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時連魔 ~ 下館零和遊戯  作者: バルテルミ
8/8

4.完璧を求めるより取り敢えず終わらせろ

唐突に辞表を叩きつけ、職を辞した下館第三高校大島元校長。彼が吸い込まれた魔物と対峙することとなった館三生徒会執行部。その明暗やいかに。

アマネ(船橋亘):あらあらあらあら。校長先生、辞表を出したら死亡フラグまで出てきてこの世ごと辞めちゃったわね。ま、異世界に転生するころには中途半端に残った髪の毛とギトギトハゲオヤジ分が抜けて素敵な美少女にでもなってるんじゃないかしら。


ゴガミ(五上響):船橋、お前なんで息するようにそんなエグい表現ばっか出てくんの?家庭環境だいじょぶ?

ケバリナ(池羽理那):ガ●パンのダ●ジリンとまど●ギの●ミさんを足して二を掛けた厨二持ちなんで多分しょうがないですね

ボロリナ(古谷野莉奈):いや、んなこと言ってる場合!?


 生徒たちが異形のものとは逆方向の出入口から体育館の外へと駆け出す。


ゴガミ:針谷!末柄!野堀!生徒たちの誘導を頼む!

のえこ(針谷乃瑛子):はい!

ましろ(末柄真白子):みんなー!落ちついてー!先輩たちがちょちょいとやっつけてくれるからとりあえずここを離れましょー。

あさひ(野堀朝陽):外に出たら私についてきて!クラスごとに整列してねー!


ゴガミ:今からうちと伊王野でアイツを仕留める。絶対にヤツの2メートル以内に近寄んな。

みもざ(熊倉美茂佐):了解です

あゆこ(雨海愛優子):どうせならこっちから飛び道具でやっつけたいですね…。


 と、その時…異形のもの、もとい魔物が唐突に身震いをはじめる。すると、体育館の外から扉や窓の開け放たれているところから瘴気のようなものが飛来、異形のものに取り込まれていった。


ゴガミ:とりあえず戸締めをしてえな…

イオノ:不用意に動くのは危険だ。…だが、たしかに瘴気の供給ルートは絶っておきたいもんだな…


アマネ:それでしたら私に。

ゴガミ:船橋!針谷たちと一緒に逃げろ!

アマネ:その必要はございません。


アマネ:礼節こそ

 体育館の窓のうち、異形のものの後ろにある窓が閉まる。

アマネ:人を

 つづいて正面ドアが閉まる。

アマネ:形づくる

 そして体育館中の窓とドアの鍵が閉まる。


イオノ:ロンドンのエージェントみたいなことをしてくれるんだな。

アマネ:そして、お口にチャック。


 すると、異形のものの口が突然閉まり、うめき声をあげ始める。


アマネ:口を閉じました。先輩方、今のうちに。


イオノ:(五上、…今だッ!)

ゴガミ:(おう!)


 イオノとゴガミの二人が刀を構え、魔物に向かって駆けはじめる。


イオノ:うおおおおおおおお!

ゴガミ:おらあああああああああああああァ!!!!!


 全速力で斬りかかる二人…その刃がきらりと光った刹那、魔物が水平に斬り裂かれた。


ボロリナ:…やったか!?

アマネ:古谷野さん、あなたどうして敵の撃破失敗フラグを立てちゃうの?

ボロリナ:は?


ケバリナ:とはいえ、()ったっぽいよ

トコ:()りますねえ!

ケバリナ:あのさあ

ボロリナ:きっつ…


 斬り裂かれた魔物がのたうちまわり始め、そのまま瘴気となって雲散霧消した。…イオノとゴガミは水平に刀を構えたまま互いに見つめ合っていた。


ゴガミ:…伊王野…うちら…勝ったん…だよな?

 イオノは小さく頷くと、大きなため息を吐きながら納刀する。そして、「下館勢」つまりボロリナ達たちの方を向く。


イオノ:みんな…怪我はなかったか?

ゴガミ:もう大丈夫だ!やっつけてやったかんなー…!…じゃねーんだわ!おい!下館の6人組!てめーら逃げろっつったのに何で全員ここに居んだよ!危ねーだろ!言うこと聞け!あと船橋!お前もだ!結果オーライだからって…


 二人はそう言いながら生徒たちの方に歩み寄ろうとしたその時、魔物がいたあたりに暗い紫色の円が現れる。


オリエ(時野谷織絵):先輩!

ゴガミ:あぁ?

エレナ(瀬端英令奈):まだなんかいます!

イオノ:!?…なんだ??


トコ(早瀬都子):あれってー…魔法陣…?

アマネ:そうね


 トコの言うように、魔法陣のような図形が体育館の床の魔物がいたあたりに展開される。その瞬間、人影が魔法陣からヌッと現れた。


???:ごきげんよう女子高生諸君。さっきの闘いぶり楽しませてもらったよ。


イオノ:!!!

ゴガミ:んだテメェ!


 イオノとゴガミは慌てて刀を構える。


???:おっと失礼。そうだなァ…ナタリア・ダークスとでも名乗ろうか。いわゆる「魔女」ってヤツです。


 突然魔法陣から現れた人影、ピアスやネックレス、ブレスレットといったようなシルバーアクセサリーをジャラジャラと下げた彼女は黒ずくめのいかにも魔女な恰好。ローブに緑色の長い髪が「異世界」から来た存在であることを克明に物語っていた。


 イオノが怪訝な顔をしながら「魔女」に問う。


イオノ:…ダークスさんとか言いましたね。なにをしにこちらの世界へ?

ナタリア:まあ、直に分かるよ。要約するとさ、さっき喰われた校長の言う通り「北関東三県がナメられて異世界から侵略される」っていう感じ?


ナタリア:つーかさあ…その物騒なモンしまってよ。どーせ人斬ったこともないんだろうし人斬りになる勇気もないでしょ?

ゴガミ:煽んじゃねーや!

ナタリア:こーれだから天狗様は…

イオノ:今なんて言った?私や五上が水戸の人間だと知ってて言ったか?

ナタリア:おー怖。はいはい撤回しますよ。


イオノ:もう一度問おう。なにをしにここへ来た。

ナタリア:上司命令で「北関東を侵略」しに来ましたー。て言えばいい?つーかマジでくだんねーからさ、「既成事実」だけサッと作ってとっとと帰りたいわけ。

ゴガミ:勝手にやってきて他人様の田畑屋敷財産を勝手に略奪なり破壊なりしようっていうのか?あぁ?


 と、その時。ナタリアとやり取りをするゴガミの後ろにのえこがやってくる。


のえこ:あのー…

ゴガミ:あんだよ針谷、今取り込み中だよ!

のえこ:とりあえずここで破壊活動したっていう証拠を上司に報告できればいいんですよね?


ナタリア:え?あ、まあ…そうなるが…。


ボロリナ:なんでうろたえてんだ?

ケバリナ:あの魔女意外と可愛いところあんじゃん


のえこ:旧部室棟、解体してもらえませんか?


アマネ:…あら。

みもざ:えぇ?

あゆこ:あー…

あさひ:そうきたか


イオノ:…侵略者に解体依頼?どういうこと?

ゴガミ:手続きだなんだをすべてすっ飛ばせば割とアリなんじゃねえかと思えてきた

イオノ:おいおいおいおい…五上まで…正気か?

ゴガミ:あのクッソ危ねえボロカスコンクリブロックの集合体が「金ねえ金ねえ」で谷田貝さんの代からずっと放置されてんだぞ

みもざ:確かに

イオノ:まあたしかにそれはそうだけど…


ましろ:えー?あれナツさんの代から放置されてるんですか!?

ボロリナ:誰です?そのナツさんって…?

ましろ:うちのねーちゃんの幼なじみの同級生で生徒会長!んで、うちのねーちゃんは副会長!末柄紅子は今年23の新米社会人です!


ケバリナ:姉妹揃って館三…しかも生徒会執行部…

エレナ:つっよ…

ケバリナ:そして件のボロカスコンクリは5年以上放置されていると

ボロリナ:池羽今日はよく喋るなあ


のえこ:あのー…ダークスさん、解体してくれますか?

ナタリア:ええ…いきなり来るんだな…


ナタリア:…ちなみにどれだい?

みもざ:引き受けてくれるんだ

アマネ:針谷先輩意外と大胆じゃない


のえこ:ご案内します!


 のえこたちは校地の西はずれにある「旧部室棟」へと向かう。そこにはゴガミの言葉を借りれば「ボロカスコンクリブロックの集合体」となった、かつては部室棟として使われていたコンクリートブロック製の2階建てのかなり老朽化した建造物が立っている。


のえこ:これです

ナタリア:これか

アマネ:気になってはいたけども


 ナタリア、ローブの裏ポケットに手を突っ込み、なにかを取り出す。


オリエ:秘密道具?

ナタリア:スマホ。

エレナ:え?


 そういうとナタリアは「旧部室棟」をカシャカシャと撮影し始める。


エレナ:フツーに写真撮るんだ…

アマネ:現場写真…

ナタリア:ビフォー写真撮んなきゃ報告にならんだろ

オリエ:フツーに解体業者みたいな段取り


ナタリア:…と見せかけて


 ナタリアが左手を虚空にかざすと、濃い紫色の光、もといブラックライトのような光源が掌の上に出来上がる。そして、その掌をピッチャーのように前に振りかぶったと思った刹那


アマネ:あら

イオノ:!

ボロリナ:あっ

トコ:わー…


 ナタリアが「旧部室棟」に投げつけたブラックライト玉は、その躯体に衝突したと思った瞬間いくつもの亀裂を生じさせ、そして…


一同:!!!!


 「旧部室棟」は一瞬にして瓦礫の山となった。


ナタリア:これで宜しいですかね?針谷乃瑛子庶務長。

のえこ:・・・・・・ホントに解体されちゃった・・・・・・・・・。


 ナタリアは再びローブのポケットからスマホを取り出すと、瓦礫の山となった「旧部室棟」のアフター写真を数枚撮り始める。


ナタリア:ではでは女子高生諸君。魔女は異世界に戻るとしようかね。


 ナタリアがそう言うと彼女の足元には魔法陣が展開される。そして眩くも禍々しい光があたりに広がったと同時に、彼女の姿はどこにも見えなくなっていた。


 と、そこに教頭が体育館の陰からボロリナ達のもとに歩み寄ってくる。


教頭:君たち!大丈夫だったか!一体奴は何だったんだね…

イオノ:教頭先生、お疲れ様です。性急で申し訳ないですが、明日夕方5時に生徒会室にお越しください。あなたも校長先生、もとい前校長の大島氏と同格の共犯とみなしています。私、伊王野と五上、そして委員長クラスの末柄・熊倉・野堀・針谷・雨海の7人全員でお待ちしていますので、包み隠さず事実の弁明をしていただければと思います。


 生徒会執行部一同、教頭にガンを飛ばす。


教頭:(ヒエッ…)

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