やってきた、魂
小笠原さんが、会いに来るように頼んだ誰かがやってきたのは、私が占い師として仕事をし始めて二週間が経った頃だった。
ガチャ
「はぁー。疲れた。」
『三日月先生』
息をのむほど美しい男の子が、立っていた。
「君が、小笠原さんの紹介ですか?」
『はい、五木結斗です。』
その名前に、私は15年前の恐ろしい事件を思い出した。
「何故、今頃になって私に会いに?」
『陸を助けたいからです。』
「陸とは?」
『僕の愛する人です。この人生をかけて、僕は陸と生きていくつもりでした。』
「そうですか、それ程愛しい存在ってわけですか」
五木結斗は、私が思うよりも魂の力が強かった。
『三日月先生』
そう言って、彼が私の腕を掴んだ瞬間。
ドクン………。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
脳内を駆け巡った。
今まで、私が癒した被害者の中で一番の被害者だった。
『三日月先生、泣いてくれてるの?』
「もう、15年じゃないのか?ここまで、五木結斗さんの痛みは残ったままなのか?」
『三日月先生、何故、消えないのでしょうか?僕は、ずっと苦しみと悲しみと痛みの渦の中にいるんです。三日月先生、助けて下さい』
そう言って、五木結斗は泣いていた。
五木結斗は、次の日もやってきて私にビジョンを見せた。
その苦痛を取り除けない魂に、私は初めて出会った。
どうすれば、いいのか悩んでいた。
毎日、毎日やってきたのに、ある日突然五木結斗は現れなくなった。
そして、半年が過ぎたある日の出来事だった。
『三日月先生』
「久しぶりだな。五木結斗」
『三日月先生、行きましょう』
「どこに?」
『僕の愛する人が、苦しんでいます。』
五木結斗は、驚くほど真っ直ぐした目で私を見つめた。
私に、近づいてきた。
『先生、危ないからこっちに』
そう言って、ソファーに横になるように言われた。
五木結斗は、私の手を握りしめた。
ドクン…………
初めての感覚だった。
「冴草健斗?誰だ」
『彼は、この状態で一週間目を迎えました。』
『誰?』
「君が、冴草健斗さん?」
『ああ、いつまで経ってもこっちに戻れない。』
『三日月先生、器が無理だよって教えてあげたら?』
そう言われて、見る。
そうか、冴草健斗の中にはもう戻れないんだな。
『それが、切れたら死ぬんだろ?』
冴草健斗は、私を見つめた。
「そうだろうね」
『春が終わるまで、切れないように出来ないかな?』
「そんな事、神様でもないから出来ないよ」
『三日月先生、手を貸して』
私は、五木結斗に右手を渡した
冴草健斗の腰に手を当てると黄金色の光が放たれた。
さっきより、繋がりが濃くなった。
「これは?」
『春は、越せるよ』
と笑った。
『冴草さんのお願いを叶えたから、僕のお願いも聞いてくれる?』
『なに?』
『冴草さんの彼氏を僕の愛する人に、貸してくれないかな?』
『どういう意味?』
『こっちに、来るまでの間の話だよ。僕はね、陸にそろそろ立ち直って欲しいんだよ。』
そこに、上條陸が現れた。
『先生の事か?』
『うん、陸だよ』
『いいよ、貸してあげても。先生なら、俺は許せる』
『ありがとう』
五木結斗は、上條陸の隣で嬉しそうに手を繋いでる。
「冴草さん、どうか目を覚まして欲しいです。」
上條陸は、悲しそうに目を伏せていた。
「上條先生、今晩は。」
「浜井さん、今晩は。」
『凌平』
冴草健斗は、凌平と呼びながら頬に手を当てる。
切ないな、見えてない。
『貸してもらいます。』
そう五木結斗が、話すと上條陸の胸の辺りに手を入れた。
ドクン……と音がして、胸の辺りにピンクや赤などの色が弾けとんだ。
「今のは?」
『フフフ、陸が浜井凌平さんに恋をしたんだよ。』
「そんな事まで、出来るのか?」
『何故か、出来るようになったんだよ』
五木結斗は、嬉しそうに笑った。
「浜井さん、失礼します。」
『じゃあ、ちょっと失礼します。』
『あの、そちらの方は、生きてるんですか?』
『あぁ、三日月先生ですか?はい、生きてますよ』
『あの、少しだけ力を借りれますか?』
「私のですか?」
『はい』
「構いませんよ」
五木結斗は、少しだけ席を外した。




