力と近づいてきた人
『その手を借りてもいいですか?』
「ああ、はい」
冴草健斗は、私の差し出した右手を握りしめた。
『凌平』
そう言って、彼の頬に手を当てる。
「健斗さん、健斗さん。生きてて欲しい。」
目を大きく見開いて、泣いている。
『三日月先生、俺が死んだら凌平。浜井凌平に、会ってもらえませんか?俺は、凌平とお別れがきちんとしたかった。』
「構いませんよ。私に、また会いに来て下さい。五木結斗さん、さっきの彼にでも連れてきてもらって下さい」
『わかりました』
冴草健斗が、死にたくないのを強く感じた。
『毎晩、同じ夢を見るんです。犯人に襲われてる夢です。夢では、ないのはわかってます。三日月先生、いつか苦痛は消えますか?』
「はい、消えますよ。いずれ」
『ありがとうございます。三日月先生』
「では、失礼します。」
『はい』
私は、その場を離れた。
『三日月先生、こっちに』
五木結斗に、ついていく。
『三日月先生は、病院は苦手ですよね』
「そうだね」
『伊納円香さんって言うんです。彼女』
「知り合い?」
『はい』
「あれは?」
『学校の先生です。彼女が、付き合っていた人です。』
「あー。彼女についてるわけか」
『幸せになるのを見守っているだけですよ。いつか、先生にも会ってあげて下さい』
「わかった。」
そして、五木結斗はある白衣の男性の前で足を止めた。
『この人は、一ノ瀬倫さんです。』
「へえー。お医者さんか…。」
そう言って、私の肩に手を当てた。
ドクン……私は家に連れて帰ってこられた。
「一ノ瀬さんは、何か関係があったのかな?」
『陸が、あの人を好きだったんです。』
「嫌だったのか?あの人は」
『嫌とかじゃないんです。浜井凌平さんが、よかっただけです。』
「そうか」
『死んだ人間でも許せる相手と許せない相手がいるんですよ。』
「一ノ瀬さんは、許せないのかな?」
『どうでしょうか?許したいですが、何か陸には違う気がしたんです。』
「まあ、五木君が上條さんを愛してるのは痛い程伝わりましたよ」
そんな話をして、笑った。
五木結斗の願い通り、上條陸は浜井凌平と付き合った。
それを、私は五木結斗に見せられた。
そして、五木結斗は現れなくなった。
私は、その一年後導かれるように桜の季節にだけ現れる神社にやってきたのだ。
「三日月さん、いらっしゃいませ」
その男は、私を木彫りの場所に連れてきた。
【……小笠原亜由羽、笹木葉子、五木結斗、冴草健斗】
その男は、私が今まで接触した魂達の名前を指した。
「これは…」
「三日月宝珠さん、巫女が三日月さんに会いたがっています。」
「はい」
私は、巫女に会った。
「三日月宝珠さんですね?」
「はい」
神の使いというよりも、死神の使いのように見える。
全身真っ黒な服を着ている。
そして、その爪は両手共、真っ黒だった。
「三日月さん、手を出して下さい」
「はい」
私は、右手を握手される。
ドクン……ドクン
【きゃぁぁぁぁぁ】
【助けてぇぇぇ】
【やめてぇぇ】
【うわぁあぁ】
「はぁ、はぁ」
全身から、汗が吹き出した。
ありとあらゆる叫び声と、骨を折られる音、殴られてる音、刺されてる音が、頭の中を響き渡った。
この日、親指の爪は黒くなり、手の甲に赤い痣が出来た。
「三日月さん、もっと救えるようになりましたよ」
「あなたの力をわけられたのですが?」
「はい、これから三日月さんは過去のその人達に接触をして、死ぬ瞬間から癒してあげれます。」
「助けれるのですか?」
「魂の記憶をかえるだけです。肉体は、生き返らせれません。」
「そんな…」
「では、これを見て下さい」
【結斗、愛してるよ】
【陸、僕もだよ】
私は、初めて五木結斗の幸せな日々を見た。
それも、五木結斗の中で感じたのだ。
「今のは?」
「三日月さんが、五木結斗の中に入って、五木結斗の気持ちを感じたのです。今までより、強かったでしょう?これからの、三日月さんは今までよりもっと素敵なビジョンを見せてあげれますよ。」
巫女さんは、そう言って笑った。
「あの、それって誰かにも見せれるのですか?」
「…………。」
「えっ?」
ハッキリと聞こえずに、巫女さんはいなくなってしまった。




