Act 0 序 scene:0 Can I be a true hero?
彼女が俺の前に現れなくなって、一年以上の月日が経過した。
相変わらず、ここに俺の居場所はない。
けれど、何も変わらなかった訳じゃない。
『■■■。僕、教えて貰ったメニュー毎日こなしてるよ。ちょっとだけど強くなったよ』
六年生になった俺は、本格的に登校を再開した。当然、俺を標的としたいじめは激化する。
けれど俺は、俺をいじめる連中を返り討ちにできる程度には強くなっていて……結果、いじめはなくなった。
もう誰も、俺に近づこうとしない。
なのにどうして、涙が止まらないのだろう。
弱くていじめられてばかりだったあの頃みたいに、泣いてしまうのだろう。
「でも……ああ、やっぱりダメだな。僕はまだ、変身なんて出来そうにないや」
――『……やめてよ。どうして余計な事をするんだよ』
いじめっ子に負けない強さを手に入れたから何だと言うのか。
――『僕は■■■ちゃんに助けてくれだなんて頼んでない!』
俺の弱さが強く気高かくあろうとした優しい少女の心を傷つけた。
慈愛と共に差し伸べられた優しい手を拒絶し罵倒したその過去は、犯した罪は決してなくなりはしない。
俺は、強くなれないまでも、彼女の言う通り強くあろうとしたかったのだ。
俺を否定せずに受け入れ、肯定してくれた大好きな女の子。
俺を孤独から救ってくれた彼女を、今度は俺が助けられるようになりたかった。
ただ、それだけだったのに。
――『だから……■■■ちゃんのせいでまた嫌な目に合うって言ってるんだよ!』
いつかなんていつまで経ってもやってこない。
強くならなきゃいけないその時に、強くなんてなれなかった。
強くあろうとする事さえ出来なかった。
俺は弱くて、愚かで惨めで醜くててどうしようもない馬鹿野郎だ。
自らの弱さ一つ認められず、大切な女の子に全ての責を擦り付けようとした俺の弱さを、俺は絶対に許せないから。
「僕、今度こそ変わってみせるよ、絶対に」
望む現実と訪れる現実はどうしようもなく違っていて、それは悲劇だと俺は思った。
それでも至るべき結論は決まっていて、なら後は過程を捻じ曲げ世界も己も総てを騙すだけだ。
その結果、例え噓で捻じ曲げ歪める前の原型を総て失くしてしまおうとも構わない。
「僕らが憧れたアーマナイトに誇れる僕に、強くて気高い君に相応しい、そんな僕に」
だから俺は、小学校を卒業したその日にアーマナイトに成ると決定した。
もう二度と、俺の弱さが誰かを傷つけてしまう事がないように。
「今度は僕が、■■■ちゃんを守れるように。そうすればきっと――」