行間一
眠りに堕ちると夢を見る。
起きている間は決して思い出せない、目を覚ませば失われてしまう過去の日々。
俺にとって大切な真実、■■■■■との想い出を――
五歳の頃に両親が蒸発し、祖父母の暮らす田舎に引き取られた。
彼らは優しかったがどこか腫れ物に触れるようで、俺に対していつも申し訳なさそうな顔をしていたから一緒にいるのが辛かった。
東京からの転校生だった俺は学校にも馴染めず虐められて、どこにも居場所がない。
だから不登校の引きこもりになるまで、そう時間は掛からなかった。
彼らが登校している間だけひっそりと独り外で遊び、放課後は逃げるように家の中に引き籠る。
そんな生活が数年続き四年生になったある日の事、その出会いは唐突に訪れた。
『ねえ、それなあに?』
見ている間は静かだからと、幼い頃から母に見せられていたアーマナイト。
胸を張って好きだと言える憧れで、今となっては母との唯一の繋がりでもあるヒーローの活躍を居間のテレビで眺めていた俺は、突如掛けられた声に驚いて恐る恐る庭の方を振り返る。
『……君は、誰?』
そこにいたのは、縁側に身を乗り出すようにして興味津々にテレビを覗き込む、プラチナブロンドの髪が綺麗な同年代の女の子だった。
明らかにこの辺りの子ではない、異質で浮世離れした雰囲気を纏ったその子は、俺の問いかけに何かを思い出したように手を打って、
『あ、そうよ。挨拶を忘れてたわ。姉様に叱られちゃう……こほん、初めまして、私は■■■■■! ねえ、それよりこの板凄いね、中で小さな鎧の騎士様が動いてるわ……!』
彼女はまん丸に見開いた蒼い瞳をキラキラと輝かせて、そんな頓珍漢な事を言ったのだ。