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JK、迫真のノーパン問題

 



 二人は最寄りの公園まで退避した。

 ヒナは相変わらずおくるみのままでバイクにちょこんと座って待機している。キリヤは一人でバイクを降り、砂場を適当にならした後、その辺で拾った枯れ木の枝で砂場に何かを描いている。


「……何してるの?」

「魔法陣を描いている。お前の服をどうにかしなくちゃいけないからな……こんなもんか」


 キリヤは棒を放り、懐からスマホを取り出してヒナに見せた。


「適当に子供服を選べ。それにしてやる」

「え、なんでもいいの?」

「ああ。動きやすいのにしろよ。あと、魔法使いは黒い服を着ることが掟で決まっていて……」

「えーっ今の子供服って可愛い〜!」

「おい」


 ヒナはもぞもぞやって腕を出す。おくるみの結び目がフードのように首に引っかかり、そこから剥き出しの肩がのぞき、にょきと小さな右手が出てきた。

 宙に浮いているスマホを指でぽちぽち押して探す。私服は運動しやすいスポーティな格好がメインで、どちらかと言えば男の子みたいな服装になりがちだったが、せっかく(?)幼女になった機会だし女の子らしい可愛い系を着てみるのもいいかもしれない。


「ねぇ!これがいいっ!」

「……靴までか?」

「うん!あ、色はそのままね。黒とかじゃなくてその青がいいの!」

「…………」


 ちょっと照れつつ、念はしっかりと押しておく。

 ふんわりしたフィッシュテール(スカートの前部分が短く後ろ部分が長い)ワンピース。後ろの大きなピンクのリボンできゅっと腰を締める。丸いセーラーみたいな襟も可愛いし肩袖もふんわりしてて、不思議の国のアリスみたいだ。

 まだ3月で寒いし、黒いタイツの下に柔らかそうなショートブーツを履くことにした。これならパンツが見えることもないし……と、ここまで考えてヒナはハッとした。


「ちょっと!」

「ん?」

「そ、その……あたしノーパンなんだけど?」

「あぁ、忘れていたな」

「いや忘れんなし!」

「適当に今履いているのを縮めようと思っていたがそれでいいか?」

「えーなんかヤダ!でもあたしのパンツをあんたに知られんのもヤダ!このヘンタイ!」

「なんだそれは。服を提供してやるお優しい師匠に感謝しろ」

「まだ弟子入りするって決めてませーん!べ〜!」


 文句をつける幼女にキリヤはやれやれと首を振る。面倒なので注文は聞かず、そのままおくるみごと掴んで砂場の真ん中に置いた。


「服のことは全部終わってから改めて考えろ。時間がないから始めるぞ」

「むー……」

「────《格子交換(リライト)》!」

「……お? おおぉぉおっ……!」


 おくるみの布の表面に布を裁断するような線が燃えるように全体にはしり、ヒナの身体は薄青に輝く繊維に包まれる。キリヤはヒナが輝いて変身しているところなど微塵(みじん)も興味なさそうに背を向けており、何かを調べているようだ。


「わぁー!身体が浮いてくー!」


 おくるみの中で掴んでいた制服(と下着)が、無重力な空間の中でするすると解けて持っていかれる。それらはリボンくらいの細さに細かく分かれていったかと思うと、ヒナの身体を蝶が舞うようにとりまき始め、手や足や身体に巻き付いて再び結びあっていく。

 そして、洗濯物のように宙でくるくると回転して地上に降り立つ頃には、ヒナは画像のモデルの子供と寸分たがわぬ服装になっていた。


「おぉ……!」


 ヒナは砂につくほど長い髪をカーテンのように持ち上げ姿を確認する。思いのほか着心地がいい。画質の荒い画像だった割には、布地の質感も繊細だしタイツの履き心地もとてもよい。タイツ特有のずれ落ちるような感じがなく、ズボンをしっかり履いた時みたいにおしり周りがきゅっとしまって安定感がある。


「すごーい!高い服着てる気分!これ魔法?」

「ああ」

「それ他の人でも使える?あたしもできるようになるかな?」

「努力次第だな」

「へー!」


 さっきは弟子になるか決めてないとか言っていたくせに、もう習う気になってくるくるはしゃいでいる。都合のいい子供だ。

 キリヤは砂場ではしゃぐヒナに髪を結ぶ太いヘアゴムを手渡した。


「髪は自分でどうにかしろ。できるだろ」

「えー、ヘアセットの魔法とかないの?」

「……自分で調べろ。弟子になってからな」

「むぅー」


 髪ゴムを渡してから、再びスマホで過去の症例を漁る。


 キリヤには釈然としない点がいくつかある。

 何故ヒナは生存していたのだろうか。あの膿を浴びれば、どんな魔法使いでもひとたまりもない。


 あの膿は、言わば吸血鬼の消化液だ。

 吸血鬼は人間の血を吸い、その魔力を自分のものにする。しかし、血は人の魂そのものであり、ただ吸っただけでは“魂の抵抗”を喰らうことになる。

 だからあの高濃度の消化液の中で魂の抵抗を粉々に押し潰してから自分の魔力として再利用するのである。


 もし仮に、魔法使いがあの膿を浴びて生き延びるとしたら、同じくらい強い魔力砲か何かで膿を押し返さなくてはならない。

 つまり、全か無か──完全に消滅するか無傷でいるかのどちらかしか有り得ない。


 それが何故子供の姿になって生き残っているのだろう。しかも精神は大人のヒナのままで、だ。

 精神はそのまま、身体だけが子供になっている。そんな症例は今まで聞いたことがない。


完結まで毎日投稿します。、

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