2-1.置かれた場所で咲けるかどうかなんて知らないけど咲くための場所は自分で勝ち取りなさい
タッチの差で首席入学を逃したボロリナとケバリナ。しかし、首席で入学した古河出身のアマネ(船橋亘)、宇都宮出身のスミレ(玉生菫)もかなり強烈なキャラの持ち主で…。
――平成31年4月某日 平成31年度茨城県立下館第三高等学校入学式(同校体育館)
少し早い桜前線が過ぎ去り、桜は散ってしまったものの、実力で桜を咲かせた新入生たちが一堂に体育館に会していた。
しかし、そこは館三。新入生たちは制服のモスグリーンのボレロに身を包みながらも既に個性派の片鱗を見せはじめていた。
ボロリナ(古谷野莉奈):あ、いたいた。オリエー。
オリエ(時野谷織絵):おはよー。サラサラ金髪ロングにダサカワボレロ似合いますなー。
ボロリナ:不思議だよねーこの制服。昭和からアップデートしてないの丸わかりなのに地味子からギャルっぽい子までどんな子でも似合うし。
ケバリナ(池羽理那):ま、制服変えようとするとOG会が猛反発して異臭プンプンのボロ毛布でグルグル巻きにされたあと台風通過中の鬼怒川にポイ捨てされるらしいし。
ボロリナ:あ、池羽。
ケバリナ:おはよう古谷野。
と、そこに合格発表当日は家族の体調不良でボロリナたちと会えずじまいだったアヤメが登場する。
アヤメ(坂入あやめ):みんなおはようー。
ボロリナ:あ、あやめ!あ母さんの体調だいじだった?
アヤメ:あー全然。そういえばタッチの差で首席取れなかったんだって?
ボロリナ:ホントそれ。私もケバリナも496点取って勝利宣言してたらまさかの497点がいるとかマジでバケモノ。
アマネ:(船橋亘):ホントに往生際が悪いのね。たかが一点差、されど一点差よ。
ボロリナ:出た!
アマネ:出たって。どこまで人をバケモノ扱いすれば気が済むのかしら。
アヤメ:誰この子?
ボロリナ:今年の首席の船橋さん。点数開示の受付の脇で知り合った。
アマネ:船橋です。どうぞよろしく。
アヤメ:へー…坂入です。よろしくお願いします。
ケバリナ:もう一人いたよね?ちょっと変わった名前の子。
スミレ(玉生菫):玉生だ!おはよう!
ボロリナ:噂するとすぐに登場するこのノリの良さ一体何なん
アマネ:おはよう玉ちゃん。ところで、この間のお昼代もってきたかしら?
スミレ:あ、悪い…忘れた。
アマネ:まったく…。
ボロリナ:どしたの?
アマネ:この間の合格発表のあと玉ちゃんと二人でご飯に行ったんだけど、この子ったら400円しか持ってなくて足りない分貸したのよ。
ボロリナ:手持ち400円でどうやって宇都宮まで帰ったんだ…。
スミレ:交通費は別に持ってたからセーフだ!
ボロリナ:当日知り合いになった同級生から金借りてる地点で余裕のアウトだろ
と、自ら桜を咲かせたその喜びで盛り上がっているボロリナたち。入学式そのものも滞りなく進んでいき、新一年生の担任紹介となった。
教頭:と、いうわけで一年一組、正担任は数学の関翼先生、副担任は生物の遠藤雅先生です。そして一年二組、正担任は日本史の大快寛先生、副担任は現代文の木城徹先生です。一年三組は…
担任紹介が進むなかで、オリエがボロリナ・ケバリナとこそこそ話をはじめる。
オリエ:てことは今年は一年二組に問題児がいるってことだね
ボロリナ:何それ?
ケバリナ:え?古谷野知らないの?
ボロリナ:なんだよ池羽
オリエ:大快先生と木城先生って問題児担当らしいよ
ボロリナ:ここ進学校なのに?そんなクラスあんの?
オリエ:健全な精神は健全な肉体に宿る、だなんて所詮お題目でしかないってことじゃん。
エレナ:そうそう。それで、今年の問題児ちゃんはどうやら船橋さんらしいよ
オリエ・ボロリナ・ケバリナ:!!!!!!
オリエ:セバス殿。詳しく。
エレナ:その呼び方やめてって言ったでしょ。…古河の市役所のお偉いさんの娘が結構なお転婆でヤンチャ騒ぎ起こしまくってるらしいんだけど、お父さんとしてはやっぱり地元で問題起こされたくないから下館の高校に進学させたらしい。んで、船橋さん、その噂の条件に合うでしょ。
オリエ:ホントに役者揃ってるなあ…
ボロリナ:マジかよ…。
ケバリナ:副市長の娘でスケバンとかヒロイン級のキャラ立ちじゃん
ボロリナ:スケバンって昭和か
教頭:そこの新入生!私語は謹んで!
ボロリナたち、ばつが悪そうに黙る。そうこうしているうちに、入学式のプログラムは生徒会長による新入生歓迎の挨拶に移っていくが…。