フンドシ聖女~聖女様は異世界でもふんどしを布教したい~
とある異世界に聖女として召喚された、ごく普通の女性がいた。
「私が聖なる力を使うにはふんどしが必要です!!」
しかし彼女の趣味だけは全く普通ではなかった。
召喚されて程なくして自分の立場を把握した彼女は、多くの異世界人に囲まれながら一切臆せずそう言った。
「せ、聖女様……フンドシとはなんですか?」
「ふんどしとは我が故郷で親しまれている神聖な肌着です」
「つまり聖女様の故郷では、普段からフンドシを身に付けることで聖力を高めていると?」
「はい、その通りです」
彼女は普段からふんどしを勧めまくって、周囲からドン引きされるほどふんどしが好きだった。
「ふんどしは万能であり、全てを解決する存在です!!」
「な、なるほど……」
「例えばそこの貴方!!」
「わ、私ですか……?」
「体を鍛えておられますね?」
「はい、自分は騎士なので……」
「鍛えた体とふんどしの相性は抜群です。ふんどしを履きましょう!!」
そう言いながら、彼女は荷物から大量のふんどしを取り出した。
ちなみに大量のふんどしを持っている理由は、他でもない布教のためである。
「そ、それがフンドシなんですか!?」
「はい、これこそが聖なるふんどしです……どうぞお受け取り下さい」
「ははーっ!!」
聖女 (ふんどし狂い)から畏まってふんどしを受け取る騎士。
その正体を知らない彼らは、それを神聖な光景として固唾をのんで見守っていた。
「これで貴方にもふんどしの加護があることでしょう」
「有り難き幸せにございます……」
「そして後で、ふんどしだけを身に着けた状態で私の元へ来てください」
「え、フンドシだけを身に着けてですか……?」
「その状態で私が祈りを捧げることで、聖力が強化されるのです」
「っ!? 分かりました、必ずそういたします!!」
「さて、他の見込みがありそうな方々も是非ふんどしを受け取って下さいませ!! もし足りなくなってきても、ふんどしを熟知している私が監修して新しいふんどしを作りますので、そこもどうかご安心下さい……!!」
「わ、我々のためにそこまでなさるなんて……」
「いえ、私はただふんどしをこの世界に広めたいだけですよ…… 」
「聖女様っ!!」
そんな彼女はのちに世界を救い【フンドシの聖女】として歴史に名を残すことになるのだが…… それはまた別のお話。