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【完結済】不思議な桜が繋いだ縁【仮】  作者: 三愛 紫月
早乙女加奈枝

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さよならをあげます

死の三日前ー


早く言わなければ、ちゃんと言わなければ、そうやって何度も決心をしては、「加奈枝、送るよ」の言葉と共に揺らぐのだ。


友作さんの営みは、丁寧で優しい。


ご飯をゆっくり味わって、失敗しても大丈夫、美味しいと全部味わってくれる。


夜の友作さんも、同じだ。


ただ、穏やかに私を包み込む。


壊れ物を扱うように丁寧に丁寧に、肌を重ねる。


それが、また私の決心を鈍らせるのだ。


「加奈枝、送るよ」


「うん、今用意をするわ」


早く言いなさい。そう思っているのに手放せない。


自分から、友作さんの愛を捨てるなど出来やしない気がする。


カチ…カチ…カチ…カチ…


【宮部さん、少し離します。】


そう言われて、少し離れた。


早乙女加奈枝の痛みを感じている。

最初から、悪女ではない彼女は、罪悪感に押し潰されそうになっている。


「準備できた?」


「はい、帰りましょう」


時折、暗い表情を見せる。


まだ、どこかに前野友作への気持ちが残っているのではないだろうか?


早乙女加奈枝は、それに気づいていないのではないのだろうか?


私の気持ちには、気づかない彼女は、今日もズルズルと全てを終えてしまった。


帰宅して、宮瀬歩からの手紙や写真を見つめている。


遠くにいる愛しい人よりも、近くにいる嫌いじゃない人の方が、大切な存在に思えてくるのが不思議だった。


死の二日前ー


目覚めた時から、憂鬱だった。


やっぱり、今日にはきちんと話さなくちゃいけない。


友作さんの為にも…。


私自身の為にも…。


そう思って、いざ学校で友作さんに会うと何も言えなくなる。


宮瀬歩よりも、物理的距離が近い前野友作は、早乙女加奈枝にとって信頼できる人だった。


それだけに、彼への気持ちにきちんと決別する事が出来なかった。


「加奈枝、送るよ」


学校が終わり、帰宅時刻にいつものように言われると、さっきまで決めていた決心は、ボロボロと崩れ落ちていくのだ。


自分の弱さをマザマザと見せつけられる。


友作さんを手放さない自分勝手な気持ちを握りつぶしてやりたい。


でも、温もりに()れると欲しくなるの。


友作さんの全てを、私の中に全て納めてしまいたくなるの…。


二人いなくちゃ生きていけない体にでもなってしまったのだろうか?


いいえ、違うわ。


これは、歩に会えばなくなる気持ちなのよ。


そう考えると、早乙女加奈枝は罪悪感に押し潰されている。


早乙女加奈枝にとって、何が一番幸せなのか、私にもわからなくなってしまう。


死の一日前ー


結局、何も伝えられずにプロポーズをされてしまった。


嬉しいとかよりも、どうしようしかなかった。


宮瀬歩の帰国が、明日なのに、私は、花束を笑顔で受け取ってなにをしているのだろうか?


友作さんにラザニアを作ってあげた。


これは、さよならを言うための準備。


肌を重ねれば、決心が鈍るからご飯だけを食べて帰宅した。


きちんと、話して断ろう。


私は、もう友作さんと生きれない事を話そう。


宮瀬歩の訃報を知ってしまった。


どうして?何故?


私は、覚悟を決めたのに…。


歩と生きていく覚悟を決めたのに…。


私は、歩の家で自分を慰め続けていた。


歩の匂いを感じ、泣きながらしていた。


下らなくて、馬鹿げている。


何もない、絶望が胸いっぱいに広がっていく。


ああ、私は歩を凄く愛していたのね。


早乙女加奈枝は、失ってから気づいていた。


前野友作よりも、宮瀬歩を愛していた事を…。


距離に惑わされ、彼の言葉を信じられなかった事を…。


今さら気づいた所で、歩は生き返ってはこないのだ。


亡くす前に気づけていればという後悔が降り積もる程に…


歩のいない世界を歩く事の難しさを感じていた。


私は、早乙女加奈枝から絶望だけを受け取っていた。


もう、前野友作への愛は消えてしまった。


どこを、見渡しても漆黒の闇だけが広がっている。


真っ黒に塗りつぶされた、写真がパラパラ捲られていく。


カウントダウンのように、写真が捲られていく。


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