0.りなとりな
茨城県下館市にある下館第三高校(以下「館三」)に入学が決まったボロリナ(古谷野莉奈)とケバリナ(池羽理那)。二人は中学時代から同じ塾でトップ争いをする仲。二人とも館三に合格するものの勝負はまだ終わらないようで…。
時は平成31年初頭、茨城県下館市。その中心市街地の目抜き通り・稲荷町にある学習塾では二人の女子中学生が賭けをしていた。
ケバリナ(池羽理那):ねえボロリナ。…入試の点数、どっちが高くとれるか勝負しない?
ボロリナ(古谷野莉奈):は?…いいけど。じゃあ、うちが勝ったら駅南の四十郎おごりね
ケバリナ:それなら…私が勝ったら永為おごりで。
ボロリナ:ちょ、それ高すぎんだろ
ケバリナ:そっちの方がやる気出るでしょ?10月の全県模試も年末模試もボロリナ私に負けてんじゃん。
ボロリナ:ぐっ…
ケバリナ:ま、いいや。いよいよだね。解答欄ずらしたり名前書き忘れないでよ
ボロリナ:それな。つーか池羽もな。
ケバリナ:もちろん。まさか落ちたら承知しないよ。
古谷野莉奈と池羽理那、彼女らはこの塾で成績トップを争うライバル同士。元々ともに成績上位だったことと、お互い下の名が「りな」で同じということも手伝い、お互いが意識しあい競うように点数を上げていった。
そして、彼女らの第一志望は茨城県立下館第三高等学校、通称「館三」と呼ばれる女子高だ。入学者の平均偏差値は68という県内でも指折りの進学校であるが、それよりも「偏差値は高いが変人度はそれ以上に高い」ことでも有名な高校であった。
そのため、中学生からは「ここ行くくらいなら●一か県境またいで栃●か宇●行く」とその奇人変人集団ぶりを毛嫌いするものもあれば「絶対楽しいから実家を出てでも行きたい」と館三に入ること自体がモチベーションになっているものもあるという。
ちなみに住居が勝田・佐野・取手・茂木より遠方の生徒は寮を借りることができるということも「高偏差値の変人女子高」ぶりに拍車をかけている、いや「自由闊達で独自路線かつ濃厚な高校生活」を送ることができる館三の校風を形作っているといえよう。
なお、「ボロリナ」と「ケバリナ」という若干罵倒のような通称は、彼女らがお互いを奮い立たせるためにつけあったが、現在では本人たちよりも周りの方が使うようになっている。
と、そんなことを書いているとボロリナの母が車で迎えに来た。ボロリナは少しくたびれたローズピンクのヴィッツの助手席に乗り、いよいよ高校受験が近くなってきたことに思いを馳せていた。
ボロリナ母:ねえ、莉奈。池羽理那ちゃんとはどんな約束してるの?
ボロリナ:入試で得点低い方が発表日の昼飯おごり。
ボロリナ母:ふふっ。じゃあ負けらんないね。
と、そんな他愛もない会話をしていると、カーラジオがとあるニュースを伝える。
ニュースキャスター:11日午後2時頃、下館市中野殿で近くに住む農業を営む40代男性が路上で意識を失っていた事件で、下館署は本日午後5時頃、この男性の意識が回復したと発表しました。署では「男性に目立った外傷がないことから、魔物あるいは悪質な魔導士による犯行という線が強い」と発表しており…
ボロリナ母:最近物騒ね…莉奈も気をつけてよ。
ボロリナ:ね。そうしまーす。
説明しよう。物語の舞台を「平成末期の茨城県下館市」と設定しておきながら「魔物あるいは悪質な魔導士による犯行」などと書いてしまうと、まるで狂気の沙汰のような文章に見えてしまうが、この作品はそもそもパロディノリの学園モノファンタジーであり、いわば下館界隈を中心にファンタジーモノのような世界観が味わえる作品なのだ。深いところは気にせず「この世界線の下館や茨城県そして北関東はこういう設定なのだ」と割り切ってもらえたら幸いである、と言いたい。
ボロリナ:(ヘッタクソな地の文…ていうかパロディだからって居直りが過ぎるだろ…)
登場人物にディスられたような気がするが気のせいだろう。彼女らの高校生活の行方はいかに。