日からそう感じていたの。
倫は、忙しい人だから突然デートがキャンセルになったり、急患が来てしまって遅れたり、急変があって、来れなくなったりする。
でも、私はそんな事を気にしない。
だって、一秒でも倫の顔を見られるだけで充分なのよ。
倫は、疲れているとすぐに眠ってしまう。
待っていてと言われても帰宅が深夜になる事もある。
それでも、倫の温もりに触れるだけで全て忘れてしまう。
会えない時間の寂しさも、誕生日に間に合わなくて一人でレストランで過ごした悲しさも、全部、全部、なかった事になるの。
一ノ瀬倫と、一秒でも長く傍にいたい。
私は、一ノ瀬倫を支えてあげたい。
一緒に暮らして、倫が家の事を心配しなくていい時間を作ってあげたい。
料理や洗濯や掃除をして、倫がただ眠るだけの家を作ってあげたい。
あー。
これ、素敵。
ショーウィンドウにあるウェディングドレスの前で止まった。
これ、絶対着たい。
ウェディングフェアが、やっていたようで、たまたま飾られていたみたいだった。
倫と結婚式あげるなら、これを着たい。
綺麗だねって、倫に言って欲しい。
パラパラと雑誌を捲るように、また日々が過ぎていく。
それは、スライドショーを見せられているようで…。
でも、気持ちだけは雪のように降り積もっていく。
愛してる
愛してる
愛してる
一ノ瀬倫への愛で、身体中が満たされていく。
そして、一ノ瀬倫からもらってる愛もまた降り積もっていく。
ずっと、一緒にいたい
他には、なにもいらない
倫がいれば、それだけでいい
それ以外、何もいらない
カチ…カチ…カチ…
【宮部さん、少しだけ離します】
そう言われた瞬間、画面が切り替わった。




