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時連魔 ~ 下館零和遊戯  作者: バルテルミ
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3-2.ノブレス・オブリージュは突然に

 入学してから初めてのゴールデンウィークがせまる頃。ボロリナたちはオリエ(時野谷織絵)やアマネ(船橋亘)とともに生徒会執行部からスカウトされるが、その真相とは…。

そして、ボロリナたちが執行部への入会届を書いているとアマネが怪訝な顔をしながらエレナへ話しかけた。


アマネ(船橋亘):あら。瀬端さんって下の名前「えれな」っていうの?

エレナ(瀬端英令奈):今更?

アマネ:申し訳ないけど、あなたたちの発音だと「えりな」にしか聞こえないわ。

下館勢六人:!!!!!!

アマネ:…六人揃ってそんなに驚かなくたっていいじゃない。まあ、「えりな」ちゃんならフツーにいる名前だし、おおよそ「英里奈」あたりだろうと思ってたら字を見たら「英令奈」だから「え?」って思ったわけ。


 下館擁する茨城県、もっと言えば栃木県の足利市付近を除く北関東の東部方言、いわゆる栃木弁・茨城弁は母音における「イ」と「エ」が混同する方言として知られる。具体例としてよく挙げられるのが「色鉛筆イロエンピツ」であり「イロインピツ」「エロインピツ」「エロエンピツ」いずれの発音でも通じてしまうという。


みもざ(熊倉美茂佐):ウケる…。大平の親戚のおじちゃんも嘉右衛門町かえもんちょうのこと「カイモンチョー」って言ってるからなんかわかる

のえこ(針谷乃瑛子):いーじゃんそんぐらい。うちなんかばーちゃんに「のいこ」って呼ばれてっかんね。

イオノ(伊王野眞):のいこ…

ゴガミ(五上響):のいこって…わりい針谷面白過ぎる…。

ましろ(末柄真白子):のいぴ!

のえこ:もう!!のいこのいぴ禁止!!!!


ましろ:でもでもー、たしかに瀬端さんは「えりな」ちゃんなのか「えれな」ちゃんなのかは気になってた。

エレナ:英語の英、平成令和の令、京都大阪奈良の奈で英令奈です。

イオノ:うちも人任せにするとたまに「いおうの」ってルビ振られてることがあるし…まあ、元になった地名は今だと「いおうの」が正式な読みだし一概に違うとも言えないからなあ…人名って難しいよね。

ゴガミ:そういやうちも何回か「ごのかみ」って間違えられたことあったな

イオノ:今までの五上の人となりを考えたら間違えた人は気が気じゃなかったのは容易に想像がつくな

ゴガミ:おい伊王野。どういう意味だ。


イオノ:まあいい。…きょう時野谷さんや船橋さんたちに来てもらったのは単純に生徒会執行部への勧誘、だけじゃないんだ。


オリエ:どういうことです?

アマネ:私達に白羽の矢を立てた理由がちゃんとある、ということですね。


イオノ:ああ。話が早いから助かるよ。とりあえず落ち着いて聞いてほしい。

そう言うとイオノは神妙な面持ちになり、生徒会室の空気が一変する。


イオノ:…こんなことを言うと気でも狂れているように聞こえるかもしれないが、異世界が北関東を侵略する手筈を整えはじめているらしい。

みもざ:眞先輩…ホントに言うんですか…?どっから湧いてきた情報か知らないですけど新入生たちヒきますよ…


オリエ:…え?別にヒきませんけど。

みもざ:へ?

ゴガミ:ほーら。言ったろー?

ケバリナ:確かにこの世界線は魔法使えますし、そんな侵略劇があってもおかしくないですよね。

エレナ:こないだだってなんかそれっぽい事件起きましたし。

トコ:そもそもこれラノベですしー、異世界からの侵略がプロットにあるくらいぜーんぜんフツーだと思いますよー。


ボロリナ:今日メタ発言多すぎじゃね?


イオノ:というわけで、多分近々校長先生から正式に発表があると思うんだ。…ただ、他の生徒には黙っててもらってもいいかな。

トコ:近々発表があるのにダメなんですかー?

ゴガミ:これは生徒会の自治権に基づいて決議されたもんじゃねーんだ。校長とお上が勝手に決めやがったのを押し付けようとしてんだよ。


ボロリナ:…なんでそんなことに進学校の館三が巻き込まれるんです?

イオノ:そうだね。まずそこから教えよう。…五上。

ゴガミ:ああ。…まず、進学校っつーのは頭がよくてちゃんと勉強してなきゃ入れない。解るよな?

ボロリナ:え…?まあ。

ゴガミ:ここにいる生徒はある一定ランクの頭の質が担保されている、というわけだ。

ケバリナ:まあ、偏差値68ありますもんね。

イオノ:君たちの代の平均は67に下がったそうだ。気を抜かないで頑張ってほしい。

オリエ:なんかすみません…。


イオノ:そういうわけで、良くいえばその地頭の良さを期待されて侵略してくる異世界連中を追い返す役を期待されてるってわけだ。

アマネ:悪く言えば、地頭はいいからこいつらになら丸投げしてもだいたい大丈夫だろう。…くらいに思われているってことですね。

イオノ:まあ、そんな感じだろうと思うよ。…ちなみに、この話には見返りのようなものが用意されてもいる。

オリエ:見返り?ですか?

ゴガミ:異世界勢を追い返すまたは討伐することに功のあった生徒は進学先選び放題。東大京大でも無試験でOKなんだとさ。

トコ:えー!?やりたいやりたいやりたいです!

エレナ:みゃーこ!落ち着いて!

アマネ:早瀬さん。敵の正体もよくわからないのに乗るおつもり?骨壺の中に入ってから後悔したって遅いのよ。

ゴガミ:妙にセンスのある表現だな

ボロリナ:単に趣味が悪いだけなんじゃ

アマネ:何か言ったかしら古谷野さん


ゴガミ:つー訳で、発表日になったら全校生徒の前で校長を〆てこの計画を止めさせる。その時には君らにも協力してもらいたい。

イオノ:五上の言うとおり。私からもお願いします。


アマネ:もちろん協力します。…社長令嬢、勿論あなたもでしょ?

オリエ:な、いいですとも!

ボロリナ:そんな計画に巻き込まれちゃたまんないですし、もちろん協力します。

ケバリナ:私もやります。

アヤメ:微力ながら賛同します!

トコ:甘い話で釣られる子が出たらマズいので私も全力で止めます

エレナ:さっき全力で釣られてたのはどこのどの子なんだか…協力します。



みもざ:んじゃ、みんなの賛同が得られたところで…そろそろアレの時間にしますか。

のえこ:あー!みもたす和スイーツ持ってきてくれたのー?

 みもざ、冷蔵庫から大きなタッパーを取り出しフタを開ける。


ボロリナ:これは…タッパーおはぎ…!!

ましろ:キターーーーーー!もち米とあんこの間にきなこの層があるのが熊倉流ぅ~!

オリエ:なにそれ絶対旨いやつじゃないですか

トコ:出入口の近くのコーヒーメーカー使ってもいいですかー?

エレナ:たしかにコーヒー合いそう

イオノ:ごめん…それ壊れてて使えないんだ…。


アマネ:…瀬端さん。

エレナ:どしたの?


アマネ:さっきの「えりな」ちゃんにしか聞こえないって発言、あれ嘘よ。


ボロリナ:え?

エレナ:よく考えたら同じクラスだし名簿に「瀬端英令奈」って書いてあるの見てるよね?

アマネ:ええ。

オリエ:よかったー…。

ケバリナ:乗り換えなしで上野も新宿も行けるからってイキリ過ぎだろ古河市民

ボロリナ:いや、そのツッコミも意味不明だよ


アマネ:ていうかなんであなたたち六人全員真に受けちゃうのよ。「んーな訳あるかい」「おいおいw」みたいな反応を期待したのに引っ込みがつかなくなっちゃったじゃない。

ボロリナ:いやいやいやいや釣り針垂らしといて逆ギレすんなし


ゴガミ:船橋、ちょっと悪質すぎんぞ。そのイジリ。

イオノ:おじさん世代にありがちだけど、見事な茨城訛りで「俺訛ってないかんねー」とか言われた日には確かに反応に困る。


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