第4話 成功と失敗
物語の流れは、変わりませんが。
足りないところが多すぎるので、加筆や修正をしていきます。
ご迷惑をおかけしますが、暖かい目で見ていただけると嬉しいです。
「......はやく、逃げた方がいいよ」
「お前は何を言っている」
「......琉威ちゃん。出て部屋を閉じ込めるの、はやくしないと手遅れになっちゃう」
空間がひび割れて、ガラス状に散乱する。割れた部分の向こう側は、薄暗くて淀んでいた。
空間が渦状にねじ曲がっている。そこから、少しづつ赤い霧が噴出していく。
既知外の現象に、目が釘付けになっている。
非常に興味深く、恐ろしい。琉威はその場から動けないでいた。
一方、呉羽は琉威を引っ張り部屋の外へと連れ出そうとしていた。
「見つけた、見つけた、見つけた、見つけたぞ」
悍しい声だった。
人の発声する音ではない。生理的な嫌悪感を感じさせる。
まるで、地の底から這い上がる亡者のような声だった。
『興味』や『好奇心』が一気に塗りつぶされた。
『恐怖』が二人を支配した。
「いやぁ」
短く悲鳴をあげた呉羽は、動けなくなっていた。全身を震わせて、しゃがみ込む。
蹲る呉羽を見て、琉威は慌てた。
「おい、大丈夫か」
「お願い、琉威ちゃん。私を、はやくここから連れ出して」
今まで、こんな怯えた呉羽を見たことがなかった。
反射的に、呉羽を抱えて急いで研究室から出ようとした。
しかし、赤い霧は召喚者を逃さないと主張するように、赤い霧が獲物を食らう蛇の如く這いづり、
琉威の足に食らいついた。
「っつ」
右足に激痛が走り、振り解こうとするがビクともしない。
反対足で、蹴り上げると赤い手は再び霧状へとなる。
痛めた足で呉羽を抱きながら、必死に出口へとたどり着いた。
「琉威ちゃん、その足」
「ああ、ただ掴まれただけだ。お前は、念のために人を呼んでおいてくれ。俺は研究室を封鎖する」
「ダメだよ。だったら私が」
未成年の、それも会社の賓客扱いを受けている奴に、やらせれるわけがない。
今回の研究の責任は、全て俺にある。
「俺がこの研究の責任者だから。俺がやる、いいからお前は先に行け」
「はやく、呼んでくるから」
再び中へと入る琉威は、痛めた右足を引きずりながらコントロールパネルへと向かう。そこには、研究室を強制封鎖するためのボタンがある。
割れた空間を見て琉威は、自分の馬鹿さ加減を覚える。
心のどこかでこの研究は失敗するのだと思っていた。成功した時のことを考えないわけでもないが、『赤い霧』が意思を持っていることなど
誰が想定できるだろうか。
触手のように、赤い霧は魔手を生やしている。そして、空間が割れたところには黒い人影がこちらを見ている。
自ら黒いベールを取ると、縦に割れた紅き瞳孔がこちらを睥睨している。全身が漆黒の甲冑を纏っている。甲冑に見えるだけで、もしかしたら外皮にも見える。
龍の鱗のように、胸部と局部は隠され、お腹だけは露出している。
明らかに、女性であるが人間には見えなかった。
『其方に感謝しよう』
優雅な一礼をとり、まるで異性をダンスに誘うように、ゆっくりとしたお辞儀をした。
「こっちの言葉がわかるのか?」
『否、わからぬ。故に、其方の心に直接届けている。次元の扉を開いたのは、其方だな興味深い』
「何をしにきた?」
『ふむ。何の力も感じぬが、お前はニンゲンか?』
「その言い方だと、お前はニンゲンじゃないというつもりか?」
『我は、地下世界の支配者であるクリフォト』
クリフォトの背中には折り畳められた巨大な黒い鱗の羽が広がる。そして、全ての羽が琉威へと向いていた。
『我名を抱いて、眠れ』
嫌な予感がした琉威は、とっさに床下へと身を投げた。
すると、羽の刃が弾丸のように打ち込まれていく。
黒い羽の刃が琉威に殺到するように見えたが、蒼い結晶が生じて全ての羽を受け止めた。
そのため、無事だった琉威はクリフォトを睨む。
「いきなり何しやがる」
『蒼き結晶?、フッハッハッハッハ! どうやら、お前は奴のお気に入りらしい』
クリフォトの冷酷な高笑が研究室へと鳴り響く。
「お前は、一体なんだッ」
『もっとよく顔を見せなさい』
離れていた距離が一瞬にして、なくなり。クリフォトは、琉威の胸ぐらを掴んで目線まで持ち上げた。
細腕なのに、信じられないぐらいの腕力だった。一般の男性よりも痩せているとはいえ、片手で持ち上げられる重さではない。
赤い瞳孔が琉威を見つめる。
『ほう。貴様は、混じっているのか?それに、狼のような瞳に憎悪と嫌悪が宿っている。とても、素晴らしい。それがいつか狂気に支配されれば、一興。どうやら、神は我に味方したらしい』
息ができない。生物の本能が、全てを拒絶している。目の前にいる彼女は、明らかに超常的な存在だった。
その場にいるだけで、精神的に萎縮されてしまうほどの恐怖があった。
が、琉威は彼女の瞳を見続けた。それは、琉威特有のプライドがあった。
桐林家の絶対的な存在である父親が、琉威に唯一教えたのは不屈の精神だ。
何者にも屈することは、許されない。
『どうやら貴様は、我を見ても屈することない、精神力を持っている。ここで、貴様の喉笛を噛み砕き。絶望に歪める其方を見たい衝動に駆られるが、今はやめておこう』
クリフォトは、あっさりと手を離してから散らかった部屋を裸足で歩いて、空間が淀んだ場所にいく。
「ゲホッゲホッゲホッ」
喉が解放されて、新鮮な空気が気管に流れてくる。
激しく咳き込む中で、琉威は起き上がる。
そして、クリフォトは自ら広げた黒い翼を閉じて扉の前に立っていた。
『予言してやろう。貴様は、再び扉を開ける時、選択を迫られるだろう。どちらか誤れば、抗いようがない死が訪れる』
扉がゆっくりと閉じ始めて、赤い霧も吸い込まれていく。
『ゆめゆめ忘れるな。お前の存在が消える時、我の願いは成就するのだから』
静まりかえった研究室に一人取り残された琉威は、地面に蹲み込んだ。
何が起こったのか理解が追いつかないが、危機を脱したことに安堵した。
そして、意識が朦朧とする中で琉威は確かに見た。
閉じられた扉のあたりに、いつの間にか白銀の鎧を来た少年が立っていた。
白いマントを靡かせて、こちらを笑いながら見つめていることに。
「せめて、いい夢を見ることを願う。時が来ればいずれ、また会える」
意識は、ゆっくりと闇に落ちていき。
不思議な少年の声が、琉威の耳に残ったまま意識を手放した。
面白い、続きが気になる。と思われていただければ最上の喜びです。
稚拙な文章で、本当にすみません。
評価をしていただけると嬉しいです。
ちなみに、もしかしたらセリフもニュアンスを変えるかもしれません。不完全な作品です。( ̄▽ ̄)